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45歳童貞、異世界へ行く

俺氏、45歳童貞を白状させられる。

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「……カナメ。探したぞ」


ガイウスが迎えに来ちゃった。
何だかご機嫌斜めな様子だな。ついでに年齢見ちゃえ。

えーと。


インペラトル、ガイウス・クラウディウス・ケント・アウグストゥス 性別:男 年齢:250歳 状態:寝不足
職業:アルバ帝国皇帝/要のツガイ レベルMAX HP13000/15000 MP849/999
スキル:元素魔法レベル100・次元魔法レベル30・黒魔法レベル120、体術・剣技レベルMAX、帝王学、貴族の心得、心眼、乗馬、登攀、信用、交渉術、精神分析、探知、犬属共通言語
装備:皇帝の鎧・皇帝のマント・皇帝の手甲・皇帝の靴・皇帝の剣・肌着・財布・愛妻用プレゼント
所持金:88アウレ50デナリ50セス
備考:カリスマ(パッシブ) 毒耐性、麻痺耐性、呪い耐性、精神魔法無効
称号:プリンケプス、インペラトル、スポリア・オピーマ、多数国家を制覇せし者


*****


に……にひゃくごじゅう……。250歳ですと!?

すごく……年上でした。
年下の小僧だとばかり思っててごめんなさい!!


びっくりした。
しかし、そんな長生きする種族だとは思ってなかった。

250年も生きてれば、そりゃレベルMAXにもなれるよな。
相当武功もあげてるし。

……ん? 状態:寝不足?

体調不良のようだ。
それで何か不機嫌なのかな。


「ガイウス」
ちょいちょい、と手招きをして。

さなてぃおーsanatio
寄って来たガイウスの額に手を当て、癒しの魔法をかける。

「具合悪いの、治った?」
顔色は良くなった、かな?

「……ああ、良くなったよ。ありがとうカナメ」

にこにこしながら頭を撫でてくる。
ご機嫌は直ったようだ。


ガイウスは俺を抱き上げて。

「では、城に戻ろうか。……邪魔して悪かったな、ルキウス」

「……いえ、」
相変わらず犯罪者のようにガイウスを見ている神祇官に挨拶をして、神殿を出た。


「ルキウスと、何の話をしてたのかな?」

「年齢とか。250も年上なんて知らなかった」
結婚したというのに、何もわかってなさすぎるのではなかろうか。

まあ経緯が経緯だ。
仕方ないか。

一昨日出逢ったばかりだというのに、その日に抱かれて、次の日結婚式って。
スピード婚にも程がある。


あれ? 何で俺、結婚承諾したんだっけ?

昨夜と今朝はすっきりしたけど。
これからどうすんだって話だよな……。

大人になったらしてもいい、って許したようなものじゃないか。


10年後には、その気になったりするかね?
どうだろう。

死んでもお断り、ってほど嫌でもないのがまたアレだ。


*****


「……え?」

ガイウスの歩みが止まった。

「私が250年上、ということは。カナメはまだ、0歳、なのか……?」
「うん。おととい生まれたばっか」

「なのに、何でそんな魔法が使えるんだ?」
何でって。

神様のサービス?

「んー、最初から全部、持ってた」

ガイウスは額を押さえ、しばらく悩んだ様子で。

「は、はは、……そんな、魔王じゃあるまいし……」
首を振り、肩を竦めて笑っている。


って俺、魔王なんだけど。
職業欄に、そう書かれている。

「魔王だと、何か悪いことでもあるの?」
「そうだな。魔神の手先だから、討伐対象として、皆が命を狙って来るな」

げっ。
本当かよ。職業欄のことは黙っていよう……。

「魔神って、何?」
「悪い神様だ。真っ黒な犬の姿をしているという。見た者はいないのだけどね」


……何ですと!?

黒い犬。
もふもふなあれが、悪い神様だったのか!?

そんな。
魔法使いの王様、魔王になりたいとかトンチキな事を言ったのは俺だし。

願いは全部叶えてくれたし、色々大サービスしてくれた。
悪い神様じゃないと思うけどな。


神祇官だって、神のお告げを受けたって言ってたのに。

神に成りすまして、神官すら騙したってことになるのか? そんな馬鹿な。
でも、そういえばここの神様の像は、イヌミミの人間の姿だったな。

俺の世界の神様とこっちの世界の神様は別物ってことか?


そうなると。
まさしく俺は、魔神の手先になってしまう。
と、いうことは。

俺、ここでは討伐対象になっちゃうわけ!?


*****


生まれたばかりなのに、何故そんなに言葉が達者なのかと言うので。

仕方なく、前世の記憶があるからだと言った。
魔王バレするよりはマシである。


ここは自分が憧れていた古代の都市に似ている、と話すと。
ガイウスは納得したように頷いた。

「ああ、それで商店の品物の価格や公衆浴場に興味を持っていたのか」
「うん、そう」

ふと路面を見ると。
石畳の道に、丸いものが。

石で出来たマンホールの蓋、発見。


「あ、マンホール。ここ、下水道があるんだ……」

ローマのサンタ・マリア・イン・コスメディン教会名物、真実の口。
嘘吐きが口の中に手を入れると手を噛まれるとかいって、観光客が手を突っ込むやつ。

実は、あれは元々、マンホールの蓋なのである。
彫られているのは河神の顔だ。

古代ローマ時代、舗装街路に降る雨水を集め、街路下を通っている下水道に流し込むためのものだった。
こちらでも、蓋に河神の顔が彫られているようだ。イヌミミだけど。


「じゃあ、水道橋もあるのかな?」
「ああ、よく知ってるな。それも、元の世界の知識かい?」

うん、と頷いてみせる。

「水道橋に興味があるなら、明日にでも見に行こうか? 連れて行ってあげよう」
「うん、見たい! ありがとう」

ダーリン優しい。
好きになってしまいそう。いやならない。


ガイウスはにこにこしている。
「で、カナメの本来の年齢は、何歳だったのかな? あのような高レベル魔法が使えるほどの経験があるなら、少なくとも、子供ではないね?」

笑顔なのに、圧が半端ない。

さすがは歴戦の勇者である。
魔法が使えるのは単に魔王だから、とは言えないし。


ひいい。
心は永遠の少年ですう!!


*****


結局、白状させられてしまった。


天使のように愛らしい狐耳ショタっ子の中の人が享年45歳童貞の、冴えないオッサンである悲しい現実を。
あっちの世界では30まで童貞だと魔法使いに、40過ぎても童貞なら大魔法使いになるんです、と言って誤魔化したのである。

その記憶を持ったまま転生したので、魔法が使えるのだと。


「え……、本当に、45になっても何の経験も無かったというのか? 口付けも、何も?」

何で心なしか嬉しそうなのか。
腹立つ。

「何度も言わせるなあ!!」


そうだよ!
初めてのチューの相手もあんただよ! 悪かったな!!

フォークダンスとかで、女子と手を握ったことすらないです。
男子の数が女子より多かったからだし。

テンパって手汗かいてキョドってキモがられて逃げられたせいじゃないし。泣いてないし。


「言っとくけど、中身がオッサンだろうが、媚薬使って無理矢理、するのは。犯罪だからな」
ガイウスは、ぐっ、と一瞬黙ったが。

「だからといって、新婚初夜を楽しみにしていた夫の気持ちを弄ぶのも許されないと思うが?」


う。
それは確かにそうかも。

「で、でも、解呪できたからよかったけど、毎日しなきゃ死ぬとかいう呪いをかけるのもどうかと思う」

しかも勝手に。
男同士じゃ子供出来ないのに毎日とか、リスク多すぎだろ。

病気とか、仕事の都合で時間がとれなかったらどうするんだ。
後先考えてなさすぎるだろ。


*****


「毎日できなければ死ぬと思うくらい、抱きたくてたまらなかったんだ!」

うわあ、開き直った。

「おかげで昨日は一人悶々と夜を過ごして、寝不足だ!」


それを、初夜だったから張り切ったんだな、と思われて冷やかされて。
思わず泣きたくなったという。

それはおつらい。


「でも、治したし! あ、愛してるってのが口だけじゃないなら、大きくなるまで待てってば!」

ガイウスはぴたっと止まった。
「……わかった。カナメが大人になるまで待とう」

おお。
待てができるのか。えらいぞわんこ。


「決してカナメの身体だけが目的じゃないことを、充分に知ってもらわねばならないようだ」

ホントかなあ? 疑わしいが。

まあいい。
信じてやろう。俺は心が広いなあ。


そういえば、と懐を探って。
「いくら子供の身体だからといって、そう無防備でいられたら困る」

プレゼントを渡された。


紐パンだった。
これならいつ大人になっても安心だって?


あ、俺、ローブと靴しか装備してなかった。
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