勇者失格⁉ ~異世界で美貌の騎士と魔王討伐に行ったらいつの間にか魔王の伴侶になってました~

篠崎笙

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ゼウクシデモス国王

国王、理由を語る

「ええい、喧しい鳥どもめ」

ゼウクシデモス国王が、指をパチンと鳴らした直後。
景色が一変して。


どこかの部屋に移動していた。
壁の感じからして、同じ城の中だろうとわかる。

あ、天蓋付きベッドがある。
ここ、寝室かな? 客室ではなさそうだけど。

オーケアノス国のお城のより刺繍とか手が込んでて豪華だなあ、とベッドを見てたら。


「ここは私室だ。他意は無い。邪魔をされずに話ができるよう、移動した。……ここへ座りたまえ」
椅子を勧められて。

「テ・コン・レッチェのアスーカルは二つで良いな?」
甘めのミルクティーを出された。

……この流れるようなエスコートと甲斐甲斐しさは、俺の騎士だったアリストンのままなんだけど。


何だろう。
この、ものすごい違和感。

国で一番偉いはずの王様が自ら、俺にお茶を淹れてくれてるからだろうか。
なのに、口調は王様だからかな? この、もやもやした感じは。


*****


「……これからは、何と呼べばいいですか? ゼウクシデモス国王陛下?」

陛下、という言葉に。
向かい側の椅子に座っていたゼウクシデモス国王は、焦ったように腰を浮かせた。

「そなたは臣下ではない。陛下はやめてくれ。敬語もだ。現在の名はアレクシスというが。アリストンも私の幼名であり、偽名ではない」
そっと、俺の手を取った。

「そうなんだ」

ああ、手も大きくなってるんだなあ。
爪は尖っていて、黒くて丈夫そうだ。刺さったら痛そう。

「睦月の好きな名で呼ぶがいい。……いや、敬称でなく、名で呼んで欲しい」
そんな憂い顔するの、ずるいと思う。


竜人は、幼少期……成体になる前は、人間と同じような姿をしていて。魔力も成体の半分程度しかなく、脆弱なので。
成体になるまでは竜人狩りなどに狙われないよう、人に紛れて暮らすほうが安全らしい。

今のアレクシスの姿になる前……幼体の頃は金髪碧眼で、まだ角も羽も生えていなかった。
身体の時間を戻しただけで、アリストンの時の姿は魔法で全くの別人に化けたわけではない、という。


ヤニも言ってたけど。
幼名がアリストンだったのは事実らしいし。
オーケアノス国での騎士総長の地位も、実際に傭兵から実力で成りあがって得たものだし。

全部が全部、嘘ではなかったんだろうけど。

何だろう。
この、やるせない気持ち。


「じゃあ、アレクシス」
つい、視線や声が冷たくなるのは仕方がないと思う。

「話して。イチから。全部」


ゼウクシデモス国王は、俺の前に来て。
騎士のように跪くと。


「……仰せの通り」
と言って。

これまでのことを語った。


*****


ゼウクシデモス国は、千年以上前から竜王アレクシスが統治していた。
アレクシスは、竜人の中でも一番魔力が強く、力も強かったため、”竜王”と呼ばれ。全ての獣人の頂点に立っていた。

力の強い竜人であるアレクシスの治める国は、平和で豊かだった。

しかし、その豊かな国土は、元からあったのではなく。
国民が長い時間をかけて開墾し、努力した上で手に入れたものである。


2,3百年ほど前だろうか。いつの間にか、隣に国が築かれていた。
それがオーケアノス国である。

その国民が、ゼウクシデモス国の肥沃な土地を欲しがり、何かとちょっかいをかけてくるようになった。いちいち追い払ってもきりがない。

そうしている内、国民にも犠牲者が出た。
ゼウクシデモス国の王は魔王と呼ばれるようになり、オーケアノス国では獣人が迫害された。

自国に侵入してくる者は全て処刑することにしたが。
子供には罪はないだろう、と。子供だけは見逃して、追い払っていた。


そして数年前。
オーケアノス国のアダマンティオスが、『魔王討伐』を計画しているらしい、というきな臭い噂を聞きつけたアレクシスは、変身能力のある側近のヤニを影武者に立て、自らオーケアノス国へ調査に出た。

オーケアノス国の王であるアダマンティオスは獣人を嫌っているし、竜人の姿のままでは目立つため。
人間と変わらない幼体に姿を変え、幼名を名乗り、傭兵として潜り込んだ。


幼体で人間に紛れて暮らしていたのはもう千年も前のことで、彼の顔を覚えている者は存在しない。
ゼウクシデモス国の王アレクシスは、いち傭兵アリストンとして、すんなり侵入できた。


そこで、彼らが異世界から”勇者”を召喚し、自分を始末しようと計画していることを知った。
それが、竜人である自分を滅ぼすのに可能な方法であることを。


この国で一番強い騎士を勇者のお付きにし、魔王討伐へ向かわせる、と聞いたアリストンは。
試合に勝ち、最速で騎士総長に成り上がり。忠実で強く、立派な騎士を演じた。


王宮に自由に出入りし、召喚時も、その場に同席できるように。
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