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プロローグ
45歳童貞コミュ障フリーター、異世界へ。
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…………。
……まだかな?
お~い。
もういい? もう、目を開けていいのかな?
…………。
へんじがない。しかばねのようだ。
俺は屍になって、あの世に行ったんだけど。
全部夢だったとかいうオチだったりしない?
*****
はっ。
どこだ、ここ。
気がついたら、木の枝に座っていた。
木の股から生まれた!? なんて。
悪魔じゃあるまいし。
転生、っていっても、赤ん坊からやり直すわけじゃないのか。
まあ、記憶を持ったままだと、赤ん坊からスタートはつらいもんな。一年以上はあぶあぶ状態だし。
もはやそれ、拷問だよ。
あ、ステータスがわかるんだな。どれどれ。
百目鬼 要
魔王レベル1 HP10 MP∞
スキル:神聖魔法・次元魔法・元素魔法・白魔法・黒魔法レベルMAX、全種族共通言語
装備:魔法使いのローブ・魔法使いの靴
備考:神の加護、魅了効果、鑑定眼 (全種族共通/パッシブ)
生まれたばかりだから、レベル1なのかな?
しかし、ヒットポイント10か……。
転んだら死にそう。
マジックポイントは∞? どういうことだろう。無制限使い放題ってことでいいのかな。
魔法はどれも最初からレベルMAXだし、大サービスだ。
魔王だから?
じゃ、さっそく何か試してみようか。
空飛べる系の魔法とかはあるのかな? ええと……。
*****
「どうした? そこから降りられなくなったのか?」
「ひゃっ!?」
背後から男にいきなり声を掛けられて。
驚いて木の枝から落ちかけた。
けど、声の主によって、無事受け止められたようだ。
「すまない、驚かせたか」
ずいぶん大きな男だな。そして力持ちだ。
俺のこと、ふわりと受け止めたし。
……いや、俺が小さいのか。
どうやらこの身体はまだ、子供のようだ。
この男に比べれば、手も小さい。
声の主を見ると。
白馬……じゃなかった、黒馬に乗った王子様風な美青年だった。
仕立ての良さそうな服を着て、赤いマントを羽織っている。
きらきらしたプラチナブロンドに、アイスブルーの目。
彫像みたいに整った、彫りの深い美貌。
俺、子供じゃなくて、こういう風なイケメンになりたかったんだけどな……。
チェンジ! ……は無理か。
具体的な要望を出すべきだった。
いや、これから成長すれば。ワンチャンス、あるかもしれないし。
「……何と……、」
美青年は、俺の顔を見て驚いているようだ。何だ?
「陛下、いかがなされましたか」
茶色の馬に乗った騎士風の男が寄って来た。
茶髪に緑の目の男前だ。強そう。
この美青年、陛下なのか。
つまり、王様?
じゃあ、ここで知り合っておいて、宮廷魔術師とかになる流れかな?
「……おお、これは……」
騎士風の男も驚いている。
今の俺、そんな驚くような容姿なのか?
「ああ、何と愛らしいのだろう! 天使のようだ!」
陛下と呼ばれた美青年に、むぎゅっと抱き締められた。
騎士風の男は、羨ましそうにこっちを見ている。
男にモテても、ぜんぜん嬉しくないんだけど!
*****
「ひなたの匂いがする……」
髪に鼻を埋めて匂いを嗅ぐのはやめて欲しい。
そういう王様は、なんだか高貴な香水っぽい匂いがする。
……いや、男の匂いなんて嗅いでも嬉しくない。
じたばた暴れても、放してくれない。
馬鹿力だな!
……あれ? 俺の足の間から見える、もふもふしたこれは何だ?
「陛下、めちゃくちゃ嫌がって、しっぽ丸まっちゃってますよ……」
しっぽ?
ふと頭を触ってみたら。
耳がある位置に、もふっとした感触。
これは。動物の耳っぽい……?
犬にしては、しっぽがもふもふだが。
どうやら犬耳犬しっぽの少年になってしまっているようだ。
そういえば、神様は犬だった。
神様的にモッテモテな姿って、もしかして、これ!?
さらによく見れば、王様も騎士も、髪と同じ色の犬耳が生えていた。
ステータスを見ると。
王様は、インペラトル、ガイウス・クラウディウス・ケント・アウグストゥス:アルバ帝国皇帝
皇帝レベルMAX
騎士の方は、オクタウィウス・コルネリウス・スッラ:アルバ帝国騎士長官
騎士レベル98
とある。
*****
……ここ、犬人間の異世界なのか?
でもって、この兄ちゃんが、帝国の皇帝!?
こんな若いのに!?
しかも皇帝レベルMAXって。
何やったらそんなにレベルが上がるんだ?
あ、備考欄に書いてあった。
うわあ、凄い戦功あげてる……。一騎打ちで敵国の王様の首級を取ってたり。剣や格闘技だけでなく、攻撃魔法も使えるようだ。
めちゃくちゃ強いのか。こわっ。
名前は何か、古代ローマっぽいな。
インペラトル、ガイウス・クラウディウス・ケント・アウグストゥスだと、Imperatorが最高司令官、Gaiusが名前、Claudiusが氏族、Centhoが家族名、Augustusが添え名で『尊厳ある者』って意味だから。
クラウディウス氏族のガイウス、ケント家の息子。最高司令官で偉い人だよ、って意味になる。
へえ、偉い人なのか。皇帝だもんな。そりゃそうだ。
で、所持金は100アウレ50デナリ50セス?
いよいよローマっぽいな。まあいいか。
ローマ基準で目算してみよう。
1アウレウス金貨=25デナリウス銀貨=100セステルティウス銅貨で1セス=4アス青銅貨だったな。
確か床屋の散髪代と1kgのブドウが32アスだって記録があったから32アスを2千円とすると、1セス250円か。
金貨が1枚2万5千円、ってことは。
……何でそんなに持ち歩いてるんだ!? 馬鹿じゃないの!?
いや、目算でキレてどうする。
物価が違えば金の価値も変わる。合ってたとしても、皇帝だし、そのくらい、お小遣いかもしれない。
しかし腹立つ。
イケメンな上金持ちとか。ただでさえイケメンなんて全喪男の敵だというのに。
すなわち俺の敵。
っていうか。
いい加減、俺のことモフるのやめてくれないかな!?
……まだかな?
お~い。
もういい? もう、目を開けていいのかな?
…………。
へんじがない。しかばねのようだ。
俺は屍になって、あの世に行ったんだけど。
全部夢だったとかいうオチだったりしない?
*****
はっ。
どこだ、ここ。
気がついたら、木の枝に座っていた。
木の股から生まれた!? なんて。
悪魔じゃあるまいし。
転生、っていっても、赤ん坊からやり直すわけじゃないのか。
まあ、記憶を持ったままだと、赤ん坊からスタートはつらいもんな。一年以上はあぶあぶ状態だし。
もはやそれ、拷問だよ。
あ、ステータスがわかるんだな。どれどれ。
百目鬼 要
魔王レベル1 HP10 MP∞
スキル:神聖魔法・次元魔法・元素魔法・白魔法・黒魔法レベルMAX、全種族共通言語
装備:魔法使いのローブ・魔法使いの靴
備考:神の加護、魅了効果、鑑定眼 (全種族共通/パッシブ)
生まれたばかりだから、レベル1なのかな?
しかし、ヒットポイント10か……。
転んだら死にそう。
マジックポイントは∞? どういうことだろう。無制限使い放題ってことでいいのかな。
魔法はどれも最初からレベルMAXだし、大サービスだ。
魔王だから?
じゃ、さっそく何か試してみようか。
空飛べる系の魔法とかはあるのかな? ええと……。
*****
「どうした? そこから降りられなくなったのか?」
「ひゃっ!?」
背後から男にいきなり声を掛けられて。
驚いて木の枝から落ちかけた。
けど、声の主によって、無事受け止められたようだ。
「すまない、驚かせたか」
ずいぶん大きな男だな。そして力持ちだ。
俺のこと、ふわりと受け止めたし。
……いや、俺が小さいのか。
どうやらこの身体はまだ、子供のようだ。
この男に比べれば、手も小さい。
声の主を見ると。
白馬……じゃなかった、黒馬に乗った王子様風な美青年だった。
仕立ての良さそうな服を着て、赤いマントを羽織っている。
きらきらしたプラチナブロンドに、アイスブルーの目。
彫像みたいに整った、彫りの深い美貌。
俺、子供じゃなくて、こういう風なイケメンになりたかったんだけどな……。
チェンジ! ……は無理か。
具体的な要望を出すべきだった。
いや、これから成長すれば。ワンチャンス、あるかもしれないし。
「……何と……、」
美青年は、俺の顔を見て驚いているようだ。何だ?
「陛下、いかがなされましたか」
茶色の馬に乗った騎士風の男が寄って来た。
茶髪に緑の目の男前だ。強そう。
この美青年、陛下なのか。
つまり、王様?
じゃあ、ここで知り合っておいて、宮廷魔術師とかになる流れかな?
「……おお、これは……」
騎士風の男も驚いている。
今の俺、そんな驚くような容姿なのか?
「ああ、何と愛らしいのだろう! 天使のようだ!」
陛下と呼ばれた美青年に、むぎゅっと抱き締められた。
騎士風の男は、羨ましそうにこっちを見ている。
男にモテても、ぜんぜん嬉しくないんだけど!
*****
「ひなたの匂いがする……」
髪に鼻を埋めて匂いを嗅ぐのはやめて欲しい。
そういう王様は、なんだか高貴な香水っぽい匂いがする。
……いや、男の匂いなんて嗅いでも嬉しくない。
じたばた暴れても、放してくれない。
馬鹿力だな!
……あれ? 俺の足の間から見える、もふもふしたこれは何だ?
「陛下、めちゃくちゃ嫌がって、しっぽ丸まっちゃってますよ……」
しっぽ?
ふと頭を触ってみたら。
耳がある位置に、もふっとした感触。
これは。動物の耳っぽい……?
犬にしては、しっぽがもふもふだが。
どうやら犬耳犬しっぽの少年になってしまっているようだ。
そういえば、神様は犬だった。
神様的にモッテモテな姿って、もしかして、これ!?
さらによく見れば、王様も騎士も、髪と同じ色の犬耳が生えていた。
ステータスを見ると。
王様は、インペラトル、ガイウス・クラウディウス・ケント・アウグストゥス:アルバ帝国皇帝
皇帝レベルMAX
騎士の方は、オクタウィウス・コルネリウス・スッラ:アルバ帝国騎士長官
騎士レベル98
とある。
*****
……ここ、犬人間の異世界なのか?
でもって、この兄ちゃんが、帝国の皇帝!?
こんな若いのに!?
しかも皇帝レベルMAXって。
何やったらそんなにレベルが上がるんだ?
あ、備考欄に書いてあった。
うわあ、凄い戦功あげてる……。一騎打ちで敵国の王様の首級を取ってたり。剣や格闘技だけでなく、攻撃魔法も使えるようだ。
めちゃくちゃ強いのか。こわっ。
名前は何か、古代ローマっぽいな。
インペラトル、ガイウス・クラウディウス・ケント・アウグストゥスだと、Imperatorが最高司令官、Gaiusが名前、Claudiusが氏族、Centhoが家族名、Augustusが添え名で『尊厳ある者』って意味だから。
クラウディウス氏族のガイウス、ケント家の息子。最高司令官で偉い人だよ、って意味になる。
へえ、偉い人なのか。皇帝だもんな。そりゃそうだ。
で、所持金は100アウレ50デナリ50セス?
いよいよローマっぽいな。まあいいか。
ローマ基準で目算してみよう。
1アウレウス金貨=25デナリウス銀貨=100セステルティウス銅貨で1セス=4アス青銅貨だったな。
確か床屋の散髪代と1kgのブドウが32アスだって記録があったから32アスを2千円とすると、1セス250円か。
金貨が1枚2万5千円、ってことは。
……何でそんなに持ち歩いてるんだ!? 馬鹿じゃないの!?
いや、目算でキレてどうする。
物価が違えば金の価値も変わる。合ってたとしても、皇帝だし、そのくらい、お小遣いかもしれない。
しかし腹立つ。
イケメンな上金持ちとか。ただでさえイケメンなんて全喪男の敵だというのに。
すなわち俺の敵。
っていうか。
いい加減、俺のことモフるのやめてくれないかな!?
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