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45歳童貞、異世界へ行く
俺氏、コロッセウムに行く。
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「ガイウス、」
手招きして。
「Deus・benedīcat」
神の加護を。
「仕事、頑張って」
頬にちゅーをして、手を振る。
「ああ、ありがとう、行って来る。愛してるよ、カナメ」
笑顔で手を振り返される。
くそぅ。
今日もいい男だな!
「operatio・aetas、infantia」
子供の姿になってみたけど。
まだ、心臓がばくばくいってる。
ドキドキするの、発情期のせいじゃなかったのか。
さすが皇帝のカリスマを持つ男だ。
男も女もよりどりみどり、大漁旗だな!
今更、初恋とか。
媚薬とか使われて、強引にヤられた相手だぞ?
結婚を承諾したのだって、お預けかましてやろうとしただけなのに。
……いつの間にか、失いたくない存在になっていたんだ。
だって。
自分の身を盾にしてまで護ってくれて。惚れない奴がいるか?
あんなことされたら、ほだされるだろ。
あれだ。
モテない人生過ぎて、正面から愛の告白とかされるのに耐性ゼロで、慣れてないから。
好き好き言われてる内に、こっちも何となくその気になっちゃったんだ。
きっとそうだ。
……魅了のせいじゃなくて。中身が好きだって言われたの。
正直、嬉しかった。
*****
少々遅い朝食を終えて。
部屋を出たら、騎士長官と会った。
「おはよう。二日酔いは、治った?」
「おはようございます。……え、ばれてましたか、こりゃお恥ずかしい」
照れたように頭を掻いている。
結婚式の宴で、うっかり飲み過ぎたそうだ。
やっぱりな。
今日は、俺の護衛を命じられたという。
見たいものがあれば、案内してくれるそうだ。
「じゃあ、城の外、行きたい」
商店街や、公衆浴場は見たけど。
他は見てないし。
「では、エスコートさせていただきます」
大袈裟に礼をしてみせた。
「元ムティナの連中、真面目にやってるそうですよ。カナメ様の近衛として雇うとか?」
ああ、奉仕活動中の元近衛隊か。
「うん。是非にって希望されたから。でも、何でガイウスじゃなくて、俺につきたいのかなあ? 仕えるなら、皇帝のがよくない?」
「そりゃ犬だって、仕える主人は自分で選びたいでしょう」
騎士長官は、がはは、と豪快に笑った。
犬人的に、犬はどういう位置にあるんだろう……。
騎士長官の馬に乗せられて外に出たら。
分水施設の前で、測量中の按察官と会った。
「これは皇妃様。城下のご視察ですか?」
笑顔で礼をされた。
「社会見学。土砂の浄化とか、手伝うから。工事の時、呼んでね」
「ありがとうございます。では、その際は遠慮なくお力添えをお願いします」
作業の邪魔をしては悪いので、早々にその場から去った。
「うはぁ……鬼のマルクスも笑うのか……」
騎士長官がぽかんとした顔で。
「鬼って。真面目に仕事してるのに、悪いよ」
と。
目の前に、大きな建物が。
もしや、あれは。
「コロッセウム……!?」
*****
円形劇場、または円形闘技場。
今でいうコロシアムの語源で、正式名称はフラウィウス円形闘技場。
古代ローマで、剣闘士競技などの見世物が行われた施設だ。
中央にあるアリーナを観客席が取り囲む楕円形の構造で、約5万人を収容できたという。
円形闘技場の入口は80ヶ所あって、皇帝や剣闘士専用のものを除いた76ヶ所の入口には番号が付いていた。
これは混乱を避けるため、入場券に番号を記して、そこから入場できるようにしてある。
初期は競技場に、ローマ水道から引いた水を張って、模擬海戦を上演していたという。
後期は、迫など複雑な舞台装置を設置し、剣闘士と戦う猛獣を闘技場のあるフロアまで運ぶ人力エレベーターもあった。
人力エレベーターは28基も設置されており、熊などの大型獣を昇降できるよう、重量は300kgまで対応していたという。
コロッセウムの横には噴水があって、闘いを終えた剣闘士が体を洗ったと伝えられている。
近くには剣闘士養成所もあり、長期間、熱狂的人気のあった出し物だったことが伺える。
キリスト教化に伴って血生臭い剣闘士競技は禁止された、と言われているが。
古代末期までは競技場として使用されていたと考えられている。
記録上、最も古い剣闘士試合は紀元前264年で。
故人の哀悼のための追悼闘技会や生贄を求める農神サトゥルナリアの祭で行われることが多かったという。
剣闘士同士、あるいは剣闘士と猛獣などとの戦いが繰り広げられたが、404年に西ローマ皇帝ホノリウスの命令で闘技場が閉鎖され、681年に全面的に禁止され、消滅した。
「おっ、闘技好きなんですかい? 今日は練習試合をしてるはずですが。見学します?」
皇妃なので、どこでも見学可能だそうだ。
「うん、見たい!」
*****
英語名グラディエーター、剣闘士は、古代ローマの闘技会で見世物として戦った剣士のことだ。
名前の由来は、ほとんどの剣闘士がグラディウスと呼ばれる剣を使用していたことから。
剣闘士のほとんどは奴隷、もしくは犯罪者だった。
前座剣闘士から新人剣闘士、二級剣闘士から昇格して。
筆頭剣闘士にもなれば、勝利の褒美によって、奴隷の立場から解放されることもあった。
昔は試合が始まれば剣闘士たちは相手が死ぬまで闘った、と言われてたけど。
実際は必ずしも死ぬまで戦わされる訳でもなく、助命されることが多かったという。
無事生き残り、引退した剣闘士の中には、興行師や剣術指南役として剣闘士を鍛える側になる人もいたそうだ。
生き残り、引退した元剣闘士には、その証として木剣が与えられた。
この木剣は、勇敢に戦った剣闘士に対する皇帝か、それに準じる有力者からの解放奴隷の証だった。
一方で、犯罪者の剣闘士の場合は。
訓練を受けることもなく獄中から闘技会に引き出され、防具なしで戦い、その大半は闘技場で命を落とした。
重罪者の場合、猛獣と戦わされたり、まだ息があった場合、試合終了後に運び出された後、止めを刺されたという。
闘技会の午前中は、野獣狩りが催された。
ヨーロッパ、中東、アフリカなどから集められた熊や虎、ライオンなどの猛獣や、象やキリンのような珍獣が闘技場に放たれ、闘獣士たちがそれを狩り、殺す。
殺した獣は神に奉げられるものだったが、後に、剣闘士試合の余興や前座として催されるようになった。
午後は罪人の公開処刑だ。
武器を持たされ罪人同士で死ぬまで戦わされるか、剣闘士と戦って殺される。
罪人の処刑が終わると、剣闘士の試合が始まる。
まずは二級剣闘士の試合で、くじ引きによって組み合わせを決められて戦った。
夕方頃からが本番で。
筆頭剣闘士をはじめとして、名の通った剣闘士たちの試合開始だ。
勝利者にはその証であるシュロの小枝が、MVPには月桂冠が授与された。
闘技会は皇帝や政治家、地方の名家などが主催し、切符は無料で市民に配られ、切符を持たない下層階級や非市民も最上段の立見席で観戦できたという。
皇帝自ら試合に出た、という記録もある。
通称暴虐王、コンモドゥス帝である。
ルキウス・アエリウス・アウレリウス・コンモドゥス・アウグストゥス・ヘラクレス・ロムルス・エクスペラトリス・アマゾニウス・インウィクトクス・フェリクス・ピウス。
フルネーム長い。
自らをヘラクレスの化身と称したくらいで。
弓術ではパルティア(イラン)人に勝り、槍ではムーア(北西アフリカ)人に勝ったという。
投槍で数十頭の豹を一度も外さずに射殺すし、全速力で走っている駝鳥の頭を弓矢で打ち抜くなど、常人離れした強さだったらしい。
*****
こちらの世界では、剣闘士は奴隷や犯罪者じゃないし、獣を殺し神に奉げるのは祭りの日だけで。
死人が出ることも滅多に無いらしくて安心した。
この皇帝席からは、アリーナがかぶりつきで見……背が届かない。
飛ぶか。
「はい、どうぞ」
騎士長官に持ち上げられて、肩に乗せられた。
「見えたー」
顔を出すと。
練習中の剣闘士がざわついた。
え、あれが皇妃様? とか。
聞こえてるぞ。
まあこの姿じゃしょうがないけど。
ガイウス、ロリコン帝の噂待ったなしだな!
手招きして。
「Deus・benedīcat」
神の加護を。
「仕事、頑張って」
頬にちゅーをして、手を振る。
「ああ、ありがとう、行って来る。愛してるよ、カナメ」
笑顔で手を振り返される。
くそぅ。
今日もいい男だな!
「operatio・aetas、infantia」
子供の姿になってみたけど。
まだ、心臓がばくばくいってる。
ドキドキするの、発情期のせいじゃなかったのか。
さすが皇帝のカリスマを持つ男だ。
男も女もよりどりみどり、大漁旗だな!
今更、初恋とか。
媚薬とか使われて、強引にヤられた相手だぞ?
結婚を承諾したのだって、お預けかましてやろうとしただけなのに。
……いつの間にか、失いたくない存在になっていたんだ。
だって。
自分の身を盾にしてまで護ってくれて。惚れない奴がいるか?
あんなことされたら、ほだされるだろ。
あれだ。
モテない人生過ぎて、正面から愛の告白とかされるのに耐性ゼロで、慣れてないから。
好き好き言われてる内に、こっちも何となくその気になっちゃったんだ。
きっとそうだ。
……魅了のせいじゃなくて。中身が好きだって言われたの。
正直、嬉しかった。
*****
少々遅い朝食を終えて。
部屋を出たら、騎士長官と会った。
「おはよう。二日酔いは、治った?」
「おはようございます。……え、ばれてましたか、こりゃお恥ずかしい」
照れたように頭を掻いている。
結婚式の宴で、うっかり飲み過ぎたそうだ。
やっぱりな。
今日は、俺の護衛を命じられたという。
見たいものがあれば、案内してくれるそうだ。
「じゃあ、城の外、行きたい」
商店街や、公衆浴場は見たけど。
他は見てないし。
「では、エスコートさせていただきます」
大袈裟に礼をしてみせた。
「元ムティナの連中、真面目にやってるそうですよ。カナメ様の近衛として雇うとか?」
ああ、奉仕活動中の元近衛隊か。
「うん。是非にって希望されたから。でも、何でガイウスじゃなくて、俺につきたいのかなあ? 仕えるなら、皇帝のがよくない?」
「そりゃ犬だって、仕える主人は自分で選びたいでしょう」
騎士長官は、がはは、と豪快に笑った。
犬人的に、犬はどういう位置にあるんだろう……。
騎士長官の馬に乗せられて外に出たら。
分水施設の前で、測量中の按察官と会った。
「これは皇妃様。城下のご視察ですか?」
笑顔で礼をされた。
「社会見学。土砂の浄化とか、手伝うから。工事の時、呼んでね」
「ありがとうございます。では、その際は遠慮なくお力添えをお願いします」
作業の邪魔をしては悪いので、早々にその場から去った。
「うはぁ……鬼のマルクスも笑うのか……」
騎士長官がぽかんとした顔で。
「鬼って。真面目に仕事してるのに、悪いよ」
と。
目の前に、大きな建物が。
もしや、あれは。
「コロッセウム……!?」
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円形劇場、または円形闘技場。
今でいうコロシアムの語源で、正式名称はフラウィウス円形闘技場。
古代ローマで、剣闘士競技などの見世物が行われた施設だ。
中央にあるアリーナを観客席が取り囲む楕円形の構造で、約5万人を収容できたという。
円形闘技場の入口は80ヶ所あって、皇帝や剣闘士専用のものを除いた76ヶ所の入口には番号が付いていた。
これは混乱を避けるため、入場券に番号を記して、そこから入場できるようにしてある。
初期は競技場に、ローマ水道から引いた水を張って、模擬海戦を上演していたという。
後期は、迫など複雑な舞台装置を設置し、剣闘士と戦う猛獣を闘技場のあるフロアまで運ぶ人力エレベーターもあった。
人力エレベーターは28基も設置されており、熊などの大型獣を昇降できるよう、重量は300kgまで対応していたという。
コロッセウムの横には噴水があって、闘いを終えた剣闘士が体を洗ったと伝えられている。
近くには剣闘士養成所もあり、長期間、熱狂的人気のあった出し物だったことが伺える。
キリスト教化に伴って血生臭い剣闘士競技は禁止された、と言われているが。
古代末期までは競技場として使用されていたと考えられている。
記録上、最も古い剣闘士試合は紀元前264年で。
故人の哀悼のための追悼闘技会や生贄を求める農神サトゥルナリアの祭で行われることが多かったという。
剣闘士同士、あるいは剣闘士と猛獣などとの戦いが繰り広げられたが、404年に西ローマ皇帝ホノリウスの命令で闘技場が閉鎖され、681年に全面的に禁止され、消滅した。
「おっ、闘技好きなんですかい? 今日は練習試合をしてるはずですが。見学します?」
皇妃なので、どこでも見学可能だそうだ。
「うん、見たい!」
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名前の由来は、ほとんどの剣闘士がグラディウスと呼ばれる剣を使用していたことから。
剣闘士のほとんどは奴隷、もしくは犯罪者だった。
前座剣闘士から新人剣闘士、二級剣闘士から昇格して。
筆頭剣闘士にもなれば、勝利の褒美によって、奴隷の立場から解放されることもあった。
昔は試合が始まれば剣闘士たちは相手が死ぬまで闘った、と言われてたけど。
実際は必ずしも死ぬまで戦わされる訳でもなく、助命されることが多かったという。
無事生き残り、引退した剣闘士の中には、興行師や剣術指南役として剣闘士を鍛える側になる人もいたそうだ。
生き残り、引退した元剣闘士には、その証として木剣が与えられた。
この木剣は、勇敢に戦った剣闘士に対する皇帝か、それに準じる有力者からの解放奴隷の証だった。
一方で、犯罪者の剣闘士の場合は。
訓練を受けることもなく獄中から闘技会に引き出され、防具なしで戦い、その大半は闘技場で命を落とした。
重罪者の場合、猛獣と戦わされたり、まだ息があった場合、試合終了後に運び出された後、止めを刺されたという。
闘技会の午前中は、野獣狩りが催された。
ヨーロッパ、中東、アフリカなどから集められた熊や虎、ライオンなどの猛獣や、象やキリンのような珍獣が闘技場に放たれ、闘獣士たちがそれを狩り、殺す。
殺した獣は神に奉げられるものだったが、後に、剣闘士試合の余興や前座として催されるようになった。
午後は罪人の公開処刑だ。
武器を持たされ罪人同士で死ぬまで戦わされるか、剣闘士と戦って殺される。
罪人の処刑が終わると、剣闘士の試合が始まる。
まずは二級剣闘士の試合で、くじ引きによって組み合わせを決められて戦った。
夕方頃からが本番で。
筆頭剣闘士をはじめとして、名の通った剣闘士たちの試合開始だ。
勝利者にはその証であるシュロの小枝が、MVPには月桂冠が授与された。
闘技会は皇帝や政治家、地方の名家などが主催し、切符は無料で市民に配られ、切符を持たない下層階級や非市民も最上段の立見席で観戦できたという。
皇帝自ら試合に出た、という記録もある。
通称暴虐王、コンモドゥス帝である。
ルキウス・アエリウス・アウレリウス・コンモドゥス・アウグストゥス・ヘラクレス・ロムルス・エクスペラトリス・アマゾニウス・インウィクトクス・フェリクス・ピウス。
フルネーム長い。
自らをヘラクレスの化身と称したくらいで。
弓術ではパルティア(イラン)人に勝り、槍ではムーア(北西アフリカ)人に勝ったという。
投槍で数十頭の豹を一度も外さずに射殺すし、全速力で走っている駝鳥の頭を弓矢で打ち抜くなど、常人離れした強さだったらしい。
*****
こちらの世界では、剣闘士は奴隷や犯罪者じゃないし、獣を殺し神に奉げるのは祭りの日だけで。
死人が出ることも滅多に無いらしくて安心した。
この皇帝席からは、アリーナがかぶりつきで見……背が届かない。
飛ぶか。
「はい、どうぞ」
騎士長官に持ち上げられて、肩に乗せられた。
「見えたー」
顔を出すと。
練習中の剣闘士がざわついた。
え、あれが皇妃様? とか。
聞こえてるぞ。
まあこの姿じゃしょうがないけど。
ガイウス、ロリコン帝の噂待ったなしだな!
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