童貞が尊ばれる獣人の異世界に召喚されて聖神扱いで神殿に祀られたけど、寝てる間にHなイタズラをされて困ってます。

篠崎笙

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ヴァルラム

聖神と懇談す

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”神の飲み物”は、よほど口に合ったようで。
聖神は、名残惜しそうにチャーシカの底を見ている。

飲むたければいくらでも与えてやりたいところだが。
残念ながら、あれは稀少なもので、そうそう出せるものではないのだ。


この聖神は、遠慮深い性質なのだろう。

”神の飲み物”が稀少なものと気付いたか、二杯目を要求してこなかった。
あれほど名残惜しそうであるのに。

……まだチャーシカの底を見ている。


「ふ、愛らしいな」
思わず、口をついて出ていた。

「獣王よ、おかしな気を起こすのはおやめ下さいね。聖神ですよ?」
イリヤに釘を刺されたが。

に触れてみたい、という気持ちは治まらなかった。


*****


「突然召喚されて、さぞ混乱されていることと存じますが。お名前を伺っても?」

普段、苦虫を噛み潰したような顔しか見せないユリアーンが。
見た事のないような生き生きとした顔をして、聖神の名を訊いている。

「ああ、まずは私どもから名乗ることにしましょう。私はこの神殿フラームの管理を任されている、司教エピースコプのユリアーンと申します」


ユリアーンは、種族を名乗らなかった。
獅子族リエーフであることも、太陽のようなグリーヴァも自慢だろうに。

目配せで、まだ伏せておきましょう、と伝えられる。

成程。
来たばかりの異世界人に、獣人であることを明かし、種族を名乗っても怯えられるだけ、と考えたようである。

慣れてから、徐々に正体を明かしていく、というわけか。


「ユリアン?」
聖神は、声も愛らしかった。やはり、まだ年若そうである。

「いえ、ユリアーンです」

ユリアーンめ。
発音を直すふりをして、三度も名を呼ばせたぞ。

満足げな顔をしおって。策士め。


「私は呪医コルドゥーンのイリヤです。医術と呪術を専門にしております。体調に異変などを感じましたら、私をお呼びくださいね」
イリヤは柔和に微笑んだ。

こうしていると、肉食獣には見えないのだが。

イリヤ、と。
名を復唱するのは、正確に覚えるためだろう。

一生懸命な様子に、好感を覚える。


次は騎士、レナートだ、と視線で促す。
「私は騎士ルィツァリのレナートと申します。若輩者ですが、よろしくおねがいします」

レナートは恭しく騎士の敬礼をした。

騎士隊長だが、二つ名に騎士を名乗れるのはおさのレナートだけである。名乗りも誇らしげだ。
熊族でまだ若いが、生真面目で勤務態度も良いと訊く。


魔術師ヴォルシェーブニクのパーヴェル。興味があるなら魔法を教えるよ」
パーヴェルも、この愛らしい聖神には興味津々のようだ。

珍しく積極的な様子なのは、庇護欲を刺激されているからだろう。


「そして、私がこの国の獣王カローリである、ヴァルラムだ」

聖神は、興味深そうに私を見た。
その愛らしい瞳に、自慢の毛皮を映したい欲求に駆られるが。

それは、聖神がこの世界に慣れるまでの辛抱である。


……気のせいだろうか?
服の下の肉体を検分されているような視線のように感じるのだが。

見詰められるのは悪くないが。

そろそろ、そのミーリャを知りたい。
役職ザニャーチャでなく、名で呼びたいと思うのは。

ただの好奇心だけではなかろう。


*****


「そなたの名を聞いても?」

聖神は、はっと居住まいを正した。
「あの、僕は、わ、わくいともきです」

「ワ・ワクイトモキ?」
「や、ええと、違くて。ワクイがセイで、名がトモキ、です」

そのように緊張せずともよいのだが。


「セイとは? 異世界にはワクイ、という役職があるのですか?」
イリヤは随分瑣末なことに食いついている。

異世界の名乗り方は、こちらとは違うのだろう。
妥協してやれ。

まだこちらに来たばかりで、緊張しているだろうに。
急かずとも、詳しい話を聞き出す時間は存分にあろう。

魂の美しさからして、神の寵愛を得ていよう。


「……智紀、です」
説明に困ったか、がっくりしたように名乗った。どういう字なのかは、指で宙に描いたのでわかった。

成程、智紀か。良い名だ。


聖神の智紀。
この名は、何千年先もこの国の歴史に残ることであろう。


*****


ユリアーンは、この世界について智紀に説明している。

この世界のボーク女神バギーニャであり、ジェヴストヴェンニツァを好む。
生贄として捧げるのではない。愛でるためだ。

神殿に留まり、ただ居るだけで良い。

千年に一度、荒れ狂う神を鎮めるため。
女を知らぬ清い身で、心も清らかなまま死んだ男の魂を召喚する。

それが”聖神”である。

そして此度、聖神として召喚されたのが智紀なのだと。


自分が死んだことを告げられても、智紀は驚かなかった。
死んだ自覚はあったのだろうか。

まだ若いのに、随分冷静であるように見えるが。


突然、何もせずとも居るだけで良いので神殿に居続けて欲しい、などと望まれても困るであろう。
何かはっきりした指針を与えねば、人は退屈し、倦むものと決まっている。

先代のように神殿を抜け出して、獣人の女に手を出されれば聖神としての資格を失ってしまうのである。

それだけは阻止しなければなるまい。


その辺の女に持っていかれるくらいなら。
私が攫い、私だけのものに。……いや、何を考えているのだ。

不謹慎であろう。


*****


智紀は、浅い川の溝にはまり、溺れ死んだという。
……なるべくなら、したくない死に方の一つであるといえよう。

それでは、さぞ苦しい思いをしたであろう。
かわいそうに。

溺れていた智紀を助ける者は、誰もいなかったというのか。

しかし。
その苦しみの末の死がなければ、ここに召喚されることはなかったのだと思うと、それも複雑である。


「何で、僕なんだろう……」
清らかなのは身体くらいなのに、などと呟いている。

肉体だけ清らかでも、聖神には選ばれぬものだ。
自分に自信がないのか。

現在、この世界で獣王わたしより聖神の発言が尊重されるほどの重要な立場であるが。

智紀は身体が清いだけの自分にそのような大役が務まるのかと、困惑している様子である。
大役に選ばれ、浮かれ上がってもおかしくないというのに。


何と愛らしく、奥ゆかしい性格であろうか。

ああ。
抱き締めて、毛づくろいをしてやりたい。その身を舐めて……。


……くっ、また、獣の本能が出そうになってしまった。
人間は毛づくろいはせぬものだ。

頭を撫でてやりたい、であった。


*****


「失礼ながら。聖神様はおいくつであられるのです?」
イリヤが智紀の年齢を訊ねた。

あまり若ければ、ツガイとするには成人まで待たねばならない。
耳を傾ける。

「あの、43歳……です、」


何だと。
43……!? 43歳だというのか?


13歳、ではなく?
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