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3 ロウお坊ちゃん
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スーツの男性は俺を2階廊下の突き当りの部屋へと案内した。
そして俺を一瞥するとドアを2回ノックする。
コンコンッ。
「はいれ」
すると中から若い男性の声が聞こえた。
ドアを開けた先には制服姿の少年が立っていた。
身長は俺よりも少し低い。髪は黒髪で所々はねている。
キリッとつり上がった眉にパッチリした蜂蜜色の瞳、ムスッとした表情はすこしやんちゃそうだ。
長いまつげが特徴的でイケメンというより美男子という表現が似合う、そんな男の子だった。
18歳って言ってたから俺より1個しか変わらないはずだけど年齢よりもすこし幼く見えた。
彼の着ている制服には見覚えがあった。あれはスカイ学園の制服だ。さすが王都。ここに住んでいる学生はほとんどあの学園の生徒らしい。
妹もルークもこのお坊ちゃんも同じ学園に通ってるってすごいな。
俺は彼をまじまじと見つめた。
すると彼は俺をキッと睨んだ。
「お前誰?」
「ロウお坊ちゃまこちらは人間のノイス様でございます。昨日取り寄せた血液の提供者様です」
「ノイスです。よろしくおねがいします」
ペコリとお辞儀をすると彼は値踏みするような視線を俺に投げかけた。
「へぇこんな薄汚いやつが…」
そしてぼそっと呟く。なんだこいつ。確かに金はないけど最低限の身だしなみには気を使っているつもりだ。
俺は心のなかで悪態をつきつつもそれが悟られないようニコリと作り笑いをした。
「では、ノイス様あとはよろしくお願いします」
執事のおじさんは俺に目配せすると部屋から出ていった。
その瞬間足元にナイフが飛んできた。
「うわっ!!」
ザクッ。
ナイフは俺の足の少し前、カーペットにぐさりと刺さった。
危うく怪我するところだった。
俺は部屋の主に目をやる。ナイフを投げたのは他でもない彼だった。
「おい人間。そんなところに突っ立ってないでさっさと血をよこせ」
ロウと呼ばれたこの家の主はソファの上で足を組みふんぞり返っている。
長いまつげで女の子のように綺麗な容姿とは裏腹に、性格はかなり難がありそうだ。
俺は足元のナイフを引き抜くと彼のもとへと一歩ずつ歩いた。こんな危険なもの刺しておくわけにはいかない。それを机の上に置くと彼の隣の席へ座る。そしてシャツのボタンに指をかけた。
「うわっな、なんで脱ぐんだ」
俺が上裸になると彼はひどく動揺した。だって血でシャツ汚れるじゃん。家には強力な洗剤なんてないから汚れるとかなり困る。
「どうぞ」
つい無愛想になってしまった。もっと愛想よくしなければ。でも初対面でナイフ投げてくる時点でもう仲良くできる気がしないんだよな…。
俺が首を差し出すと彼はごくりと喉を鳴らした。
そしてゆっくりと近づき首筋に歯をたてた。
「…っ」
俺はぎゅっと目をつむる。
あれ?いつもならここで痛みが来るはずなのに。
牙が突き刺さる感覚がしない。
見てみると彼は噛み付いたまま固まっていた。
なんかこれだとハグしてるみたいだ。
「どうしたん…うわっ」
そのままガブガブと何度も強く噛みつく。
「い、痛い痛いっ」
しかし血は出なかった。ただ甘噛されて歯型がついただけ。
彼は口を離すと不満げに眉をしかめた。
「血が出ないっ」
そしてふいっとそっぽを向く。
そういえばこいつ吸血したことなかったんだっけ。やり方がわからないのかもしれない。
「もしかしたら噛む力が弱いのかもしれま…」
俺がアドバイスをしようとしたところ彼は机の上のナイフを手に取って押し付けてきた。
「え?」
「これで首を切れ」
「いやいや」
怖すぎる。そんなこと絶対できない。
「できないなら用済みだ出ていけ!」
彼はドアの方を指差すとそう怒鳴った。
なんて自分勝手な。
自分がうまく吸血できないのにこっちにキレられても困る。
…仕方ないなぁ。俺は手首にナイフの先を押し当てた。
つぷっと皮膚が裂けて赤い血がゆっくりと流れる。やっぱり痛い。
腕を差し出すと彼は興味津々な目でこちらを見た。やっぱり血が飲みたかったようだ。
そのまま腕を取るとカプリと噛み付いた。
彼はペロペロと滴る血をなめ、傷口に吸い付く。時々牙を傷口に挿し込むもんだから痛くてとっさに腕を引こうとした。
しかし彼はなかなか離してくれない。
「き、牙押し込むのやめてください…っいたっ」
「うるさい。…たくさん出てきた」
吹きでる血をうっとりと見つめて彼は喉をゴクリとならした。
そして嬉しそうに目を細め腕にかぶりつく。
「美味しいですか…?」
おそるおそる尋ねると
「悪くない」
そう口の周りを赤くしながら言った。
ヴァンパイアの唾液には回復作用がある。
やがて腕の傷はきれいに塞がった。
彼はそれが不満だったようで上目遣いにこちらを見上げた。
「もっとくれ」
そしてまた首筋に噛み付いた。かぷかぷ何度も甘噛みをしてくるから少しくすぐったい。
「くすぐったいです。やめてっ」
俺が体をくねらせると何笑ってるんだと、なお強く噛み付いた。
でもこんなに噛み付いてるのになんで血が出ないんだろ。
俺は一旦彼から体を引き剥がすと口の中を見せてもらうことにした。
「ちょっとあーってしてみてください」
「何だいきなり」
悪態をつきつつも渋々大きく口を開けてくれる。
あーなるほど。原因がわかった。まだ牙が成長しきっていないんだ。人間で言う犬歯の部分がヴァンパイアは普通鋭く尖っている。でも彼の牙はまだ先が丸かった。
ルークの牙と比べるとまだ成長途中なのかもしれない。個人差はあるもののヴァンパイアは二十歳で成人するからあと数年で多分問題解決すると思うけど。
でもどうしようか。このままじゃ吸血はできないな。うーんと俺は考え込む。
「どうしたんだ」
「多分ですけど牙がまだ成長途中なんですよ。明日いいもの持ってくるので待っててください」
「いいもの?」
「ええ」
そういえば街で売ってた気がする。すごく便利なものが。
「ふーんわかった。なら明日また来い。俺はそろそろ夕食だ」
そして俺を一瞥するとドアを2回ノックする。
コンコンッ。
「はいれ」
すると中から若い男性の声が聞こえた。
ドアを開けた先には制服姿の少年が立っていた。
身長は俺よりも少し低い。髪は黒髪で所々はねている。
キリッとつり上がった眉にパッチリした蜂蜜色の瞳、ムスッとした表情はすこしやんちゃそうだ。
長いまつげが特徴的でイケメンというより美男子という表現が似合う、そんな男の子だった。
18歳って言ってたから俺より1個しか変わらないはずだけど年齢よりもすこし幼く見えた。
彼の着ている制服には見覚えがあった。あれはスカイ学園の制服だ。さすが王都。ここに住んでいる学生はほとんどあの学園の生徒らしい。
妹もルークもこのお坊ちゃんも同じ学園に通ってるってすごいな。
俺は彼をまじまじと見つめた。
すると彼は俺をキッと睨んだ。
「お前誰?」
「ロウお坊ちゃまこちらは人間のノイス様でございます。昨日取り寄せた血液の提供者様です」
「ノイスです。よろしくおねがいします」
ペコリとお辞儀をすると彼は値踏みするような視線を俺に投げかけた。
「へぇこんな薄汚いやつが…」
そしてぼそっと呟く。なんだこいつ。確かに金はないけど最低限の身だしなみには気を使っているつもりだ。
俺は心のなかで悪態をつきつつもそれが悟られないようニコリと作り笑いをした。
「では、ノイス様あとはよろしくお願いします」
執事のおじさんは俺に目配せすると部屋から出ていった。
その瞬間足元にナイフが飛んできた。
「うわっ!!」
ザクッ。
ナイフは俺の足の少し前、カーペットにぐさりと刺さった。
危うく怪我するところだった。
俺は部屋の主に目をやる。ナイフを投げたのは他でもない彼だった。
「おい人間。そんなところに突っ立ってないでさっさと血をよこせ」
ロウと呼ばれたこの家の主はソファの上で足を組みふんぞり返っている。
長いまつげで女の子のように綺麗な容姿とは裏腹に、性格はかなり難がありそうだ。
俺は足元のナイフを引き抜くと彼のもとへと一歩ずつ歩いた。こんな危険なもの刺しておくわけにはいかない。それを机の上に置くと彼の隣の席へ座る。そしてシャツのボタンに指をかけた。
「うわっな、なんで脱ぐんだ」
俺が上裸になると彼はひどく動揺した。だって血でシャツ汚れるじゃん。家には強力な洗剤なんてないから汚れるとかなり困る。
「どうぞ」
つい無愛想になってしまった。もっと愛想よくしなければ。でも初対面でナイフ投げてくる時点でもう仲良くできる気がしないんだよな…。
俺が首を差し出すと彼はごくりと喉を鳴らした。
そしてゆっくりと近づき首筋に歯をたてた。
「…っ」
俺はぎゅっと目をつむる。
あれ?いつもならここで痛みが来るはずなのに。
牙が突き刺さる感覚がしない。
見てみると彼は噛み付いたまま固まっていた。
なんかこれだとハグしてるみたいだ。
「どうしたん…うわっ」
そのままガブガブと何度も強く噛みつく。
「い、痛い痛いっ」
しかし血は出なかった。ただ甘噛されて歯型がついただけ。
彼は口を離すと不満げに眉をしかめた。
「血が出ないっ」
そしてふいっとそっぽを向く。
そういえばこいつ吸血したことなかったんだっけ。やり方がわからないのかもしれない。
「もしかしたら噛む力が弱いのかもしれま…」
俺がアドバイスをしようとしたところ彼は机の上のナイフを手に取って押し付けてきた。
「え?」
「これで首を切れ」
「いやいや」
怖すぎる。そんなこと絶対できない。
「できないなら用済みだ出ていけ!」
彼はドアの方を指差すとそう怒鳴った。
なんて自分勝手な。
自分がうまく吸血できないのにこっちにキレられても困る。
…仕方ないなぁ。俺は手首にナイフの先を押し当てた。
つぷっと皮膚が裂けて赤い血がゆっくりと流れる。やっぱり痛い。
腕を差し出すと彼は興味津々な目でこちらを見た。やっぱり血が飲みたかったようだ。
そのまま腕を取るとカプリと噛み付いた。
彼はペロペロと滴る血をなめ、傷口に吸い付く。時々牙を傷口に挿し込むもんだから痛くてとっさに腕を引こうとした。
しかし彼はなかなか離してくれない。
「き、牙押し込むのやめてください…っいたっ」
「うるさい。…たくさん出てきた」
吹きでる血をうっとりと見つめて彼は喉をゴクリとならした。
そして嬉しそうに目を細め腕にかぶりつく。
「美味しいですか…?」
おそるおそる尋ねると
「悪くない」
そう口の周りを赤くしながら言った。
ヴァンパイアの唾液には回復作用がある。
やがて腕の傷はきれいに塞がった。
彼はそれが不満だったようで上目遣いにこちらを見上げた。
「もっとくれ」
そしてまた首筋に噛み付いた。かぷかぷ何度も甘噛みをしてくるから少しくすぐったい。
「くすぐったいです。やめてっ」
俺が体をくねらせると何笑ってるんだと、なお強く噛み付いた。
でもこんなに噛み付いてるのになんで血が出ないんだろ。
俺は一旦彼から体を引き剥がすと口の中を見せてもらうことにした。
「ちょっとあーってしてみてください」
「何だいきなり」
悪態をつきつつも渋々大きく口を開けてくれる。
あーなるほど。原因がわかった。まだ牙が成長しきっていないんだ。人間で言う犬歯の部分がヴァンパイアは普通鋭く尖っている。でも彼の牙はまだ先が丸かった。
ルークの牙と比べるとまだ成長途中なのかもしれない。個人差はあるもののヴァンパイアは二十歳で成人するからあと数年で多分問題解決すると思うけど。
でもどうしようか。このままじゃ吸血はできないな。うーんと俺は考え込む。
「どうしたんだ」
「多分ですけど牙がまだ成長途中なんですよ。明日いいもの持ってくるので待っててください」
「いいもの?」
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