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第4話 やはり波北 綾乃は普通じゃないみたいです
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やはり普通の奴ではなかったか波北 綾乃。
まさか高層マンションに住んでいるお嬢様とはな。こんな所で同級生と合致するなんて夢にも思わなかった。
まだ陽があるのでベランダ――いや、屋根がないからバルコニーか――。
とにかく最上階に相応しい広さのバルコニーで洗濯物を外干しさせてもらっているのだが、俺という男の存在がいるのにも関わらず遠慮なく下着上下セットを干させるというプレイに出ていて、本人はここから見えるリビングのソファーに座り優雅に俺がさっき用意してあげた紅茶を飲みながら雑誌を見ていた。
「紅茶飲みたい」という彼女の願望なので、清掃がメインの仕事だが、家主様が飲みたいと仰るのであればサービス位してやるさ。
こんな立派な家だから紅茶の作り方も難しいとか? だから波北は作り方が分からず頼ってきたのかも、と思ったがこの家にあるのは安いスーパーで売ってる三角パックの物であった。
これだったら自分で作れるのでは? 何て思ったが、雇っている奴は顎で利用するのがセオリーか。
そして風呂上がりの優雅なティータイムと共に俺への焦らしプレイという訳ですかい?
この握り締めたB75のタグが着いている水色のブラジャーを振り回して、頭に被った後に食べないとも限らないんだぜ? 波北さんよぉ?
――いや! 絶対にそんな事しないけどね!
しかし、彼女の脱衣所の発言から今日来る人が違う――それも俺と言う認識があったのなら風呂の時間を清掃時間外に避けて欲しいものだ。それに下着も分けた方が良いのでは?
まぁ別に見られても良いという精神だったから騒がないし、通報もしないのであろう。
こちらとしてはバッチリ同級生の発育状態が見れて美味しい思いしかしてないから良いんですけどね!
でも同級生にブラジャーを干させて恥ずかしくないのかね? アナタのバストが丸分かりですよ? 貧乳ってバレましたよ?
しかし、彼女は普通ではないから何も思わないのであろうな。
こんなテンションで同級生の下着を干している俺も客観的に見たら普通の奴とは程遠い変態だがね――。
――洗濯物を終えてリビングへ戻り、次は晩御飯の用意か、と考えると何にしようか迷う。
金持ちの家の人ってなに食うんだ?
寿司、ステーキ、寿司、ステーキ?
流石に考えが安直か……。
何が良いか悩んでいると、そういえば都合の良い事に家主様がいるのでリクエストを聞けるではないか。それが1番簡単である。
「波北? 少し良いか?」
ソファーの後ろから先程裸を見た事もあり、意識した声が出てしまう。
しかし、呼びかけても彼女は雑誌に目を通したままこちらを見てこなかった。
「なに?」
「晩御飯。何か食べたい物はあるか?」
「なんでも良い」
「なんでも?」
尋ねるとコクリと小さく頷くだけで会話が終了してしまった。
あー……。1番困る解答「なんでも良い」
お前に任せると言って提案したら文句を言う奴もいるので、俺はこの答えがめちゃくちゃ嫌いだ。
くっ……。妹となら――。
『今日は俺の手作り晩御飯DAYだ! 何食べたい?』
『高級お寿司!』
『よっしゃ! 出前じゃーい! ――って! おーい! 手作りさせろよー』
『あははー! じゃあ兄さん特製ハンバーグが良い!』
『あいよー! 少々お待ち!』
『わーい!』
なんて兄妹の仲睦まじい会話が広げられるのだが、やはり会話がない奴は苦手である。
文句を言っても仕方ない。
家主様がシェフのお任せディナーと申しているのであればそれに答えるのが従業員としての務め。
代理の清掃員だからそこまで意識高くなくても良いと思うけど。
リビングから隔たりのない馬鹿でかいカウンターキッチンへ向かう。
まるで高級料理屋のキッチンに立ったみたいな気分である。ここなら頭にコック帽を被っても違和感はなさそうだ。
くだらない事を考えながら、一体この家は何人家族なのだろう? と疑問を抱く位にこれまた馬鹿でかい冷蔵庫を開ける。
そこで俺は目を疑ったね。
これほど馬鹿でかい冷蔵庫なのに食材が何もない。
肉も魚も野菜も全部だ。全部。
見た事ないメーカーの野菜ジュースなら沢山あるけどな。
「お待たせしました。本日のメニューは【知らんメーカーの野菜ジュース】でございます」なんて波北に出したら、流石の無表情も怒の表情に変わるんじゃないか?
冗談はさておき、これは今から買い物に行っていたら晩御飯の時間が遅くなってしまう。
それならば――。
再度、波北の所へ話をしに行った。
「波北。冷蔵庫に食材ないから、今日は出前で許してくれないか?」
出前は良いよね。何でもあるし、家まで届けてくれるし、楽過ぎる。
値段が少し跳ね上がるが、これほどの金持ちなら痛くも痒くもないだろう。
先程までノールックだった波北が振り返ってくる。
その表情は相変わらず無表情だった。
「ダメ」
「え? なんで?」
「出前は嫌」
「俺の作るご飯より美味しいと思うけど?」
「それでもダメ。作って」
「あ、ああ……。でも、今から買い物行って晩御飯の用意するとなると時間かかるぞ?」
「構わない」
それだけ言って雑誌に視線を戻す。
時間はかかっても良いから手作り料理ね。
俺は出前にしてくれたらサッサと帰れたからそれで良かったのだがね。
「それじゃあ、買い物行ってくるよ」
そう言うと彼女は雑誌を閉じで、ソファーの前に置いてあるセンターテーブルの上に雑誌を置いてソファーから立ち上がる。
「私も行く」
「風呂入ったのに?」
「関係ない。欲しい物がある」
「教えてくれたら買って来てあげるけど?」
「いい。自分で買う」
「さ、さいですか……」
全く読めない彼女の心境に戸惑うが、一緒に行くと言っているのだから断る権利はこちらにはないだろう。
♦︎
家を出て、1Fのロビーからオートロックの扉を抜けて外へ出る。
「近くにショッピングモールあるよな。それってどっち?」
最上階から見えた景色にショッピングモールがあったが、実際に地に足を着いて見ると、どっち方面にあるのか分からなくなる。
俺の問いに、向かって左側を指差す波北。
その方角に向かって歩こうとするが、波北はキョロキョロと無表情で何かを探している。
「どうかした?」
「歩き?」
「歩き……だろ? ショッピングモールなんて徒歩数分じゃないの? 歩いて行かないのか?」
もしかしたらお嬢様的には、どの距離でもリムジンなのかも知れないな。
いや、それだと逆に遠回りにならない?
時間よりも体力って訳か? 流石お嬢様。しかし、普通自動車免許を持っていないので自動車の運転は俺にはできない。
普通自動二輪の免許なら持ってるけど。
「そう……」
先程と変わらない無機質な声だが、何処か寂しさが混じった様な気がした。
良くわからないが、怒っている訳ではなさそうなので波北が指差した方角に進むと、彼女は俺の左側斜め後ろを付いてくる。
「そういえば、波北は何人家族?」
家族構成によって食材の量が変わるので何人家族かだけは把握しておかねばならない。
「2人……。父と私」
あの馬鹿広い家に2人か。
部屋なんて余りに余ってるんじゃないだろうか?
まぁ聞きたい事は聞けたので別に良いんだけど、これで会話するのが終了するのは悲しいものがある。
「2人か。ちなみに俺は――」
「知っている」
「え?」
「アナタの家族構成。知ってる」
「あ……。そうですか……」
母さんは何時から清掃の仕事をしているか知らないが、波北と接触している事だろう。
雑談でもした時に家族の話になった時に母さんが教えたのだろう。
「羨ましい……」
「羨ましい?」
おうむ返しで尋ねるとコクリとだけ頷いてそれ以上は何も言って来なかった。
本当に分からない美少女である。
そんな途切れ途切れの続かない会話をしながら、あっという間にショッピングモールに到着したのであった。
まさか高層マンションに住んでいるお嬢様とはな。こんな所で同級生と合致するなんて夢にも思わなかった。
まだ陽があるのでベランダ――いや、屋根がないからバルコニーか――。
とにかく最上階に相応しい広さのバルコニーで洗濯物を外干しさせてもらっているのだが、俺という男の存在がいるのにも関わらず遠慮なく下着上下セットを干させるというプレイに出ていて、本人はここから見えるリビングのソファーに座り優雅に俺がさっき用意してあげた紅茶を飲みながら雑誌を見ていた。
「紅茶飲みたい」という彼女の願望なので、清掃がメインの仕事だが、家主様が飲みたいと仰るのであればサービス位してやるさ。
こんな立派な家だから紅茶の作り方も難しいとか? だから波北は作り方が分からず頼ってきたのかも、と思ったがこの家にあるのは安いスーパーで売ってる三角パックの物であった。
これだったら自分で作れるのでは? 何て思ったが、雇っている奴は顎で利用するのがセオリーか。
そして風呂上がりの優雅なティータイムと共に俺への焦らしプレイという訳ですかい?
この握り締めたB75のタグが着いている水色のブラジャーを振り回して、頭に被った後に食べないとも限らないんだぜ? 波北さんよぉ?
――いや! 絶対にそんな事しないけどね!
しかし、彼女の脱衣所の発言から今日来る人が違う――それも俺と言う認識があったのなら風呂の時間を清掃時間外に避けて欲しいものだ。それに下着も分けた方が良いのでは?
まぁ別に見られても良いという精神だったから騒がないし、通報もしないのであろう。
こちらとしてはバッチリ同級生の発育状態が見れて美味しい思いしかしてないから良いんですけどね!
でも同級生にブラジャーを干させて恥ずかしくないのかね? アナタのバストが丸分かりですよ? 貧乳ってバレましたよ?
しかし、彼女は普通ではないから何も思わないのであろうな。
こんなテンションで同級生の下着を干している俺も客観的に見たら普通の奴とは程遠い変態だがね――。
――洗濯物を終えてリビングへ戻り、次は晩御飯の用意か、と考えると何にしようか迷う。
金持ちの家の人ってなに食うんだ?
寿司、ステーキ、寿司、ステーキ?
流石に考えが安直か……。
何が良いか悩んでいると、そういえば都合の良い事に家主様がいるのでリクエストを聞けるではないか。それが1番簡単である。
「波北? 少し良いか?」
ソファーの後ろから先程裸を見た事もあり、意識した声が出てしまう。
しかし、呼びかけても彼女は雑誌に目を通したままこちらを見てこなかった。
「なに?」
「晩御飯。何か食べたい物はあるか?」
「なんでも良い」
「なんでも?」
尋ねるとコクリと小さく頷くだけで会話が終了してしまった。
あー……。1番困る解答「なんでも良い」
お前に任せると言って提案したら文句を言う奴もいるので、俺はこの答えがめちゃくちゃ嫌いだ。
くっ……。妹となら――。
『今日は俺の手作り晩御飯DAYだ! 何食べたい?』
『高級お寿司!』
『よっしゃ! 出前じゃーい! ――って! おーい! 手作りさせろよー』
『あははー! じゃあ兄さん特製ハンバーグが良い!』
『あいよー! 少々お待ち!』
『わーい!』
なんて兄妹の仲睦まじい会話が広げられるのだが、やはり会話がない奴は苦手である。
文句を言っても仕方ない。
家主様がシェフのお任せディナーと申しているのであればそれに答えるのが従業員としての務め。
代理の清掃員だからそこまで意識高くなくても良いと思うけど。
リビングから隔たりのない馬鹿でかいカウンターキッチンへ向かう。
まるで高級料理屋のキッチンに立ったみたいな気分である。ここなら頭にコック帽を被っても違和感はなさそうだ。
くだらない事を考えながら、一体この家は何人家族なのだろう? と疑問を抱く位にこれまた馬鹿でかい冷蔵庫を開ける。
そこで俺は目を疑ったね。
これほど馬鹿でかい冷蔵庫なのに食材が何もない。
肉も魚も野菜も全部だ。全部。
見た事ないメーカーの野菜ジュースなら沢山あるけどな。
「お待たせしました。本日のメニューは【知らんメーカーの野菜ジュース】でございます」なんて波北に出したら、流石の無表情も怒の表情に変わるんじゃないか?
冗談はさておき、これは今から買い物に行っていたら晩御飯の時間が遅くなってしまう。
それならば――。
再度、波北の所へ話をしに行った。
「波北。冷蔵庫に食材ないから、今日は出前で許してくれないか?」
出前は良いよね。何でもあるし、家まで届けてくれるし、楽過ぎる。
値段が少し跳ね上がるが、これほどの金持ちなら痛くも痒くもないだろう。
先程までノールックだった波北が振り返ってくる。
その表情は相変わらず無表情だった。
「ダメ」
「え? なんで?」
「出前は嫌」
「俺の作るご飯より美味しいと思うけど?」
「それでもダメ。作って」
「あ、ああ……。でも、今から買い物行って晩御飯の用意するとなると時間かかるぞ?」
「構わない」
それだけ言って雑誌に視線を戻す。
時間はかかっても良いから手作り料理ね。
俺は出前にしてくれたらサッサと帰れたからそれで良かったのだがね。
「それじゃあ、買い物行ってくるよ」
そう言うと彼女は雑誌を閉じで、ソファーの前に置いてあるセンターテーブルの上に雑誌を置いてソファーから立ち上がる。
「私も行く」
「風呂入ったのに?」
「関係ない。欲しい物がある」
「教えてくれたら買って来てあげるけど?」
「いい。自分で買う」
「さ、さいですか……」
全く読めない彼女の心境に戸惑うが、一緒に行くと言っているのだから断る権利はこちらにはないだろう。
♦︎
家を出て、1Fのロビーからオートロックの扉を抜けて外へ出る。
「近くにショッピングモールあるよな。それってどっち?」
最上階から見えた景色にショッピングモールがあったが、実際に地に足を着いて見ると、どっち方面にあるのか分からなくなる。
俺の問いに、向かって左側を指差す波北。
その方角に向かって歩こうとするが、波北はキョロキョロと無表情で何かを探している。
「どうかした?」
「歩き?」
「歩き……だろ? ショッピングモールなんて徒歩数分じゃないの? 歩いて行かないのか?」
もしかしたらお嬢様的には、どの距離でもリムジンなのかも知れないな。
いや、それだと逆に遠回りにならない?
時間よりも体力って訳か? 流石お嬢様。しかし、普通自動車免許を持っていないので自動車の運転は俺にはできない。
普通自動二輪の免許なら持ってるけど。
「そう……」
先程と変わらない無機質な声だが、何処か寂しさが混じった様な気がした。
良くわからないが、怒っている訳ではなさそうなので波北が指差した方角に進むと、彼女は俺の左側斜め後ろを付いてくる。
「そういえば、波北は何人家族?」
家族構成によって食材の量が変わるので何人家族かだけは把握しておかねばならない。
「2人……。父と私」
あの馬鹿広い家に2人か。
部屋なんて余りに余ってるんじゃないだろうか?
まぁ聞きたい事は聞けたので別に良いんだけど、これで会話するのが終了するのは悲しいものがある。
「2人か。ちなみに俺は――」
「知っている」
「え?」
「アナタの家族構成。知ってる」
「あ……。そうですか……」
母さんは何時から清掃の仕事をしているか知らないが、波北と接触している事だろう。
雑談でもした時に家族の話になった時に母さんが教えたのだろう。
「羨ましい……」
「羨ましい?」
おうむ返しで尋ねるとコクリとだけ頷いてそれ以上は何も言って来なかった。
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