19 / 50
ゼウクシデモス国へ
魔王城到着
「なんていうか……。フツーのお城、だね。でかいけど」
「普通、ですか?」
アリストンは普通、という俺の感想が不思議に思えたようだ。
「いや、想像してたのと違って、ちゃんとしたお城だなって」
「ああ、成程」
魔王城、というようなおどろおどろしいイメージとは違って。
古さは感じるものの、きちんと手入れのされた、綺麗な城だった。
庭木も剪定されて整えられ、見事なものだった。イングリッシュガーデンみたいだ。噴水や、東屋っぽいのもある。
ただ、規格が大きすぎた。
入り口からして、巨人でも住んでるの? と思うくらい大きい。
ドラゴンの姿のままでも通れるように、だろうか?
馬から降りて……もとい、降ろしてもらって。
扉の前に行くと。
巨大な扉が、音もなく開いた。
*****
そして、中から出て来たのは。
細身の、普通の……人間の青年に見えた。普通、でもないか。
けっこうな美形だ。
美形度ではアリストンに負けるものの、整った顔立ちをしている。
「お待ちしておりました。勇者アリス様。陛下の元へご案内申し上げます」
白い燕尾服みたいな衣装を身に着けた、銀髪に、青い目の青年は。微笑むように目を細めた。
うわ、名前知られてるし。
こっちで名乗るって決めた方の名前だけど。誰から聞いたんだろう? いつの間に?
敵意は感じない。
むしろ、何故か好意を向けられてるようだ。
「私、パンテレイモンと申します。どうぞお見知り置きを」
恭しく礼をした。
名乗り方も、国によって違うのかな? ここじゃ身分は言わないんだ。
それとも、あえて隠してるとか?
「私の傍から、決して離れないでください」
と。
しっかりと俺の肩を抱いているアリストンと一緒に、城に足を踏み入れた。
次の瞬間。
景色が一変して。
どうやら、薄暗い大広間にいるようだった。
振り返ると、背後にあったはずの扉は消えていた。
転移したのかな?
*****
目の前には、見上げるほど巨大な人影。
部屋の端から順に灯りがともっていき、あっという間に部屋全体が明るくなっていく。
これ、精霊魔法だ。
火の精が、嬉しそうに飛び回っている。
魔法の火によって照らし出された人影は。
水牛みたいな大きい角のある、仮面をつけた大きな男だと判明した。
黒い長髪は見えるけど。顔全体を覆った仮面のせいで、金色だという目は見えない。
身長は、軽く3メートル以上はありそう。
巨大な王座に座っている。
背には、蝙蝠の皮膜を思わせる、黒くて大きな翼。
あれがドラゴンの羽なんだ。でも、あの巨体で飛ぶには小さいような……。魔力で飛ぶのかも。
この、やたら大きな人が。”魔王”?
見た目は確かにちょっと怖いし、魔王みたいだけど。
嫌な感じはしない。むしろ、鳥みたいな感じがする。
その肩には、白いフクロウが乗っていた。
対比で、より小さく見えるけど。
あれって。
……昨夜治療した、フクロウだよな?
アリストンの言った通り、獣人で。
もしかして、討伐計画を知られていて。ずっと尾行されてたとか?
だから、俺の名前も知ってたのかな?
でも、やっぱり敵意は感じないし、いやな感じもしないんだよな……。
*****
『ようこそ我が城へ。異界より召喚されし勇者よ』
広間に響く、低い声。
うわあ、迫力あるなあ。
事前情報がなかったら、怯えて震えてたかも。
『そなたは、我が身を滅ぼすことのできる、唯一の存在である』
……え、そうなの?
勇者にしか倒せないとか。そんな特殊な設定、すごく本物の魔王っぽいんだけど。
「あれが、征服王ゼウクシデモスⅠ世。人々から”魔王”と呼ばれるモノです。……恐ろしいでしょう? どうします? 討伐致しますか?」
アリストンが、俺の耳元で囁いた。
何でそんなに好戦的なの?
その割に、少し悲し気な顔をしている。何でだろう。
「いや、ちゃんと、話をしたい。この城も、いやな気配はしないし。悪い人じゃないと思うよ」
「……そうですか」
そりゃ、見た目や声は、ちょっと怖いけど。
それだけで攻撃するほど考えなしではないつもりだ。
『良い”ヒト”でもないと思うが?』
魔王は、笑いを堪えるように言った。
そういえば、人間じゃなくて、竜の獣人だった。
少々離れてるし、かなり小声だったのに。
内緒話は全部聞こえてしまっていたようだ。
魔王の耳は地獄耳……。
クックックッ、と。
低い笑い声が広間に響いた。
『さて。余興はこのくらいにしておこう。お察しの通り、”征服王ゼウクシデモスⅠ世”とは、ヒトが勝手につけた名である。……ゼウクシデモス国王の本来の名は、アレクシスという。建国から為政しているため、未だ世継ぎはしていない』
ああ、だから”一世”なんだ?
建国から今日までずっと、同じ人が王様なわけか。すごいな。
それにしても。
国王の名は、って。まるで他人事みたいな言い方だな?
「普通、ですか?」
アリストンは普通、という俺の感想が不思議に思えたようだ。
「いや、想像してたのと違って、ちゃんとしたお城だなって」
「ああ、成程」
魔王城、というようなおどろおどろしいイメージとは違って。
古さは感じるものの、きちんと手入れのされた、綺麗な城だった。
庭木も剪定されて整えられ、見事なものだった。イングリッシュガーデンみたいだ。噴水や、東屋っぽいのもある。
ただ、規格が大きすぎた。
入り口からして、巨人でも住んでるの? と思うくらい大きい。
ドラゴンの姿のままでも通れるように、だろうか?
馬から降りて……もとい、降ろしてもらって。
扉の前に行くと。
巨大な扉が、音もなく開いた。
*****
そして、中から出て来たのは。
細身の、普通の……人間の青年に見えた。普通、でもないか。
けっこうな美形だ。
美形度ではアリストンに負けるものの、整った顔立ちをしている。
「お待ちしておりました。勇者アリス様。陛下の元へご案内申し上げます」
白い燕尾服みたいな衣装を身に着けた、銀髪に、青い目の青年は。微笑むように目を細めた。
うわ、名前知られてるし。
こっちで名乗るって決めた方の名前だけど。誰から聞いたんだろう? いつの間に?
敵意は感じない。
むしろ、何故か好意を向けられてるようだ。
「私、パンテレイモンと申します。どうぞお見知り置きを」
恭しく礼をした。
名乗り方も、国によって違うのかな? ここじゃ身分は言わないんだ。
それとも、あえて隠してるとか?
「私の傍から、決して離れないでください」
と。
しっかりと俺の肩を抱いているアリストンと一緒に、城に足を踏み入れた。
次の瞬間。
景色が一変して。
どうやら、薄暗い大広間にいるようだった。
振り返ると、背後にあったはずの扉は消えていた。
転移したのかな?
*****
目の前には、見上げるほど巨大な人影。
部屋の端から順に灯りがともっていき、あっという間に部屋全体が明るくなっていく。
これ、精霊魔法だ。
火の精が、嬉しそうに飛び回っている。
魔法の火によって照らし出された人影は。
水牛みたいな大きい角のある、仮面をつけた大きな男だと判明した。
黒い長髪は見えるけど。顔全体を覆った仮面のせいで、金色だという目は見えない。
身長は、軽く3メートル以上はありそう。
巨大な王座に座っている。
背には、蝙蝠の皮膜を思わせる、黒くて大きな翼。
あれがドラゴンの羽なんだ。でも、あの巨体で飛ぶには小さいような……。魔力で飛ぶのかも。
この、やたら大きな人が。”魔王”?
見た目は確かにちょっと怖いし、魔王みたいだけど。
嫌な感じはしない。むしろ、鳥みたいな感じがする。
その肩には、白いフクロウが乗っていた。
対比で、より小さく見えるけど。
あれって。
……昨夜治療した、フクロウだよな?
アリストンの言った通り、獣人で。
もしかして、討伐計画を知られていて。ずっと尾行されてたとか?
だから、俺の名前も知ってたのかな?
でも、やっぱり敵意は感じないし、いやな感じもしないんだよな……。
*****
『ようこそ我が城へ。異界より召喚されし勇者よ』
広間に響く、低い声。
うわあ、迫力あるなあ。
事前情報がなかったら、怯えて震えてたかも。
『そなたは、我が身を滅ぼすことのできる、唯一の存在である』
……え、そうなの?
勇者にしか倒せないとか。そんな特殊な設定、すごく本物の魔王っぽいんだけど。
「あれが、征服王ゼウクシデモスⅠ世。人々から”魔王”と呼ばれるモノです。……恐ろしいでしょう? どうします? 討伐致しますか?」
アリストンが、俺の耳元で囁いた。
何でそんなに好戦的なの?
その割に、少し悲し気な顔をしている。何でだろう。
「いや、ちゃんと、話をしたい。この城も、いやな気配はしないし。悪い人じゃないと思うよ」
「……そうですか」
そりゃ、見た目や声は、ちょっと怖いけど。
それだけで攻撃するほど考えなしではないつもりだ。
『良い”ヒト”でもないと思うが?』
魔王は、笑いを堪えるように言った。
そういえば、人間じゃなくて、竜の獣人だった。
少々離れてるし、かなり小声だったのに。
内緒話は全部聞こえてしまっていたようだ。
魔王の耳は地獄耳……。
クックックッ、と。
低い笑い声が広間に響いた。
『さて。余興はこのくらいにしておこう。お察しの通り、”征服王ゼウクシデモスⅠ世”とは、ヒトが勝手につけた名である。……ゼウクシデモス国王の本来の名は、アレクシスという。建国から為政しているため、未だ世継ぎはしていない』
ああ、だから”一世”なんだ?
建国から今日までずっと、同じ人が王様なわけか。すごいな。
それにしても。
国王の名は、って。まるで他人事みたいな言い方だな?
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜
せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。
しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……?
「お前が産んだ、俺の子供だ」
いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!?
クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに?
一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士
※一応オメガバース設定をお借りしています
【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
転生?憑依? 中身おっさんの俺は異世界で無双しない。ただし予想の斜め上は行く!
くすのき
BL
最初に謝っておきます!
漬物業界の方、マジすまぬ。
&本編完結、番外編も!
この話は――三十路の男が、ある日突然、ラシェル・フォン・セウグとして異世界におりたち、ひょんな事から助けた8歳の双子と婚約して、ゴ◯チュウもどきから授かった力で回復薬(漬物味)を作って、なんか頑張るコメディーBLです!
嘘つき王と影の騎士
篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」
国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。
酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。
そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。
代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。
死を待つためだけに辿り着いた冬の山。
絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。
守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。
無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。
なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。
これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。
【完結】名前のない皇后 −記憶を失ったSubオメガはもう一度愛を知る−
社菘
BL
息子を産んで3年。
瀕死の状態で見つかったエリアスは、それ以前の記憶をすっかり失っていた。
自分の名前も覚えていなかったが唯一所持品のハンカチに刺繍されていた名前を名乗り、森の中にひっそりと存在する地図上から消された村で医師として働く人間と竜の混血種。
ある日、診療所に運ばれてきた重病人との出会いがエリアスの止まっていた時を動かすことになる。
「――お前が俺の元から逃げたからだ、エリアス!」
「本当に、本当になにも覚えていないんだっ!」
「ととさま、かかさまをいじめちゃメッ!」
破滅を歩む純白竜の皇帝《Domアルファ》× 記憶がない混血竜《Subオメガ》
「俺の皇后……」
――前の俺?それとも、今の俺?
俺は一体、何者なのだろうか?
※オメガバース、ドムサブユニバース特殊設定あり(かなり好き勝手に詳細設定をしています)
※本作では第二性→オメガバース、第三性(稀)→ドムサブユニバース、二つをまとめてSubオメガ、などの総称にしています
※作中のセリフで「〈〉」この中のセリフはコマンドになります。読みやすいよう、コマンドは英語表記ではなく、本作では言葉として表記しています
※性的な描写がある話数に*をつけています
✧毎日7時40分+17時40分に更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。