オーセンスハート

大吟醸

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はじめまして 後編

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ザッシュが青年の体を支えながら、カンナギが素早く革袋から薬草を取り出した。
ニルは慌てて水を浸した布を絞り、青年の額に当てる。

「熱がある……!でも、まだ息はしてるよ!」

ミリノは青年の手首に指を当て、脈を確認しながら眉を寄せた。

「体力が限界まで来てる。このままじゃ……」

カンナギは薬草を砕き、水に溶かして青年の唇に当てた。

「飲め。これで少しは楽になる」

青年の喉がかすかに動き、苦しげに咳き込みながらも薬を飲み込んだ。
しばらくして、彼の呼吸が少し落ち着いた。

「……ありがとう」

青年の声はかすれていたが、確かに意識は戻っている。

「なぁ、おっちゃん、無理はせんでええ。けど、流星王は本当にこの森にいるんやな?」

問いかけると、男はうっすらと目を開け、かすかにうなずいた。

「……ああ……森の、もっと……奥……厳重な封印……きっと、近づくことさえ……」

その言葉に、ミリノの顔が強張る。

「封印……?」

「……森の奥……ほこらが……古くて、誰も近づかなかった……でも彼は……」

男の声は再び弱っていく。

「このままじゃ動かせない。安静にさせないと……ボクたち、どうする?」

誰も即答はできなかった。
窓の外では、湖に光が踊っている。
 今、無理に森の奥へ進めば、何が待っているか分からない。

「ナギ……」

ミリノが慎重に問いかける。

カンナギは静かに首を振った。

 「このまま放ってはおけない。だが、悠長にしてもいられないのも事実だ。
……ニルとミリノ。ここに残ってくれ。ザッシュと俺で偵察してくる」

「僕も行く!」

とニルが叫んだが、カンナギが強い声で遮る。

「だめだ、傷病人を一人にはできない。頼む、こいつを任せる」

ニルは悔しそうに唇を噛んだが、やがて頷いた。

ザッシュが大剣を背負い直し、小声でカンナギに呟く。

「おっさん、本当に大丈夫か?」

「怖いか?」

「怖いいうことはない。けどな、こうも静かやと空気が重すぎる」

カンナギはわずかに笑い、扉を後ろ手で開け放った。

「行ってくる。何かがあれば大声で叫んでくれ」

そう言い残し、カンナギとザッシュは森のさらに奥へと歩みを進める。

残された三人の中で、ミリノは青年の手をぎゅっと握りしめていた。

(私は……必ず、あの人を見つける)

揺れる湖面の先――
この先に【流星王】が本当にいるのか。
森の奥は、なおも深く、二人の運命の行方は静かに彼らを待っていた。
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