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建国記念日をつくろう。
皇妃:公開処刑過ぎる美人コンテスト
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あっという間に12月。
明日はガイウスの誕生日で、建国百年記念の日だ。
名称は、建国記念感謝祭と、ガイウス皇帝の誕生日。でもって祝祭日の頭文字を取って、”グラナタ・フェス”という名称に決まった。
だって長いと言いにくいし……。
今日は、アルバ帝国の女性の中から美の女神を決める、という美人コンテスト的なものが開催される。
で、俺は優勝者を祝福するため、コロッセウムに設置された特別審査員席にいる。
女神選抜は4年に一度やるらしいけど、今回は特別だ。
優勝者は、明日の世紀競技祭の勝者に月桂冠を渡すという役目をする。大役だ。
準優勝者は、その前に行われる御前試合の勝者にシュロの枝を渡すらしい。
*****
奉仕活動が終わって、今は皇妃専任近衛隊長官になったセルジアを中心に、同じく皇妃専任近衛騎士になったキリナ、ロメリオ、トロワ、ラング、アーロン、クロードの6名が護衛として後ろについている。
二人くらいにして、交代制にすればいいのに。
何故か全員揃って毎日来るので、移動も大所帯になる。みんな真面目だなあ。休まなくていいのかな。
デキムス執政官も、審査員として呼ばれて来ている。
目が合うと、にっこり笑った。
プラチナの髪に、青灰色の目のロマンスグレーである。
最初の頃は言葉が堅苦しすぎて、何となく苦手だったけど。
話してみれば、ガイウスを好意的に評価してくれてる、凄く良い人だった。
「ガイウス陛下は本日遅くまで公務でお忙しいというのに、わたくしだけ眼福な仕事を賜り、まことに申し訳なく思います」
照れたように微笑んだ。
基本的に、審査員は貴族階級の独身男性と決まっているそうだ。
参加者が見初められて、審査員席のお偉いさんと結婚するシンデレラストーリーがわりとあるらしく。
この美人コンテストは、国中からやる気の溢れた選りすぐりの独身女性が集まってきている。
王座を降りたら怒った王妃に離婚されて以来、執政官は独身だという。
それでもずっと、ガイウスを支えてくれてきたんだなあ。
按察官と騎士長官には奥さんがいるし、神祇官は生涯独身を公言している。
なので執政官以外はあんまり知らないお偉いさんばっかだった。
他に知り合いは居ないかな、と見回してみる。
ルプスも審査員席の端っこにいた。ああ、そういえば独身だった。
俺の視線に気がついて。
目が合ったら、投げキッスされた。
何してんのルプス……。
*****
美人コンテストが始まった。
水着審査とかは無く、審査員席に向かって歌ったり踊ったり、自分の美点などをアピールしてる。
婚活だこれ。
俺の後ろの騎士に熱い視線を送ってる子もいた。
近衛隊は美形揃いだしね。
どの子も犬耳で犬しっぽがついているので、こちらも緊張せずに見ていられる。可愛い。
俺は美人というより可愛らしい顔をした、茶色で髪の長い、しっぽがふさふさした女の子に票を入れた。
番号か名前を書けばいいので、124番、と書いた。
結果はどうかなあ、と集計を待つ。
結果。
……何で俺以外の全員、俺に票を入れるのかなあ!?
出来レースってやつだったのかも。
女性人気を誇るガイウス皇帝と元花形剣闘士ルプスへ直接冠を渡す役だから、やっかまれることもあるだろう。
そりゃまあ皇妃であって、魔王討伐で英雄扱いもされてる俺なら、嫉妬とかされないだろうけど。
*****
結果、参加してない俺が優勝で。
俺が票を入れた子が準優勝になるという、何この公開処刑状態。
でも俺の選んだ子、124番クローディアは祝福を贈る際、頬を染めて嬉しそうに笑っていた。
ふさふさしたしっぽも揺れてる。近くで見ても可愛かった。
「皇妃様に選ばれるなんて、光栄です」
いや、ほんとごめんなさい……。
せめて、最高の祝福を贈ろう。
本来は優勝者に言うセリフだったけど。
「美の女神の化身クローディアに、祝福を。Deus・benedīcat」
クローディアは、身に余る光栄だと泣き出してしまった。
初めて知ったよ。
女の子泣かせるのって、罪悪感半端ないんですけど!
「皇妃様の好みは気立てのよさそうな可愛いしっぽふさふさ系か……ガイウス陛下に教えてやらねば」
「やめてほんとマジでやめて」
ルプスにからかわれるし。
執政官は、眼福眼福と言いながら仕事に戻った。
他のお偉いさんたちは、コンテスト参加者をナンパしに行ったようだ。
その子に票入れてやれよ!
「っていうか、何で全員、俺に票を入れるんだよ!? 男だよ!?」
出来レースとしても、せめて三分の一くらいは他に入れようよ。
バレバレだよ。
「まあこの国一番の美人は皇妃様だってのは共通認識されてるからな。明日は俺が優勝だ。よろしく」
ルプスはにやにやしてる。
魔王討伐で俺も英雄扱いになってるせいだろうし。
仕方ないか。
*****
最終確認で、色々なところを見て回る。
練習の甲斐があって、何とか小さな馬になら乗れるようになった。
ポニー可愛い。
コロッセウム横の噴水はメンテ中だ。明日はワインの噴水になるとか。
豪勢だなあ。百年祭だもんな。
ここは馬での移動が基本な国だから、そこかしこに馬用の水飲み場が設置されてる。
御者とかが座って休めるベンチもある。
造営局、いい仕事するなあ。
皇帝であるガイウスも、
執政官も。みんな、国民が快適に暮らせるようにと予算を捻出して頑張ってる。いい国だ。
「ここは、いい国ですね」
セルジアはしみじみと言った。
俺と同じように、こうして見て回って。
余計にそう感じたようだ。
「自分達のような流れ者にも、ちゃんと身分を与えてくれるし。誰も餓えていない。犯罪も少なく、大きな争いもない。上の者が誠実であり、職務を全うしている国は、このように豊かなのですね……」
「この国、好きになってくれた?」
セルジアと近衛隊、皆が好きだと言ってくれた。
悲しいかな、努力をせず金銭を得たがる輩は一定数は居るようで。
犯罪者はゼロにはならないけど。
夜中女性が一人歩きしても安全なくらい、平和な国だ。
その国を創ったのは、ガイウスだ。
そんな立派な皇帝の后として。
ガイウスが恥ずかしくないよう、俺も頑張らなきゃ。
*****
夕食を食べて、風呂に入って。
寝椅子でガイウスを待つうちに、眠ってしまったようだ。
優しく運ばれてる感覚があるけど。
眠くてなかなか瞼が開かない。
そっとベッドに寝かされて。
額にキスをされてる。
「おやすみ、私だけの至宝の宝石」
「恥ずかしいわー!!」
思わず突っ込みを入れてしまった。
あまりの恥ずかしいセリフに目が覚めてしまったじゃないか。
時計を見たら、ちょうど日付が変わる頃だった。
「ガイウス。お誕生日おめでとう」
右頬と左頬に交互にキスをして。
鼻の頭をくっつけて言う。
「251年前の今日、生まれてきてくれてありがとう。愛してるよ」
心から。
ありがとうと言いたかった。
何でもいう事をきくって言ったら、恥ずかしい要求をされたけど。
今日は建国百周年で、特別だからきいてやったんだからな。
毎年はやらないから!
*****
朝になって。
寝不足なはずなのに、何でガイウスはこんなに元気なんだろう……。
『神の加護』をかけようとしたら、不公平になるので今日はいいと言われてしまった。
パレードの馬車には防御魔法をかけてあるけど。
心配だから離れないで居るって言ったら、嬉しそうだった。全くもう。
午前9時。
大砲の音がして。
パレード開始だ。
先導はセルジア隊、後衛はガイウスの護衛で。二頭立ての馬車に乗って国を一周する。
沿道には人がいっぱいだ。
若い女の子達が祝いの花を投げている。ガイウス、イケメンだからなあ。
皇妃様、の声に手を振ったりしてたら。
腰をぐい、っと引かれて。
耳にキスされた。
沿道から、きゃあきゃあ言う声が上がる。
ガイウスは鎧を着ているので、叩いてもノーダメージだ。
全くもう。
昼頃、コロッセウム前に到着。一周して戻ってくるのに3時間掛かった。
コロッセウムでは、朝から大道芸人やら歌手やらが歌ったりして大盛況だった。
昼ご飯を食べつつ、観賞。
午後3時からは、剣闘士による御前試合だ。
真剣勝負なので、手に汗握る迫力だ。
でも、ガイウスたちの勝負のほうが凄かったなあ、とか思っちゃった。
勝者に、クローディアがシュロの枝を渡している。
こっちを見たので手を振ったら、笑顔で頭を下げた。
休憩を挟んで。
そろそろ世紀競技祭最大の試合が始まる時間だ。
午後6時、花火の打ち上げの後、試合開始。
ガイウスが席を立ったので。
後ろをついていく。
*****
「よう、疲れてないだろうな?」
ルプスが控え室に顔を出した。
あ、眼帯外したんだ。
「ルプス……、眼帯……は、」
ガイウスがぽかんとした顔で驚いてる。
「いやあ、実は前の試合の後に掛けてもらった回復で、治ってたようで。世紀の色男、復活、ってとこか?」
ウインクしてる。
確かにイケメンだ。
かっこよくて強いんだから、これは確かに人気出るよなって思う。
切符の打ち合わせの時に、治ったことは教えてもらってたんだけど。
古傷も治しちゃうなんて、回復魔法って凄いなあ。
師匠の回復に大喜びしたガイウスは、ルプスを抱き締めた。
身長、あまり変わらないように見えたけど。
ガイウスの方が背が高かったのかあ。
「良かった。治って、本当に良かった」
「バカヤロウ。試合前に、何だ。……戦意がそがれるじゃねえか」
ルプスは照れて耳を掻いて。
長い尾がふぁさふぁさ揺れてる。良かったなあ。
「それはそれ、今は元弟子として喜ばせて欲しい」
「両目揃ってんだ。本気で来ないと危ないからな?」
ルプスの挑発に、ガイウスは真顔で。
「万全の状態、望むところだ。勿論勝つ」
「ちっ、やっぱかわいくねえ」
とか言いながら、結局仲良いよね。
もうすぐ、試合開催だ。
どっちも頑張って!
明日はガイウスの誕生日で、建国百年記念の日だ。
名称は、建国記念感謝祭と、ガイウス皇帝の誕生日。でもって祝祭日の頭文字を取って、”グラナタ・フェス”という名称に決まった。
だって長いと言いにくいし……。
今日は、アルバ帝国の女性の中から美の女神を決める、という美人コンテスト的なものが開催される。
で、俺は優勝者を祝福するため、コロッセウムに設置された特別審査員席にいる。
女神選抜は4年に一度やるらしいけど、今回は特別だ。
優勝者は、明日の世紀競技祭の勝者に月桂冠を渡すという役目をする。大役だ。
準優勝者は、その前に行われる御前試合の勝者にシュロの枝を渡すらしい。
*****
奉仕活動が終わって、今は皇妃専任近衛隊長官になったセルジアを中心に、同じく皇妃専任近衛騎士になったキリナ、ロメリオ、トロワ、ラング、アーロン、クロードの6名が護衛として後ろについている。
二人くらいにして、交代制にすればいいのに。
何故か全員揃って毎日来るので、移動も大所帯になる。みんな真面目だなあ。休まなくていいのかな。
デキムス執政官も、審査員として呼ばれて来ている。
目が合うと、にっこり笑った。
プラチナの髪に、青灰色の目のロマンスグレーである。
最初の頃は言葉が堅苦しすぎて、何となく苦手だったけど。
話してみれば、ガイウスを好意的に評価してくれてる、凄く良い人だった。
「ガイウス陛下は本日遅くまで公務でお忙しいというのに、わたくしだけ眼福な仕事を賜り、まことに申し訳なく思います」
照れたように微笑んだ。
基本的に、審査員は貴族階級の独身男性と決まっているそうだ。
参加者が見初められて、審査員席のお偉いさんと結婚するシンデレラストーリーがわりとあるらしく。
この美人コンテストは、国中からやる気の溢れた選りすぐりの独身女性が集まってきている。
王座を降りたら怒った王妃に離婚されて以来、執政官は独身だという。
それでもずっと、ガイウスを支えてくれてきたんだなあ。
按察官と騎士長官には奥さんがいるし、神祇官は生涯独身を公言している。
なので執政官以外はあんまり知らないお偉いさんばっかだった。
他に知り合いは居ないかな、と見回してみる。
ルプスも審査員席の端っこにいた。ああ、そういえば独身だった。
俺の視線に気がついて。
目が合ったら、投げキッスされた。
何してんのルプス……。
*****
美人コンテストが始まった。
水着審査とかは無く、審査員席に向かって歌ったり踊ったり、自分の美点などをアピールしてる。
婚活だこれ。
俺の後ろの騎士に熱い視線を送ってる子もいた。
近衛隊は美形揃いだしね。
どの子も犬耳で犬しっぽがついているので、こちらも緊張せずに見ていられる。可愛い。
俺は美人というより可愛らしい顔をした、茶色で髪の長い、しっぽがふさふさした女の子に票を入れた。
番号か名前を書けばいいので、124番、と書いた。
結果はどうかなあ、と集計を待つ。
結果。
……何で俺以外の全員、俺に票を入れるのかなあ!?
出来レースってやつだったのかも。
女性人気を誇るガイウス皇帝と元花形剣闘士ルプスへ直接冠を渡す役だから、やっかまれることもあるだろう。
そりゃまあ皇妃であって、魔王討伐で英雄扱いもされてる俺なら、嫉妬とかされないだろうけど。
*****
結果、参加してない俺が優勝で。
俺が票を入れた子が準優勝になるという、何この公開処刑状態。
でも俺の選んだ子、124番クローディアは祝福を贈る際、頬を染めて嬉しそうに笑っていた。
ふさふさしたしっぽも揺れてる。近くで見ても可愛かった。
「皇妃様に選ばれるなんて、光栄です」
いや、ほんとごめんなさい……。
せめて、最高の祝福を贈ろう。
本来は優勝者に言うセリフだったけど。
「美の女神の化身クローディアに、祝福を。Deus・benedīcat」
クローディアは、身に余る光栄だと泣き出してしまった。
初めて知ったよ。
女の子泣かせるのって、罪悪感半端ないんですけど!
「皇妃様の好みは気立てのよさそうな可愛いしっぽふさふさ系か……ガイウス陛下に教えてやらねば」
「やめてほんとマジでやめて」
ルプスにからかわれるし。
執政官は、眼福眼福と言いながら仕事に戻った。
他のお偉いさんたちは、コンテスト参加者をナンパしに行ったようだ。
その子に票入れてやれよ!
「っていうか、何で全員、俺に票を入れるんだよ!? 男だよ!?」
出来レースとしても、せめて三分の一くらいは他に入れようよ。
バレバレだよ。
「まあこの国一番の美人は皇妃様だってのは共通認識されてるからな。明日は俺が優勝だ。よろしく」
ルプスはにやにやしてる。
魔王討伐で俺も英雄扱いになってるせいだろうし。
仕方ないか。
*****
最終確認で、色々なところを見て回る。
練習の甲斐があって、何とか小さな馬になら乗れるようになった。
ポニー可愛い。
コロッセウム横の噴水はメンテ中だ。明日はワインの噴水になるとか。
豪勢だなあ。百年祭だもんな。
ここは馬での移動が基本な国だから、そこかしこに馬用の水飲み場が設置されてる。
御者とかが座って休めるベンチもある。
造営局、いい仕事するなあ。
皇帝であるガイウスも、
執政官も。みんな、国民が快適に暮らせるようにと予算を捻出して頑張ってる。いい国だ。
「ここは、いい国ですね」
セルジアはしみじみと言った。
俺と同じように、こうして見て回って。
余計にそう感じたようだ。
「自分達のような流れ者にも、ちゃんと身分を与えてくれるし。誰も餓えていない。犯罪も少なく、大きな争いもない。上の者が誠実であり、職務を全うしている国は、このように豊かなのですね……」
「この国、好きになってくれた?」
セルジアと近衛隊、皆が好きだと言ってくれた。
悲しいかな、努力をせず金銭を得たがる輩は一定数は居るようで。
犯罪者はゼロにはならないけど。
夜中女性が一人歩きしても安全なくらい、平和な国だ。
その国を創ったのは、ガイウスだ。
そんな立派な皇帝の后として。
ガイウスが恥ずかしくないよう、俺も頑張らなきゃ。
*****
夕食を食べて、風呂に入って。
寝椅子でガイウスを待つうちに、眠ってしまったようだ。
優しく運ばれてる感覚があるけど。
眠くてなかなか瞼が開かない。
そっとベッドに寝かされて。
額にキスをされてる。
「おやすみ、私だけの至宝の宝石」
「恥ずかしいわー!!」
思わず突っ込みを入れてしまった。
あまりの恥ずかしいセリフに目が覚めてしまったじゃないか。
時計を見たら、ちょうど日付が変わる頃だった。
「ガイウス。お誕生日おめでとう」
右頬と左頬に交互にキスをして。
鼻の頭をくっつけて言う。
「251年前の今日、生まれてきてくれてありがとう。愛してるよ」
心から。
ありがとうと言いたかった。
何でもいう事をきくって言ったら、恥ずかしい要求をされたけど。
今日は建国百周年で、特別だからきいてやったんだからな。
毎年はやらないから!
*****
朝になって。
寝不足なはずなのに、何でガイウスはこんなに元気なんだろう……。
『神の加護』をかけようとしたら、不公平になるので今日はいいと言われてしまった。
パレードの馬車には防御魔法をかけてあるけど。
心配だから離れないで居るって言ったら、嬉しそうだった。全くもう。
午前9時。
大砲の音がして。
パレード開始だ。
先導はセルジア隊、後衛はガイウスの護衛で。二頭立ての馬車に乗って国を一周する。
沿道には人がいっぱいだ。
若い女の子達が祝いの花を投げている。ガイウス、イケメンだからなあ。
皇妃様、の声に手を振ったりしてたら。
腰をぐい、っと引かれて。
耳にキスされた。
沿道から、きゃあきゃあ言う声が上がる。
ガイウスは鎧を着ているので、叩いてもノーダメージだ。
全くもう。
昼頃、コロッセウム前に到着。一周して戻ってくるのに3時間掛かった。
コロッセウムでは、朝から大道芸人やら歌手やらが歌ったりして大盛況だった。
昼ご飯を食べつつ、観賞。
午後3時からは、剣闘士による御前試合だ。
真剣勝負なので、手に汗握る迫力だ。
でも、ガイウスたちの勝負のほうが凄かったなあ、とか思っちゃった。
勝者に、クローディアがシュロの枝を渡している。
こっちを見たので手を振ったら、笑顔で頭を下げた。
休憩を挟んで。
そろそろ世紀競技祭最大の試合が始まる時間だ。
午後6時、花火の打ち上げの後、試合開始。
ガイウスが席を立ったので。
後ろをついていく。
*****
「よう、疲れてないだろうな?」
ルプスが控え室に顔を出した。
あ、眼帯外したんだ。
「ルプス……、眼帯……は、」
ガイウスがぽかんとした顔で驚いてる。
「いやあ、実は前の試合の後に掛けてもらった回復で、治ってたようで。世紀の色男、復活、ってとこか?」
ウインクしてる。
確かにイケメンだ。
かっこよくて強いんだから、これは確かに人気出るよなって思う。
切符の打ち合わせの時に、治ったことは教えてもらってたんだけど。
古傷も治しちゃうなんて、回復魔法って凄いなあ。
師匠の回復に大喜びしたガイウスは、ルプスを抱き締めた。
身長、あまり変わらないように見えたけど。
ガイウスの方が背が高かったのかあ。
「良かった。治って、本当に良かった」
「バカヤロウ。試合前に、何だ。……戦意がそがれるじゃねえか」
ルプスは照れて耳を掻いて。
長い尾がふぁさふぁさ揺れてる。良かったなあ。
「それはそれ、今は元弟子として喜ばせて欲しい」
「両目揃ってんだ。本気で来ないと危ないからな?」
ルプスの挑発に、ガイウスは真顔で。
「万全の状態、望むところだ。勿論勝つ」
「ちっ、やっぱかわいくねえ」
とか言いながら、結局仲良いよね。
もうすぐ、試合開催だ。
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