7 / 8
2章2 婚約者様
目が覚めると朝になっていた。
ここは…。どうやら殿下の部屋らしい。窓の外を見ると青空が広がっていた。
しかし遠くの方の空は真っ黒だ。たしかあの辺に魔王城があるんだよな…。
するとコンコンコンとドアがノックされる音がする。
「は、はい!」
部屋に入ってきたのは黒いスカートに白いエプロンをつけたメイドさんだった。
「おはようございまぁーす…っ」
そばかすが素敵な彼女は手に紅茶を持っていた。
「あ…あの俺…!」
なんて説明すればいいんだ。
あわてて起き上がると腰がまだ少し痛い。
「王子様が、そろそろ湊様が起きる時間だろうと言っていたのでお茶を持ってきました。どうぞ」
「あ、ありがとうございます…」
ひとまずそれを受け取る。
「アーロン殿下はどこに?」
「お仕事です!でもそろそろ休憩時間かと~」
「そうなんですね。あの…連いや、勇者はどこに?」
確か昨日俺のことを探してくれていたはず。
「勇者様ですか?彼ならもう昨日の夜から魔王退治に出かけましたよ」
「え?!」
「勇者様本当に素敵ですよね。魔力値も国で一番なんだとか。剣術にも優れていて騎士長様べた褒めしてましたよ」
メイドさんは頬を赤く染めながらうっとりとそういった。
まじか…。連もあの訓練をしたのか。あの厳しいおじさんにしごかれた日々を思い出すだけで頭が痛くなる。
すごいなぁ連は。元の世界でもあいつはハイスペ男子だったけど異世界でも大活躍じゃん。
そんなことを考えながら紅茶を飲んでいると、廊下からバタバタと大きな足音がした。誰かがこっちに向かって走ってくる…?
「ちょっとぉお!!」
バンっと勢いよくドアを蹴って開けてきたのは、ピンク色の髪に水色のドレスを着た女性だった。自分と同じ10代後半に見える。
彼女はズカズカと部屋に侵入すると俺の元までやってきて胸ぐらをつかんだ。
「うわっ」
「へぇーあんたがねぇ…ふーん」
「な、なんですかいきなり」
「ふんっ私はミリアム!アーロン殿下の婚約者よ」
「婚約者…?」
「お嬢様…また勝手にお部屋に入って!湊様ごめんなさい」
「ちょっと離しなさいよっ」
そしてメイドさんが彼女を部屋から追い出そうとするとバタバタと暴れまくった。
「いい?私はね!ずーっと前から殿下のことが好きなの!それなのにいきなり現れたあんたに取られたら立場ないわよ。早く城から出ていってくれない?」
「いや実は俺も…」
「反対するなら毒薬飲ませて殺してやるんだからね!!」
「だから…」
「私こう見えてポーション作りの天才なんだからね!あんたなんてすぐ消せるんだから!!」
だから俺も元の世界に帰りたいんですってば!!
全く人の話を聞かない彼女は喚くだけ喚いて部屋から閉め出されてしまった。
「湊様気にしないでくださいね!ではまた何かあればお申し付けください」
そう言ってお嬢様(?)を連れてメイドは部屋を去っていった。
「はぁ…」
よくわからないけど多分、昨日王子が突然婚約宣言したことで俺のことをよく思わない人もいるのだろう。
どうしよう。このまま城にいたら色々厄介な出来事に巻き込まれかねない…。あの自称婚約者の彼女も俺にすごい殺意持ってたし。
「うーん…うーん」
とりあえず王子が帰ってくるまでになんとかしないと。まずは旅に出た連を探す?
勇者の彼なら王子を説得できるかもしれないし。
そんなことを思いながら部屋をぐるぐる歩き回っていると、バリンッッと何かが割れる音がした。
「うわぁぁ!!」
窓が割れたんだ。振り返ると案の定窓ガラスはバラバラに砕けており、そこから男性が一人部屋に入ってきた。
「え…え??え?」
ま、待ってくれ。ここ何階だと思ってるんだ。
男は顔をあげる。彼は俺がよく知る人物だった。
「連…」
そう、さっきから探していた幼馴染の勇者。
「湊…!!!!」
彼はこちらに駆け寄ると俺を強く抱きしめた。
「連無事だったのか!!魔王退治に行ったって言ってたけど」
「うん、さっきようやく倒し終わったところ。ほら」
彼が指差す窓の外に目をやると確かに遠くの黒い雲は、いつのまにか跡形もなく消え去っていた。
「すごい!!流石だ」
「それより早く帰ろう」
「でもどうやって…」
「それは…」
「無駄だ」
そのとき背後からよく通る声がした。振り返るとそこには王子が立っていた。彼はムスッとした表情で腕を組み、ドアに寄りかかっている。
「殿下…いつの間に…」
「ミナトが起きたと聞いたから様子を見に来たのだが…まさかこの部屋の結界を破るとは流石だな勇者」
「魔王は倒しました。はやく僕たちを元の世界に戻してくれませんか?」
幼馴染は俺と殿下の間に立ち、ポケットから魔獣の角のようなものを取り出すと王子の前に放り投げた。
あれってまさか魔王の角…?!ひぇ…。
「勇者のみを元の世界に戻すことはできるが、ミナトを連れて帰ることは許さない」
「なぜ?」
「彼は城に残って私と結婚するからだ」
「それに湊は同意したんですか?」
「れ、連…」
何やら険悪なムードになってきた。バチバチと睨み合いをする二人は今にも殴り合いの喧嘩をしそうで思わず仲裁に入った。
「ミナト、ここに残ってくれるな…?」
殿下は俺の目を見てそう尋ねる。
「…っ俺は…」
怯んじゃいけない。しっかり言わないと。
「俺は、元の世界に…帰ろうと思っています…ほら親も心配するし…それに…」
最後の方は消え入りそうな声になってしまった。だって殿下の表情がいつにもまして恐ろしいから…。
「ほう」
彼は明らかに不満そうな顔でそれだけ言った。
「だそうです。だからはやく…」
「この国でお前たちを元の世界に戻すことができるのは王子である私だけだ。ミナトとは少し話し合う必要がありそうだな」
「ひっ…っ」
これは確実に怒っている。目が完全に据わってるもん…。俺は一歩後ろに下がる。
すると連が俺をかばうように前に出た。
「僕はこの世界で一番強い勇者です。だから」
そして一瞬のうちに王子との距離を詰めると、窓ガラスの破片を彼の喉に突きつけた。
「あなたを脅すこともできます」
「…」
王子はそれでも顔色一つ変えず、連を冷たい目で見つめている。
やばいやばい。このまま喧嘩になったら本当にやばいことになりそうだ。殿下もこう見えてすごい魔法使いなんだ。王子と勇者が争ったら最悪人が死ぬかもしれない。
しばらく睨み合いが続き、先に沈黙を破ったのは勇者の方だった。
「はぁ、まぁいいです。あなたに頼らずとも元の世界に戻れる方法を探します。湊」
「ぅえ?!」
その瞬間、幼馴染は俺を抱き上げると、割れた窓から外に飛び出した。
ここは…。どうやら殿下の部屋らしい。窓の外を見ると青空が広がっていた。
しかし遠くの方の空は真っ黒だ。たしかあの辺に魔王城があるんだよな…。
するとコンコンコンとドアがノックされる音がする。
「は、はい!」
部屋に入ってきたのは黒いスカートに白いエプロンをつけたメイドさんだった。
「おはようございまぁーす…っ」
そばかすが素敵な彼女は手に紅茶を持っていた。
「あ…あの俺…!」
なんて説明すればいいんだ。
あわてて起き上がると腰がまだ少し痛い。
「王子様が、そろそろ湊様が起きる時間だろうと言っていたのでお茶を持ってきました。どうぞ」
「あ、ありがとうございます…」
ひとまずそれを受け取る。
「アーロン殿下はどこに?」
「お仕事です!でもそろそろ休憩時間かと~」
「そうなんですね。あの…連いや、勇者はどこに?」
確か昨日俺のことを探してくれていたはず。
「勇者様ですか?彼ならもう昨日の夜から魔王退治に出かけましたよ」
「え?!」
「勇者様本当に素敵ですよね。魔力値も国で一番なんだとか。剣術にも優れていて騎士長様べた褒めしてましたよ」
メイドさんは頬を赤く染めながらうっとりとそういった。
まじか…。連もあの訓練をしたのか。あの厳しいおじさんにしごかれた日々を思い出すだけで頭が痛くなる。
すごいなぁ連は。元の世界でもあいつはハイスペ男子だったけど異世界でも大活躍じゃん。
そんなことを考えながら紅茶を飲んでいると、廊下からバタバタと大きな足音がした。誰かがこっちに向かって走ってくる…?
「ちょっとぉお!!」
バンっと勢いよくドアを蹴って開けてきたのは、ピンク色の髪に水色のドレスを着た女性だった。自分と同じ10代後半に見える。
彼女はズカズカと部屋に侵入すると俺の元までやってきて胸ぐらをつかんだ。
「うわっ」
「へぇーあんたがねぇ…ふーん」
「な、なんですかいきなり」
「ふんっ私はミリアム!アーロン殿下の婚約者よ」
「婚約者…?」
「お嬢様…また勝手にお部屋に入って!湊様ごめんなさい」
「ちょっと離しなさいよっ」
そしてメイドさんが彼女を部屋から追い出そうとするとバタバタと暴れまくった。
「いい?私はね!ずーっと前から殿下のことが好きなの!それなのにいきなり現れたあんたに取られたら立場ないわよ。早く城から出ていってくれない?」
「いや実は俺も…」
「反対するなら毒薬飲ませて殺してやるんだからね!!」
「だから…」
「私こう見えてポーション作りの天才なんだからね!あんたなんてすぐ消せるんだから!!」
だから俺も元の世界に帰りたいんですってば!!
全く人の話を聞かない彼女は喚くだけ喚いて部屋から閉め出されてしまった。
「湊様気にしないでくださいね!ではまた何かあればお申し付けください」
そう言ってお嬢様(?)を連れてメイドは部屋を去っていった。
「はぁ…」
よくわからないけど多分、昨日王子が突然婚約宣言したことで俺のことをよく思わない人もいるのだろう。
どうしよう。このまま城にいたら色々厄介な出来事に巻き込まれかねない…。あの自称婚約者の彼女も俺にすごい殺意持ってたし。
「うーん…うーん」
とりあえず王子が帰ってくるまでになんとかしないと。まずは旅に出た連を探す?
勇者の彼なら王子を説得できるかもしれないし。
そんなことを思いながら部屋をぐるぐる歩き回っていると、バリンッッと何かが割れる音がした。
「うわぁぁ!!」
窓が割れたんだ。振り返ると案の定窓ガラスはバラバラに砕けており、そこから男性が一人部屋に入ってきた。
「え…え??え?」
ま、待ってくれ。ここ何階だと思ってるんだ。
男は顔をあげる。彼は俺がよく知る人物だった。
「連…」
そう、さっきから探していた幼馴染の勇者。
「湊…!!!!」
彼はこちらに駆け寄ると俺を強く抱きしめた。
「連無事だったのか!!魔王退治に行ったって言ってたけど」
「うん、さっきようやく倒し終わったところ。ほら」
彼が指差す窓の外に目をやると確かに遠くの黒い雲は、いつのまにか跡形もなく消え去っていた。
「すごい!!流石だ」
「それより早く帰ろう」
「でもどうやって…」
「それは…」
「無駄だ」
そのとき背後からよく通る声がした。振り返るとそこには王子が立っていた。彼はムスッとした表情で腕を組み、ドアに寄りかかっている。
「殿下…いつの間に…」
「ミナトが起きたと聞いたから様子を見に来たのだが…まさかこの部屋の結界を破るとは流石だな勇者」
「魔王は倒しました。はやく僕たちを元の世界に戻してくれませんか?」
幼馴染は俺と殿下の間に立ち、ポケットから魔獣の角のようなものを取り出すと王子の前に放り投げた。
あれってまさか魔王の角…?!ひぇ…。
「勇者のみを元の世界に戻すことはできるが、ミナトを連れて帰ることは許さない」
「なぜ?」
「彼は城に残って私と結婚するからだ」
「それに湊は同意したんですか?」
「れ、連…」
何やら険悪なムードになってきた。バチバチと睨み合いをする二人は今にも殴り合いの喧嘩をしそうで思わず仲裁に入った。
「ミナト、ここに残ってくれるな…?」
殿下は俺の目を見てそう尋ねる。
「…っ俺は…」
怯んじゃいけない。しっかり言わないと。
「俺は、元の世界に…帰ろうと思っています…ほら親も心配するし…それに…」
最後の方は消え入りそうな声になってしまった。だって殿下の表情がいつにもまして恐ろしいから…。
「ほう」
彼は明らかに不満そうな顔でそれだけ言った。
「だそうです。だからはやく…」
「この国でお前たちを元の世界に戻すことができるのは王子である私だけだ。ミナトとは少し話し合う必要がありそうだな」
「ひっ…っ」
これは確実に怒っている。目が完全に据わってるもん…。俺は一歩後ろに下がる。
すると連が俺をかばうように前に出た。
「僕はこの世界で一番強い勇者です。だから」
そして一瞬のうちに王子との距離を詰めると、窓ガラスの破片を彼の喉に突きつけた。
「あなたを脅すこともできます」
「…」
王子はそれでも顔色一つ変えず、連を冷たい目で見つめている。
やばいやばい。このまま喧嘩になったら本当にやばいことになりそうだ。殿下もこう見えてすごい魔法使いなんだ。王子と勇者が争ったら最悪人が死ぬかもしれない。
しばらく睨み合いが続き、先に沈黙を破ったのは勇者の方だった。
「はぁ、まぁいいです。あなたに頼らずとも元の世界に戻れる方法を探します。湊」
「ぅえ?!」
その瞬間、幼馴染は俺を抱き上げると、割れた窓から外に飛び出した。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って?
いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。