勇者失格⁉ ~異世界で美貌の騎士と魔王討伐に行ったらいつの間にか魔王の伴侶になってました~

篠崎笙

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ゼウクシデモス国王

騎士が国王で国王が騎士で

『我が国の国王のご幼名は、アリストンと申される。しばし国外を放浪中であったが。……お帰りを、心よりお待ちしておりました。陛下ス・マヘスター
仮面の巨人はこちらに向かって、恭しく頭を下げた。


……陛下?

陛下って。
臣下が、国王に向かって言う敬称だよな。王子なら殿下だ。滅多に使われないけど。日本では天皇家に対して使われる。

城での晩餐会でも、何回か聞いた。
アダマンティオス王が、そう呼ばれていた。


「……え?」

今。
確かに、こっちに向かって陛下、って言ったよな?

俺に?
いや、俺に対して言ったんじゃない。今のは。


、だ。


……ゼウクシデモス国の王様の幼名が、アリストン?
わあ、王様と俺の騎士が同じ名前だなんて、すごい偶然だなあ。

宝くじの一等前後賞が当たるくらい? それより雷が当たる確率の方が高いんだっけ。
隕石に当たる確率より上かな?


思わず遠い目になる。


*****


「珍しく口が回ると思えば。馬鹿者、まだ早い」
アリストンが、愚痴るように呟いた。

アリストンが丁寧語じゃないのを初めて聞いたのに驚いて、隣を見たら。

アリストンの金色だった髪が、一瞬で黒く染まり。
黒い髪は、あっという間に肩よりも長く伸びていった。

エメラルドのようだった目は、金色になっていた。
瞳孔は、縦に長い。

秀麗な眉をしかめて、目の前の大男を睨んでいる。

……頭には、水牛みたいに立派な角も生えている。
背中に、羽も。


大きさと、仮面の有無は違うものの。
同じ姿の人が二人いるという、この状況。

混乱して。
つい、二人を交互に見てしまう。


やっぱり、何度見ても仮面と大きさ以外、そっくり同じだ。
と、いうことは。


……どういうこと!?


*****


「前もって心構えをさせた上で、ゆっくり弁解……否、説明しようと考えていたというのに。貴様ら、無粋にも程があろう」

アリストンの、白銀に輝く騎士装束も。
いつの間にか、目の前にいた人と同じものになっていた。

黒い、装飾は控えめな、軍服みたいな服。


彼は、くるりとこちらを向いて。
「騙したような形になり、申し訳なかった。……しかし、そなたに剣を捧げたのも、身命を賭して護ると誓ったのも、決して偽りではない」

もう聞き慣れてしまった声よりも、少しだけ、低い声。

……話し方も変わってる。
ちょっと偉そうだ。王様だから?


目の色と、髪の色と長さが変わって。
角と、羽が生えた。

身長は、前より10センチくらい高くなってる。
あと、体格が、更に逞しくなってるかな?

でも、その人間離れした美貌はほとんど変わってない。
ちょっと大人っぽくなったかな、って印象を受けるくらいで。


顔はアリストンのままなのに。
何か違う。

髪と目の色が違うだけで、こうも印象が変わるものなんだ、と思った。


*****


『見苦しい』
「ここは素直に謝るべきですよ、陛下」

仮面の巨人は、いつの間にか、半分くらいのサイズに縮んでいて。
今まで姿を消していたパンテレイモンも、その隣にいた。背中には、白い、やわらかそうな翼。

……なるほど。
あのフクロウ、パンテレイモンだったんだ。

俺に対して、最初から何となく好意的だった理由が判明した。
怪我を治してあげたからか。


「今、申し訳ないと謝っただろうが。貴様らは黙っておれ」

『誠意が無い』
「そんなの謝罪した内に入りませんよ、陛下」

遠慮が見られない突っ込みだった。


『ヤニと申します』
仮面の人が、改めて名乗った。

カラスの獣人で。変化の魔法を使って国王に化けて影武者をしていたという。
服ももう、パンテレイモンと同じ服になっている。燕尾服みたいな、こちらは黒い服。

二人とも、国王の側近みたいなものだそうだ。
それにしては、気安い感じだけど。


「護衛のため我が身を鳥に変え、陛下と勇者様を尾行していたところ。うっかり猟師に撃たれ傷を負い、困っていた私を助けて頂き、そのお心の優しさに感動いたしました。まことに感謝しております」
パンテレイモンは、俺に向かって恭しくお辞儀をした。

やっぱり、尾行してたんだ。
そして、それを正直に白状しちゃうんだ。


……確かにそうか。
一国の王様が、護衛もなく、一人でいるわけがない。

でも、護衛なのにうっかり猟師に撃たれるとか、うっかりすぎない? 真っ白で、夜は目立つから?
助けられて、良かったけど。


「これからは、陛下よりも真摯に、勇者様にお仕えしたく存じ上げます」
パンテレイモンは晴れやかな笑顔を向けて言った。

……いや、俺に対しては、真摯にお仕えしてくれなくていいから。
怪我を治したこと、そんなに感謝してくれてるのかな? 別に気にしなくていいのに。
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