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魔王様のレベル上げ
残虐大公リンゼⅠ
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味見という名のテストの結果。
窓から、がっくりと肩を落として帰る脱落組の姿が見えた。憐れな後姿。
……生前の俺も、打ち切り宣告されたあの日の帰り道、あんな感じだったんだろうな。
悪ィな。
でも、何回かは口にする予定のモンだし、妥協はできねえ。
などとグルメのようなことを言ってみたりなんかしちゃったりして。
†††
ノックの音がした。
「入れ」
『南の公爵家より参上仕りました、リンゼにございます。魔王様御降臨の際、ご挨拶が遅れたこと、甚だ恐縮に存じます』
と、俺の前に来て跪いた大男は。
真っ赤な短めの髪は後ろに撫でつけ、水牛みたいな黒く大きな角が頭の横についてる。
浅黒い肌で金色の目の、角の先が4メートルはあろう扉の上部に引っかかりそうなくらいデカい男だ。入る時ちょっと屈んでたし。
眉毛も太く、男らしく整った顔立ち。おお、モミアゲとアゴヒゲが繋がってる……。手の甲ももっさりだ。アリンコ作れそう。
黒い礼服に包まれて見えないが、全身毛深そう。腹毛凄いだろうな。
残虐大公リンゼ、レベル6666。
公爵クラスはレベル6666までが限界値だそうだ。レベルカンストしてるのかよ。
……しかし残虐とか、穏やかじゃねえ肩書きだなオイ。
一人で一億余名を殺さないと資格を得られない、という魔王よりはマシか。
俺だけど!
確か、大公爵って、王族とかそれに近い立場の公爵だよな? リンゼも過去の魔王の血を引いてるらしい。
魔界は魔王城を中心とした四つの国があり、それを四つの公爵家が統括してる。
リンゼはその四大公の一人、南の大公爵だ。さすがに大公爵なだけあって、迫力がある。感じる魔力も相当強い。それだけ精気も上等だろうけど。
何でそんな身分の魔族が参加してるんだ?
『魔王様の伴侶候補に選ばれ、光栄です』
リンゼはにっかり笑った。
声も渋く、カッコイイけど、笑うと何かカワイイ感じだ。
つーか、魔王の伴侶候補?
……いつの間にそんな話になってんだ!?
†††
聞くところによると。
サンプル提出とか、大々的に選定をやったため。身体の相性が合えばそのまま魔王様の伴侶に選ばれるのでは、という噂が飛び交っていたらしい。
いやいや、それはねーわ。
否定したら、残念そうだった。
『レベル上げですか、成程。しかし私のような無骨者でもお役に立てるのならば、喜んでご協力いたしましょう』
『新たな魔王様に、永久なる忠誠を』
と手を取られ、恭しく手の甲に口付けされた。アゴヒゲくすぐったい。
お見合いじゃないが。せっかく四大公の一人が来てくれてるので、どんな性格なのかは知っておこう、と。少し話をしてみることにした。長い付き合いになりそうだしな。
聞くところによると、南の領地は年中温暖だという。ハワイみたいなイメージか。
配下には、ケルピーとか人魚とかリヴァイアサンとかクラーケンとか、水を好む魔族が多いとか。河童はいないのか河童。ありゃ妖怪か。水虎ならいるって?
人魚かー。
青い空、青い海。白い砂浜。燦々と輝く太陽。上半身もあらわに、波間で戯れる美しき人魚たち……。
そういや、俺、取材以外で滅多に外出とかしなかった。修学旅行は日光、京都、広島。
最近の学生は海外だっけ? 海外とかスキーとかで何を学習するんだよって感じだよな。そうです嫉妬です。
思えば、海とかレジャーに縁のない人生だった。
日がな一日部屋に篭りっきりでPCに向かい、魔王にスカウトされるほど陰惨な話を綴る、という侘しい生活。息抜きはネトゲかネサフ。そのせいで、こんな生っ白い身体に……。
ああ……見てみてえな、人魚。ラブ・サンシャイン。
『人魚ですか。ご覧になりますか? すぐにでもご案内できますよ』
あ、うっかり願望を口に出してたっぽい。
……そういや、一瞬で移動できるんだった。便利だな異世界。
「ああ、見たい。では案内を頼む」
ウキウキしながら手を差し出した。
『御意』
リンゼのでっかい手に掴まって、
いざ行かん、南の領地へ!
窓から、がっくりと肩を落として帰る脱落組の姿が見えた。憐れな後姿。
……生前の俺も、打ち切り宣告されたあの日の帰り道、あんな感じだったんだろうな。
悪ィな。
でも、何回かは口にする予定のモンだし、妥協はできねえ。
などとグルメのようなことを言ってみたりなんかしちゃったりして。
†††
ノックの音がした。
「入れ」
『南の公爵家より参上仕りました、リンゼにございます。魔王様御降臨の際、ご挨拶が遅れたこと、甚だ恐縮に存じます』
と、俺の前に来て跪いた大男は。
真っ赤な短めの髪は後ろに撫でつけ、水牛みたいな黒く大きな角が頭の横についてる。
浅黒い肌で金色の目の、角の先が4メートルはあろう扉の上部に引っかかりそうなくらいデカい男だ。入る時ちょっと屈んでたし。
眉毛も太く、男らしく整った顔立ち。おお、モミアゲとアゴヒゲが繋がってる……。手の甲ももっさりだ。アリンコ作れそう。
黒い礼服に包まれて見えないが、全身毛深そう。腹毛凄いだろうな。
残虐大公リンゼ、レベル6666。
公爵クラスはレベル6666までが限界値だそうだ。レベルカンストしてるのかよ。
……しかし残虐とか、穏やかじゃねえ肩書きだなオイ。
一人で一億余名を殺さないと資格を得られない、という魔王よりはマシか。
俺だけど!
確か、大公爵って、王族とかそれに近い立場の公爵だよな? リンゼも過去の魔王の血を引いてるらしい。
魔界は魔王城を中心とした四つの国があり、それを四つの公爵家が統括してる。
リンゼはその四大公の一人、南の大公爵だ。さすがに大公爵なだけあって、迫力がある。感じる魔力も相当強い。それだけ精気も上等だろうけど。
何でそんな身分の魔族が参加してるんだ?
『魔王様の伴侶候補に選ばれ、光栄です』
リンゼはにっかり笑った。
声も渋く、カッコイイけど、笑うと何かカワイイ感じだ。
つーか、魔王の伴侶候補?
……いつの間にそんな話になってんだ!?
†††
聞くところによると。
サンプル提出とか、大々的に選定をやったため。身体の相性が合えばそのまま魔王様の伴侶に選ばれるのでは、という噂が飛び交っていたらしい。
いやいや、それはねーわ。
否定したら、残念そうだった。
『レベル上げですか、成程。しかし私のような無骨者でもお役に立てるのならば、喜んでご協力いたしましょう』
『新たな魔王様に、永久なる忠誠を』
と手を取られ、恭しく手の甲に口付けされた。アゴヒゲくすぐったい。
お見合いじゃないが。せっかく四大公の一人が来てくれてるので、どんな性格なのかは知っておこう、と。少し話をしてみることにした。長い付き合いになりそうだしな。
聞くところによると、南の領地は年中温暖だという。ハワイみたいなイメージか。
配下には、ケルピーとか人魚とかリヴァイアサンとかクラーケンとか、水を好む魔族が多いとか。河童はいないのか河童。ありゃ妖怪か。水虎ならいるって?
人魚かー。
青い空、青い海。白い砂浜。燦々と輝く太陽。上半身もあらわに、波間で戯れる美しき人魚たち……。
そういや、俺、取材以外で滅多に外出とかしなかった。修学旅行は日光、京都、広島。
最近の学生は海外だっけ? 海外とかスキーとかで何を学習するんだよって感じだよな。そうです嫉妬です。
思えば、海とかレジャーに縁のない人生だった。
日がな一日部屋に篭りっきりでPCに向かい、魔王にスカウトされるほど陰惨な話を綴る、という侘しい生活。息抜きはネトゲかネサフ。そのせいで、こんな生っ白い身体に……。
ああ……見てみてえな、人魚。ラブ・サンシャイン。
『人魚ですか。ご覧になりますか? すぐにでもご案内できますよ』
あ、うっかり願望を口に出してたっぽい。
……そういや、一瞬で移動できるんだった。便利だな異世界。
「ああ、見たい。では案内を頼む」
ウキウキしながら手を差し出した。
『御意』
リンゼのでっかい手に掴まって、
いざ行かん、南の領地へ!
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