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45歳童貞、異世界へ行く
俺氏、皇帝におあずけをくらわす。
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朝が来た。
すっきりした目覚めである。
昨日とは段違いに、いい気分だ。
「おはよう、カナメ」
先に起きていたらしいガイウスは、俺の額にキスをした。
ちっ、めげないな、この男。
一応新婚なわけだから、俺もお返しをしないと駄目だろう。
まあ、ほっぺにチューくらいならいいか。
「おはよ、ガイウス」
チューしてやろうとしたら。
目を開けていたにもかかわらず。
頬でなく顎に、口でなく鼻が当たった。
こっちの目算は全然駄目だな。
今までやったことないから当然か。
そんな下手なキス未満でも、ガイウスは嬉しそうに笑って、俺の頭を撫でた。
……この男。
もしかして、ちょろいのでは?
*****
「カナメ、どうして子供に戻ったのかな?」
やはり、初夜にヤれなかったのは不満だったようで。
朝食のパンを寄越しながら、質問してくる。
だが、その答えはもう用意してあるのだ。
「魔法で大きくなっただけで、こっちがほんとだから。だめ?」
愛らしく小首を傾げてみたり。
「そうか……そうだったな……」
ガイウスはがっくりしている。
もう、青年になる魔法は使わないからな!
大人の姿になるまで、十年は掛かるか?
それでも、魔法をかければ幼児のままでいられるわけで。
ずっとお預けをくらうがいい!
ガイウスが政務室で仕事をしている間、神殿にいる神祇官に会いに行った。
聞きたいことがあったからだ。
「あれ、子供に戻ったんですか?」
目をぱちくりさせて。
「こっちがほんとだし」
なるほど、と納得している。
大人の姿になったらモフモフされないかと思って大人の姿になったらああなった、と言うと、大変同情された。
神殿の中で、お茶を出してくれるというのでついていく。
「そういえば、あの『魂結の術』を高レベルな『呪い解除』で解除されたそうですね。無事魂が解放されたようで、良かったです。しかし、ああ、ひと目見たかった……」
お茶を淹れてくれながら、もう少しあの場に残っていれば奇跡の術が見れたのに、と。少し残念そうに言った。
普通の呪い解除ならその辺の神官も使えるけど、高レベル黒魔法を解除できるほどの術者は今、居ないんだそうだ。
神祇官でも中級レベルがやっとだとか。
自分もレベル上げを頑張るけど、もし自分に手に負えない呪いが持ち込まれたら、是非解除お願いします、と言われて頷く。
お安い御用だ。
だって、そのために一番強い魔法使いになりたかったんだし。
*****
さて。
本題に入らせてもらおう。
「あの、狐人って、どのくらいで大人になるものなの?」
リアル犬とかみたいに、半年くらいで大きくなってしまったら、困る。
ガイウスに聞いた場合、そんなに早く大人になりたいのかと勘違いされて、大喜びでモフられそうなので、神祇官に聞くことにしたのだ。
「大人、ですか。だいたい15歳くらいで成人扱いだと聞きますが。犬人もそんなものですよ」
15か。
じゃあまだ大人になるまでだいぶ余裕があるな。良かった。
「失礼ですが、魔術師様は今、おいくつなんです?」
そういえば、何歳なんだろう?
この身体。
「わかんない。おととい、気がついたら、ここの国の木の上にいたから」
「生まれたばかりじゃないですか……」
考えてみれば、この世界での寿命とか、皆の年齢とかも知らないな。
ステータスには表示されないのか?
いや、詳細を見る、って項目があった。
これか。
どれどれ。
百目鬼・要 性別:男 年齢:0歳 状態:幼児
職業:魔王/帝国魔術師/皇妃 レベル80 HP/800/800 MP∞
スキル:神聖魔法・次元魔法・元素魔法・白魔法・黒魔法レベルMAX、全種族共通言語、歴史、考古学
装備:魔法使いのローブ・魔法使いの靴
所持金:なし
備考:神の加護、魅了効果、鑑定眼 (全種族共通/パッシブ)
皇妃とか、称号が増えてる……。
魔王か……今やもう恥ずかしい名称である。
またレベルが上がってるのは、呪い解除って大魔法を使ったせいだろう。
俺って0歳なのか……。赤ん坊じゃん。
まあ中身がオッサンだし、年齢は魔法でどうにかできるけど。
神祇官はいくつなんだろう。
若く見えるけど、20~25くらいかな?
ルキウス・ウァレリウス・メッサラ・カリストゥス 性別:男 年齢:150歳 状態:普通
職業:アルバ帝国神祇官/神官 レベル100 HP2500/2500 MP900/1200
スキル:神聖魔法レベル150・白魔法レベル46、犬属共通言語、神告受信、神秘学、薬学、生物学、植物学
装備:神官のチュニック・神官のトーブ・神官の靴・肌着・財布
所持金:10アウレ2デナリ6セス50アス
備考:神の祝福 (パッシブ)、呪い耐性、毒耐性、精神魔法耐性
「……150歳!?」
そんなトシだったのか!? 全然見えないよ!
「え、見てわかります?」
神祇官は恥ずかしそうに顔を覆った。
「ん、鑑定」
「そんな魔術があるのですか……」
感心しているが。
魔術ではない。神様から貰ったサービスだ。
「ええと、それじゃ平均寿命はどのくらいなの?」
ずいぶん長生きするようだけど。
「平均寿命? 何ですかそれ」
え?
*****
寿命、という概念自体がない世界だったようだ。
知恵の実を食べる前のエデンの住人みたいな感じかな?
でも、全員がそうだという訳ではなくて。
レベルを上げていくと、それだけ長く生きられる。
レベル1のまま何もしなければ、百歳くらいで老いて死ぬ。
じゃ、レベルMAXだと、死なないのか!?
だからガイウスは皇帝なのに、男と結婚しても問題ないのかな? 跡継ぎを作る必要が無いから。
犬だけど多産でもないし、寿命じゃ死ななくても、戦争や病気とかで死ぬから、長生きでも人口が増えすぎることはないようだ。
やる気があれば色々なスキルを習得できるし、頑張れば好きな職に就けて、出世も出来る。
さすがにガイウスに勝って皇帝に成り上がりたいって勇者はいないようだけど。
なるほど。
だから高レベルな魔法をバンバン使える俺を、みんなが尊敬の目で見るわけか。
どれだけ大変な努力をして身につけたんだ? って思うよな。
少しも苦労してなくて、神様のサービスなんだけど。
何だか申し訳ないな。
*****
「俺、魔術師として、ここで何したらいいのかな?」
まさか、ガイウスの皇妃になるために来たんじゃないだろう。
さすがに。
この世界のローマっぽさは神様に感謝したいくらいだが。
「そうですね。私も神託で、魔術師が異世界から来る、大切に雇い入れよ、としか聞いてないんですよね……」
神祇官は首を傾げて悩んでいる。
ガイウスが国土を統一して、このアルバ帝国を創り上げたので。
今は戦争も無く、平和なんだそうだ。
地中海世界を統一して帝政を創始し、ローマの平和を実現したローマ帝国初代皇帝みたいだ。
ガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌス。
名前も似てるし。ってローマの人は名前被り激しいんだけど。
アルバというのは、この土地の名前だそうだ。
ローマ神話に登場するアルバ・ロンガを思い出すな。ラテン語で『長く白い都市』って意味だ。
ということは、ここは『白い帝国』になるのかな?
ガイウスのプラチナブロンドに銀の鎧も、何かそれっぽくて格好いいなあ。
今日は皇帝の結婚祝いということで、学校みたいなところは休日になったり、公衆浴場を貸切で国民に無料開放とかしているんだって。
平和だ。
すっきりした目覚めである。
昨日とは段違いに、いい気分だ。
「おはよう、カナメ」
先に起きていたらしいガイウスは、俺の額にキスをした。
ちっ、めげないな、この男。
一応新婚なわけだから、俺もお返しをしないと駄目だろう。
まあ、ほっぺにチューくらいならいいか。
「おはよ、ガイウス」
チューしてやろうとしたら。
目を開けていたにもかかわらず。
頬でなく顎に、口でなく鼻が当たった。
こっちの目算は全然駄目だな。
今までやったことないから当然か。
そんな下手なキス未満でも、ガイウスは嬉しそうに笑って、俺の頭を撫でた。
……この男。
もしかして、ちょろいのでは?
*****
「カナメ、どうして子供に戻ったのかな?」
やはり、初夜にヤれなかったのは不満だったようで。
朝食のパンを寄越しながら、質問してくる。
だが、その答えはもう用意してあるのだ。
「魔法で大きくなっただけで、こっちがほんとだから。だめ?」
愛らしく小首を傾げてみたり。
「そうか……そうだったな……」
ガイウスはがっくりしている。
もう、青年になる魔法は使わないからな!
大人の姿になるまで、十年は掛かるか?
それでも、魔法をかければ幼児のままでいられるわけで。
ずっとお預けをくらうがいい!
ガイウスが政務室で仕事をしている間、神殿にいる神祇官に会いに行った。
聞きたいことがあったからだ。
「あれ、子供に戻ったんですか?」
目をぱちくりさせて。
「こっちがほんとだし」
なるほど、と納得している。
大人の姿になったらモフモフされないかと思って大人の姿になったらああなった、と言うと、大変同情された。
神殿の中で、お茶を出してくれるというのでついていく。
「そういえば、あの『魂結の術』を高レベルな『呪い解除』で解除されたそうですね。無事魂が解放されたようで、良かったです。しかし、ああ、ひと目見たかった……」
お茶を淹れてくれながら、もう少しあの場に残っていれば奇跡の術が見れたのに、と。少し残念そうに言った。
普通の呪い解除ならその辺の神官も使えるけど、高レベル黒魔法を解除できるほどの術者は今、居ないんだそうだ。
神祇官でも中級レベルがやっとだとか。
自分もレベル上げを頑張るけど、もし自分に手に負えない呪いが持ち込まれたら、是非解除お願いします、と言われて頷く。
お安い御用だ。
だって、そのために一番強い魔法使いになりたかったんだし。
*****
さて。
本題に入らせてもらおう。
「あの、狐人って、どのくらいで大人になるものなの?」
リアル犬とかみたいに、半年くらいで大きくなってしまったら、困る。
ガイウスに聞いた場合、そんなに早く大人になりたいのかと勘違いされて、大喜びでモフられそうなので、神祇官に聞くことにしたのだ。
「大人、ですか。だいたい15歳くらいで成人扱いだと聞きますが。犬人もそんなものですよ」
15か。
じゃあまだ大人になるまでだいぶ余裕があるな。良かった。
「失礼ですが、魔術師様は今、おいくつなんです?」
そういえば、何歳なんだろう?
この身体。
「わかんない。おととい、気がついたら、ここの国の木の上にいたから」
「生まれたばかりじゃないですか……」
考えてみれば、この世界での寿命とか、皆の年齢とかも知らないな。
ステータスには表示されないのか?
いや、詳細を見る、って項目があった。
これか。
どれどれ。
百目鬼・要 性別:男 年齢:0歳 状態:幼児
職業:魔王/帝国魔術師/皇妃 レベル80 HP/800/800 MP∞
スキル:神聖魔法・次元魔法・元素魔法・白魔法・黒魔法レベルMAX、全種族共通言語、歴史、考古学
装備:魔法使いのローブ・魔法使いの靴
所持金:なし
備考:神の加護、魅了効果、鑑定眼 (全種族共通/パッシブ)
皇妃とか、称号が増えてる……。
魔王か……今やもう恥ずかしい名称である。
またレベルが上がってるのは、呪い解除って大魔法を使ったせいだろう。
俺って0歳なのか……。赤ん坊じゃん。
まあ中身がオッサンだし、年齢は魔法でどうにかできるけど。
神祇官はいくつなんだろう。
若く見えるけど、20~25くらいかな?
ルキウス・ウァレリウス・メッサラ・カリストゥス 性別:男 年齢:150歳 状態:普通
職業:アルバ帝国神祇官/神官 レベル100 HP2500/2500 MP900/1200
スキル:神聖魔法レベル150・白魔法レベル46、犬属共通言語、神告受信、神秘学、薬学、生物学、植物学
装備:神官のチュニック・神官のトーブ・神官の靴・肌着・財布
所持金:10アウレ2デナリ6セス50アス
備考:神の祝福 (パッシブ)、呪い耐性、毒耐性、精神魔法耐性
「……150歳!?」
そんなトシだったのか!? 全然見えないよ!
「え、見てわかります?」
神祇官は恥ずかしそうに顔を覆った。
「ん、鑑定」
「そんな魔術があるのですか……」
感心しているが。
魔術ではない。神様から貰ったサービスだ。
「ええと、それじゃ平均寿命はどのくらいなの?」
ずいぶん長生きするようだけど。
「平均寿命? 何ですかそれ」
え?
*****
寿命、という概念自体がない世界だったようだ。
知恵の実を食べる前のエデンの住人みたいな感じかな?
でも、全員がそうだという訳ではなくて。
レベルを上げていくと、それだけ長く生きられる。
レベル1のまま何もしなければ、百歳くらいで老いて死ぬ。
じゃ、レベルMAXだと、死なないのか!?
だからガイウスは皇帝なのに、男と結婚しても問題ないのかな? 跡継ぎを作る必要が無いから。
犬だけど多産でもないし、寿命じゃ死ななくても、戦争や病気とかで死ぬから、長生きでも人口が増えすぎることはないようだ。
やる気があれば色々なスキルを習得できるし、頑張れば好きな職に就けて、出世も出来る。
さすがにガイウスに勝って皇帝に成り上がりたいって勇者はいないようだけど。
なるほど。
だから高レベルな魔法をバンバン使える俺を、みんなが尊敬の目で見るわけか。
どれだけ大変な努力をして身につけたんだ? って思うよな。
少しも苦労してなくて、神様のサービスなんだけど。
何だか申し訳ないな。
*****
「俺、魔術師として、ここで何したらいいのかな?」
まさか、ガイウスの皇妃になるために来たんじゃないだろう。
さすがに。
この世界のローマっぽさは神様に感謝したいくらいだが。
「そうですね。私も神託で、魔術師が異世界から来る、大切に雇い入れよ、としか聞いてないんですよね……」
神祇官は首を傾げて悩んでいる。
ガイウスが国土を統一して、このアルバ帝国を創り上げたので。
今は戦争も無く、平和なんだそうだ。
地中海世界を統一して帝政を創始し、ローマの平和を実現したローマ帝国初代皇帝みたいだ。
ガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌス。
名前も似てるし。ってローマの人は名前被り激しいんだけど。
アルバというのは、この土地の名前だそうだ。
ローマ神話に登場するアルバ・ロンガを思い出すな。ラテン語で『長く白い都市』って意味だ。
ということは、ここは『白い帝国』になるのかな?
ガイウスのプラチナブロンドに銀の鎧も、何かそれっぽくて格好いいなあ。
今日は皇帝の結婚祝いということで、学校みたいなところは休日になったり、公衆浴場を貸切で国民に無料開放とかしているんだって。
平和だ。
応援ありがとうございます!
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