クーデレお嬢様のお世話をすることになりました

すずと

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第18話 料理に必殺と付けると違った意味になりますよね

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「恵ちゃんの――」
「―― 3分クッキング!」
「イェーイ!」

 パチパチパチパチ

 キッチンに親子3人が立ち、母と妹が変なテンションで何処かの料理番組みたいなノリで言ってのけた。

「本日のゲストは半ドンで部活が終わっての腹ペコ美少女紗雪ちゃんをお迎えしての料理となります。紗雪ちゃん。よろしくお願いします」

 母さんは一体誰に向かって説明しているのだろう。

「よろしくお願いします。さて先生? 今日の料理は何ですか?」

 エプロン姿が様になっているサユキが母さんを先生呼びして質問する。
 ただ、気合いを入れてエプロンをしているが、この子は一切料理は出来ない。

「今日の料理は――カレーです!」
「おお!」
「――待て待て待て待て」

 母さんの本日の昼飯のメニューに俺が制止をかけた。

「どうしました? アシスタントくん」
「大好物のカレーと聞いてテンションが上がりましたか? 兄さん?」

 カレーは上位に食い込む俺の好物料理だ。

「いや、カレーはぶっちゃけテンションあがるよ? 上がるけど3分じゃ無理だろ」
「アシスタントくん。あの料理番組も3分と言っておきながら全然3分じゃないから大丈夫よ」

 母さんはそう言って無意味にグッジョブとしてくる。

「そうだよ。細かい事気にしてたらダメだよ」

 サユキも流れでグッジョブしてくる。親子だなー。

「いやいやいや。カレーとか切る、焼く、煮込むで普通に作ったら1時間はかかるだろ」
「3分も1時間も同じよ」
「全然ちげーわ! カップ麺20個出来るわ」

 俺のツッコミに対して、肩に手を置いて諭す様に言ってくる。

「そう熱くならないでアシスタントくん。その熱は料理に持っていきましょう」

「私ちょっと上手い事言った」みたいな顔をしてるが全然上手くねーよ。

「――つか、俺は料理のレパートリーを増やしたいって言ったの。カレーなら普通に作れるっての」

 そう言うと人差し指を立てて横に振り「ちっちっちっ」と母さんが否定してくる。

「カレーを侮るなかれ。これ程簡単かつ奥が深い料理はないよ?」

 確かにカレーはアレンジが効く料理だ。
 そのアレンジは十人十色。人それぞれ違うアレンジとなるので、同じカレールーでも全く違った味になる追求の深い料理の1つである。

「それに今回のカレーはただのカレーじゃないのよ」
「ただの――」
「――カレーじゃない?」

 兄妹仲良く台詞を半分こして母さんに問う。

「『必殺カレー』よ!」

 ドヤ顔で放った台詞は二児の母とは思えない程に子供じみたネーミングセンスのカレーであった。

 必ず殺すと書いて必殺。
 カレーに毒でも盛るのかよ……。

「これで綾乃ちゃんもイチコロね」

 そう言って母さんがウィンクしてくる。その閉じた方の目から星が見えた気がした。

「必ず殺してどうするんだが……」
「それくらい美味しいって意味よ。比喩表現」
「それくらい言われんでも分かるわ」

 そんな事を言い合っているとサユキが首を傾げた。

「え? 誰? 綾乃ちゃんって」

 あ……。ここに恋バナ好きな奴がもう1人いるのを忘れていた。
 あかん……。恋バナ好きが2人以上いると強力なモンスターへとジョブチェンジするからその前に止めなくては――。

 しかし、そんなサユキの質問に母さんがニヤつきながら答える。

「涼太郎の好きな女の子よ」
「えー! 兄さんの! どんな人? どんな人ー? 教えてー!」

 恋バナスイッチがオンとなったサユキ。
 間に合わなかった……。

「違うっての」
「またまたぁ。教えてよー」

 恋バナ女子は少しでも異性との関係が漏れると、自分が納得するまで逃がさない。本人が否定しても全くの無意味なのである。
 なんという恐ろしい人種だ。

「それはもう綺麗な女の子で。お人形さんみたいでね」

 俺が答えない変わりに母さんがサユキに言ってのける。
 余計な事を――。

「えー! 気になる。気になる! 兄さん写メないの?」
「ねぇよ」
「私はあるわよ」

 母さんがポケットからスマホを取り出す。

「何で持ってんだよ!」
「そりゃ雇い主の娘さんだからね」

 スマホを操作しながら答える。

「理由になってねーよ」
「見せて見せて」

 写メを持っていた理由などどうでも良い。
 対象の顔が気になるのは恋バナの常識。
 サユキは母さんのスマホを覗き込む様に見る。

「ちょっと待ってねー」
「おいおいおい。カレー作るんじゃなかったのかよ」

 精一杯の抵抗。

「勿論作るわよ」
「それよりも綾乃って人の方が先だよ」

 虚しくも散る。

「――っと。あったあった。この子よ」
「うわぁ。綺麗な顔。え? うわぁ。綺麗な顔」

 なぜ2回言った。

「でしょ?」
「これは兄さん惚れますわー」
「だから――」

 俺が否定しようとするが、恋バナ女性陣のパワーには勝てず、もはや俺の事などフル無視で好き勝手言っているのであった。
 なので俺は俺で勝手にカレーを調理していくのであった。



♦︎



 「――うん。普通に美味しいね」

 あの後、恋バナに花を咲かせてた2人がカレー作りに戻ったのは俺が野菜等の下ごしらえを終えた後であった。それまで俺はある事ない事――いや、ない事ない事言われながら野菜を切っていた。

 しかし『必殺カレー』なんて言うからいつもと作り方が違うのかな? と思っていたけど、特にいつも通りの調理方法でカレーを作った。

 先ずは腹ペコ美少女のサユキから特性南方家のカレーを食べての感想が出た。
 それに続いて俺も食べる。

「普通に美味しいな」

 特に何か変わったという事はない。普通に家のカレーだ。

 最後に母さんが口に運ぶ。

「うんうん。いつも通りね」

 そう言って満足げに頷く。

「母さん。どこが『必殺』なんだよ?」

 そう言うと母さんはドヤ顔で言ってくる。

「いつからお前は『必殺』カレーを教わると錯覚していた?」
「は?」
「もう既に取得していたのだよ。お前は。『必殺』をな――」
「何言っちゃってんの? 頭逝っちゃってんの?」

 そう言うと溜息をつかれて「分かんないかなぁ」と言いたげな表情で俺を見てくる。

「だから、これが『必殺カレー』よ」
「いつものカレーが必殺カレー?」
「そうよ。昔から2人は食べ慣れているから分からないでしょうけど。初めて食べる人には衝撃みたいよ?」
「へぇ。これがね……」

 スプーンですくったカレーを見る。
 母さんの言う通り昔からの味なので、美味しいのは美味しいが、大袈裟に美味しいとは感じない。

「これを綾乃ちゃんに作ってあげたらもう綾乃ちゃんは涼太郎なしじゃ生きられないわね」
「そうなると綾乃姉さんか……」
「サユキ。話が飛躍し過ぎてるぞ。会ったこともないくせに」
「でも、あんな綺麗な人と付き合ったら離さないでしょ。いや離さないよ。離すなんてバカだよ。ーーこの果報者! ふゅーふゅー」

 サユキが一昔前のからかい方をしてくる。
 もう面倒くさいし放っておこう。

「あ、お母さん。おかわりー」
「はいはい」

 そして食べるのが早い。部活終わりだからめっちゃ腹減ってるんだな。

「――でも、そうか……。いつも通りで良いなら練習しなくて良いし、次回にでも作ってあげられるな」
「そういえば私、秀くんの家での仕事の時にカレーは作った事なかったわね」
「そうなの?」
「肉じゃがならあるけど。カレーは無かったわね」
「何で?」
「基本的にメニューは私の独断で決めるのだけど……。無意識に避けてたのかもしれないわね。秀くん、霧乃ちゃんのカレーが好きだったから」
「そっ……か。なら……作らない方が良いのかな?」
「そんな事はないわよ。別に私も意識的に作らなかった訳じゃないんだし。涼太郎のカレーが好評だったら次回から私も作る様にしようかな。だからそんなに気を使う必要もないわよ。作って綾乃ちゃんのハートを射止めて来なさい」
「頑張れ! 兄さん!」

 コイツらはすぐにそっち方向へ話を持っていきたがるな。

 でも、まぁ既に自分が必殺カレーを取得していたとはな。
 次にアヤノが飯を作れと言ってきた時のメニューが決まったな。
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