21 / 50
ゼウクシデモス国王
国王、理由を語る
「ええい、喧しい鳥どもめ」
ゼウクシデモス国王が、指をパチンと鳴らした直後。
景色が一変して。
どこかの部屋に移動していた。
壁の感じからして、同じ城の中だろうとわかる。
あ、天蓋付きベッドがある。
ここ、寝室かな? 客室ではなさそうだけど。
オーケアノス国のお城のより刺繍とか手が込んでて豪華だなあ、とベッドを見てたら。
「ここは私室だ。他意は無い。邪魔をされずに話ができるよう、移動した。……ここへ座りたまえ」
椅子を勧められて。
「テ・コン・レッチェのアスーカルは二つで良いな?」
甘めのミルクティーを出された。
……この流れるようなエスコートと甲斐甲斐しさは、俺の騎士だったアリストンのままなんだけど。
何だろう。
この、ものすごい違和感。
国で一番偉いはずの王様が自ら、俺にお茶を淹れてくれてるからだろうか。
なのに、口調は王様だからかな? この、もやもやした感じは。
*****
「……これからは、何と呼べばいいですか? ゼウクシデモス国王陛下?」
陛下、という言葉に。
向かい側の椅子に座っていたゼウクシデモス国王は、焦ったように腰を浮かせた。
「そなたは臣下ではない。陛下はやめてくれ。敬語もだ。現在の名はアレクシスというが。アリストンも私の幼名であり、偽名ではない」
そっと、俺の手を取った。
「そうなんだ」
ああ、手も大きくなってるんだなあ。
爪は尖っていて、黒くて丈夫そうだ。刺さったら痛そう。
「睦月の好きな名で呼ぶがいい。……いや、敬称でなく、名で呼んで欲しい」
そんな憂い顔するの、ずるいと思う。
竜人は、幼少期……成体になる前は、人間と同じような姿をしていて。魔力も成体の半分程度しかなく、脆弱なので。
成体になるまでは竜人狩りなどに狙われないよう、人に紛れて暮らすほうが安全らしい。
今のアレクシスの姿になる前……幼体の頃は金髪碧眼で、まだ角も羽も生えていなかった。
身体の時間を戻しただけで、アリストンの時の姿は魔法で全くの別人に化けたわけではない、という。
ヤニも言ってたけど。
幼名がアリストンだったのは事実らしいし。
オーケアノス国での騎士総長の地位も、実際に傭兵から実力で成りあがって得たものだし。
全部が全部、嘘ではなかったんだろうけど。
何だろう。
この、やるせない気持ち。
「じゃあ、アレクシス」
つい、視線や声が冷たくなるのは仕方がないと思う。
「話して。イチから。全部」
ゼウクシデモス国王は、俺の前に来て。
騎士のように跪くと。
「……仰せの通り」
と言って。
これまでのことを語った。
*****
ゼウクシデモス国は、千年以上前から竜王アレクシスが統治していた。
アレクシスは、竜人の中でも一番魔力が強く、力も強かったため、”竜王”と呼ばれ。全ての獣人の頂点に立っていた。
力の強い竜人であるアレクシスの治める国は、平和で豊かだった。
しかし、その豊かな国土は、元からあったのではなく。
国民が長い時間をかけて開墾し、努力した上で手に入れたものである。
2,3百年ほど前だろうか。いつの間にか、隣に国が築かれていた。
それがオーケアノス国である。
その国民が、ゼウクシデモス国の肥沃な土地を欲しがり、何かとちょっかいをかけてくるようになった。いちいち追い払ってもきりがない。
そうしている内、国民にも犠牲者が出た。
ゼウクシデモス国の王は魔王と呼ばれるようになり、オーケアノス国では獣人が迫害された。
自国に侵入してくる者は全て処刑することにしたが。
子供には罪はないだろう、と。子供だけは見逃して、追い払っていた。
そして数年前。
オーケアノス国のアダマンティオスが、『魔王討伐』を計画しているらしい、というきな臭い噂を聞きつけたアレクシスは、変身能力のある側近のヤニを影武者に立て、自らオーケアノス国へ調査に出た。
オーケアノス国の王であるアダマンティオスは獣人を嫌っているし、竜人の姿のままでは目立つため。
人間と変わらない幼体に姿を変え、幼名を名乗り、傭兵として潜り込んだ。
幼体で人間に紛れて暮らしていたのはもう千年も前のことで、彼の顔を覚えている者は存在しない。
ゼウクシデモス国の王アレクシスは、いち傭兵アリストンとして、すんなり侵入できた。
そこで、彼らが異世界から”勇者”を召喚し、自分を始末しようと計画していることを知った。
それが、竜人である自分を滅ぼすのに可能な方法であることを。
この国で一番強い騎士を勇者のお付きにし、魔王討伐へ向かわせる、と聞いたアリストンは。
試合に勝ち、最速で騎士総長に成り上がり。忠実で強く、立派な騎士を演じた。
王宮に自由に出入りし、召喚時も、その場に同席できるように。
ゼウクシデモス国王が、指をパチンと鳴らした直後。
景色が一変して。
どこかの部屋に移動していた。
壁の感じからして、同じ城の中だろうとわかる。
あ、天蓋付きベッドがある。
ここ、寝室かな? 客室ではなさそうだけど。
オーケアノス国のお城のより刺繍とか手が込んでて豪華だなあ、とベッドを見てたら。
「ここは私室だ。他意は無い。邪魔をされずに話ができるよう、移動した。……ここへ座りたまえ」
椅子を勧められて。
「テ・コン・レッチェのアスーカルは二つで良いな?」
甘めのミルクティーを出された。
……この流れるようなエスコートと甲斐甲斐しさは、俺の騎士だったアリストンのままなんだけど。
何だろう。
この、ものすごい違和感。
国で一番偉いはずの王様が自ら、俺にお茶を淹れてくれてるからだろうか。
なのに、口調は王様だからかな? この、もやもやした感じは。
*****
「……これからは、何と呼べばいいですか? ゼウクシデモス国王陛下?」
陛下、という言葉に。
向かい側の椅子に座っていたゼウクシデモス国王は、焦ったように腰を浮かせた。
「そなたは臣下ではない。陛下はやめてくれ。敬語もだ。現在の名はアレクシスというが。アリストンも私の幼名であり、偽名ではない」
そっと、俺の手を取った。
「そうなんだ」
ああ、手も大きくなってるんだなあ。
爪は尖っていて、黒くて丈夫そうだ。刺さったら痛そう。
「睦月の好きな名で呼ぶがいい。……いや、敬称でなく、名で呼んで欲しい」
そんな憂い顔するの、ずるいと思う。
竜人は、幼少期……成体になる前は、人間と同じような姿をしていて。魔力も成体の半分程度しかなく、脆弱なので。
成体になるまでは竜人狩りなどに狙われないよう、人に紛れて暮らすほうが安全らしい。
今のアレクシスの姿になる前……幼体の頃は金髪碧眼で、まだ角も羽も生えていなかった。
身体の時間を戻しただけで、アリストンの時の姿は魔法で全くの別人に化けたわけではない、という。
ヤニも言ってたけど。
幼名がアリストンだったのは事実らしいし。
オーケアノス国での騎士総長の地位も、実際に傭兵から実力で成りあがって得たものだし。
全部が全部、嘘ではなかったんだろうけど。
何だろう。
この、やるせない気持ち。
「じゃあ、アレクシス」
つい、視線や声が冷たくなるのは仕方がないと思う。
「話して。イチから。全部」
ゼウクシデモス国王は、俺の前に来て。
騎士のように跪くと。
「……仰せの通り」
と言って。
これまでのことを語った。
*****
ゼウクシデモス国は、千年以上前から竜王アレクシスが統治していた。
アレクシスは、竜人の中でも一番魔力が強く、力も強かったため、”竜王”と呼ばれ。全ての獣人の頂点に立っていた。
力の強い竜人であるアレクシスの治める国は、平和で豊かだった。
しかし、その豊かな国土は、元からあったのではなく。
国民が長い時間をかけて開墾し、努力した上で手に入れたものである。
2,3百年ほど前だろうか。いつの間にか、隣に国が築かれていた。
それがオーケアノス国である。
その国民が、ゼウクシデモス国の肥沃な土地を欲しがり、何かとちょっかいをかけてくるようになった。いちいち追い払ってもきりがない。
そうしている内、国民にも犠牲者が出た。
ゼウクシデモス国の王は魔王と呼ばれるようになり、オーケアノス国では獣人が迫害された。
自国に侵入してくる者は全て処刑することにしたが。
子供には罪はないだろう、と。子供だけは見逃して、追い払っていた。
そして数年前。
オーケアノス国のアダマンティオスが、『魔王討伐』を計画しているらしい、というきな臭い噂を聞きつけたアレクシスは、変身能力のある側近のヤニを影武者に立て、自らオーケアノス国へ調査に出た。
オーケアノス国の王であるアダマンティオスは獣人を嫌っているし、竜人の姿のままでは目立つため。
人間と変わらない幼体に姿を変え、幼名を名乗り、傭兵として潜り込んだ。
幼体で人間に紛れて暮らしていたのはもう千年も前のことで、彼の顔を覚えている者は存在しない。
ゼウクシデモス国の王アレクシスは、いち傭兵アリストンとして、すんなり侵入できた。
そこで、彼らが異世界から”勇者”を召喚し、自分を始末しようと計画していることを知った。
それが、竜人である自分を滅ぼすのに可能な方法であることを。
この国で一番強い騎士を勇者のお付きにし、魔王討伐へ向かわせる、と聞いたアリストンは。
試合に勝ち、最速で騎士総長に成り上がり。忠実で強く、立派な騎士を演じた。
王宮に自由に出入りし、召喚時も、その場に同席できるように。
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜
せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。
しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……?
「お前が産んだ、俺の子供だ」
いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!?
クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに?
一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士
※一応オメガバース設定をお借りしています
【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
転生?憑依? 中身おっさんの俺は異世界で無双しない。ただし予想の斜め上は行く!
くすのき
BL
最初に謝っておきます!
漬物業界の方、マジすまぬ。
&本編完結、番外編も!
この話は――三十路の男が、ある日突然、ラシェル・フォン・セウグとして異世界におりたち、ひょんな事から助けた8歳の双子と婚約して、ゴ◯チュウもどきから授かった力で回復薬(漬物味)を作って、なんか頑張るコメディーBLです!
嘘つき王と影の騎士
篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」
国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。
酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。
そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。
代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。
死を待つためだけに辿り着いた冬の山。
絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。
守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。
無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。
なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。
これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。
【完結】名前のない皇后 −記憶を失ったSubオメガはもう一度愛を知る−
社菘
BL
息子を産んで3年。
瀕死の状態で見つかったエリアスは、それ以前の記憶をすっかり失っていた。
自分の名前も覚えていなかったが唯一所持品のハンカチに刺繍されていた名前を名乗り、森の中にひっそりと存在する地図上から消された村で医師として働く人間と竜の混血種。
ある日、診療所に運ばれてきた重病人との出会いがエリアスの止まっていた時を動かすことになる。
「――お前が俺の元から逃げたからだ、エリアス!」
「本当に、本当になにも覚えていないんだっ!」
「ととさま、かかさまをいじめちゃメッ!」
破滅を歩む純白竜の皇帝《Domアルファ》× 記憶がない混血竜《Subオメガ》
「俺の皇后……」
――前の俺?それとも、今の俺?
俺は一体、何者なのだろうか?
※オメガバース、ドムサブユニバース特殊設定あり(かなり好き勝手に詳細設定をしています)
※本作では第二性→オメガバース、第三性(稀)→ドムサブユニバース、二つをまとめてSubオメガ、などの総称にしています
※作中のセリフで「〈〉」この中のセリフはコマンドになります。読みやすいよう、コマンドは英語表記ではなく、本作では言葉として表記しています
※性的な描写がある話数に*をつけています
✧毎日7時40分+17時40分に更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。