終生飼育は原則ですから

保護編

5

　レイサスが持っていた剣は、真剣でした。やっぱりか。本物か。
　日本刀の模造刀を持ったことがあるので重さは想像がつく。けれど真剣はやっぱり刃がすごいな。

　頼んで振ってみてもらった。夜のうちの庭は暗くて、歩いて庭の中央に行くのも危険なほどだから隣からは見えない。
　もちろん暗いから細かい動きはわからないけれど、シルエットだけで使い慣れた人の動作だとわかる。鞘への戻し方といい、扱いに慣れている。本物だ。

　調べてみると、日本刀の展示をしているギャラリーがあったので、連れて行ってみることにしました。

　どう、どう？　鉄でできた美術品、日本刀だよ。
　日本以外の国では柄や鞘を飾ることで価値を上げたけれど、日本刀は刃を磨き上げることで、刀自体を美術品にまで高めたんだよ。
　たいへんやかましいナショナリズムを垂れ流してしまったけれど、日本刀を見つめるレイサスの目が輝いていたからそこまで間違いでもなかったと思いたい。

　一般販売している日本刀もあったので、ギャラリーの人にお願いしてみると、別室で真剣を持たせてくれた。
　これはイケメンが効果を発揮したに違いない。イケメンというかレイサスの育ちのよさか。おかしなことをするはずがないと確信させるオーラがある。

　やっぱり鞘から抜く姿も様になる。片刃の刀に慣れていないからスムーズではないけれど、持ち方が素人とは違うね。
　ギャラリーの人も惚れ惚れと見つめていました。ちなみにおそらく五十代、男性です。
「素晴らしい刀ですね」
　レイサスが言うと、ギャラリーの人がフェンシングなどされているんですか、どちらで修練をなどと聞いてきたので、丁重にお礼を言って出てきました。

　日本刀はわずかに反った形を生かした「居抜き」って剣術もあるんだよ。「抜刀術」とも言うんだけど、まあ詳しいことはマンガがあるからあれを読んで。

　え、空手？　空手はその名前の通り武器を持たないから、私は刀を使ったことはないよ。
　空手はねぇ。残念ながらマンガは読んでいるけど持ってはいないんだよね。柔道はある。総合格闘技・・・あれとあれを読めば空手もなんとなくわかるかな。
　相手が理解しているか気にもせずにマンガの題名を並べ続けるなんて、私は間違いなくオタクだ。

　レイサスにはまず日常系のマンガを薦めていたので、格闘技系のは未読だったようです。
　忙しいよ。どれも長編だから、読み終わるのに時間がかかる。どこまでが現実でどこからがフィクションか、教えるためにも私も再読しておいた方がいいかもしれない。

　BLについては隔離していません。そういう文化なのだと伝えました。フィクションだと。できればまだ読まない方がいいと。従ってくれているようです。

　動物園と水族館も見せたい。どちらも見たことがないだろうから。
　動物園は、できれば旭山。水族館は小樽に行きたい。あのやる気のないペンギンショーを私も見たい。

　けれどもう冬だから旭山は無理だな。車では行けないや。道路の凍結が怖い。
　水族館のペンギンショーも冬はやっていないんじゃないかな。旭山のペンギンの散歩は冬期間限定だけどね。

　来年だね。来年暖かくなってから。
　これから年末にかけて仕事も殺人的に忙しいし、雪が降るとうちの除雪も大変だから、外出は無理かな。