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保護編
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近頃の自分には困っている。持て余していると言うべきか。
ともやに触れたくて仕方がない。
ともやは私を嫌ってはいない。それは確かだと思う。しかし側に寄ると離れる。
大家であり保護者であり、今の私の世界の全てであるともやを不快にさせたくない。
しかし触りたい。
私は女に不自由した事がなかった。
だが彼女達は私の地位と容姿に惹かれて寄ってきただけだった。
今の私に地位はなく生かせる能力もなく、容姿は評価されないのかもしれない。少なくともともやの好みではないらしい。
苦労しておけば、こんな時どういう行動をするべきかわかっただろうか。
いや行動するべきではない事はわかる。しかし触りたい。
あの夜の闇のような髪に触れたい。小さい、けれど重そうな頭を支える華奢な首に触れたい。薄い肩をつかんでみたい。手首は、私が握ったらどこまで指が回るのだろうか。足首は。
危険だ。彼女に知られれば同情されてしまうだろう。ヒトの本能だからと哀れむに違いない。
そうではない。
例えば、道で擦れ違う女性には興味が湧かない。近付きたいとも思わない。外ではともやと手を繋いでいるが、その手をもっと引き寄せたい。腰に手を回したい。おそらく私の両手でつかめる腰。
イユリスと日本の貞操意識は似ている。
男女の交際は推奨されてはいないが、十五歳程度になると交際相手がいても当然とされる。
結婚前の性交渉は珍しくないが、公にするべきではない。
結婚前に二、三人の異性と交際することが一般的だ。
結婚前の妊娠は恥とされる。それは主に女性側が非を負わされる。
結婚は二十歳を超えた頃が一番多い。二十五歳までに結婚をしていないと、周囲から遅いと思われる。
離婚は貴族では珍しい。平民ではおそらく夫婦の五分の一程度が離婚する。
子は貴族では二人程。平民では三、四人程度か。田舎に行くほど子沢山になるようだ。
ともやから違いも教えてもらった。
日本での結婚は、三十歳前だと若いと思われるほど遅くなった。
子は一人が多い。教育費が高い為だ。
離婚は三十%を超えた。ちなみに二十%を超えると「みんな~している」認識されるらしい。ともやが何かで読んだと言っていた。だからこの日本では「みんな離婚する」と認識している人が多い。
ともやは結婚は出来ないししないと言っている。
「自分が一番大事だから人に合わせられないし、そんな人間と一生いたいと思う人間はいない。私はひとりが好きなんだ。だからひとりで住む家を建てたの」
ともやは二十九歳だ。私より年上だとは思わなかった。
いやあの気遣い、判断能力、知識量から年下だとも思わないが、外見がそうは見えなかった。二十五歳の私よりそんなに上だとは。
二十九歳で最高学府も卒業し仕事をしている。交際していた男性も数人はいるだろう。現在いないのは聞いたが、過去は聞けなかった。
どういう男性を好きになって、どうして別れたのだろうか。どういう所が好きでどういう所が嫌いなのか聞けばよかった。
日本は戸籍制度が大変堅固だ。
個人番号ができたし、政府の管理下にない人間はまともな職業に就けない。
「先進国以外の国であれば現地の人と一緒に普通に暮らせたんじゃないかな。日本に来ちゃったのは不運だったね」
ともやはそう言うが、私は大変幸運だったと思う。日本でなければともやがいなかった。だが彼女にとってはとんだお荷物だ。
どうすれば職に就けるだろうか。
いつ保護者と被保護者という関係から脱せるだろうか。
しかしこのままの関係であれば、いつまでも一緒にいられる。彼女は切り捨てる事はできないだろう。
私は、自分がこんなに卑怯な人間だとは思わなかった。
ともやに触れたくて仕方がない。
ともやは私を嫌ってはいない。それは確かだと思う。しかし側に寄ると離れる。
大家であり保護者であり、今の私の世界の全てであるともやを不快にさせたくない。
しかし触りたい。
私は女に不自由した事がなかった。
だが彼女達は私の地位と容姿に惹かれて寄ってきただけだった。
今の私に地位はなく生かせる能力もなく、容姿は評価されないのかもしれない。少なくともともやの好みではないらしい。
苦労しておけば、こんな時どういう行動をするべきかわかっただろうか。
いや行動するべきではない事はわかる。しかし触りたい。
あの夜の闇のような髪に触れたい。小さい、けれど重そうな頭を支える華奢な首に触れたい。薄い肩をつかんでみたい。手首は、私が握ったらどこまで指が回るのだろうか。足首は。
危険だ。彼女に知られれば同情されてしまうだろう。ヒトの本能だからと哀れむに違いない。
そうではない。
例えば、道で擦れ違う女性には興味が湧かない。近付きたいとも思わない。外ではともやと手を繋いでいるが、その手をもっと引き寄せたい。腰に手を回したい。おそらく私の両手でつかめる腰。
イユリスと日本の貞操意識は似ている。
男女の交際は推奨されてはいないが、十五歳程度になると交際相手がいても当然とされる。
結婚前の性交渉は珍しくないが、公にするべきではない。
結婚前に二、三人の異性と交際することが一般的だ。
結婚前の妊娠は恥とされる。それは主に女性側が非を負わされる。
結婚は二十歳を超えた頃が一番多い。二十五歳までに結婚をしていないと、周囲から遅いと思われる。
離婚は貴族では珍しい。平民ではおそらく夫婦の五分の一程度が離婚する。
子は貴族では二人程。平民では三、四人程度か。田舎に行くほど子沢山になるようだ。
ともやから違いも教えてもらった。
日本での結婚は、三十歳前だと若いと思われるほど遅くなった。
子は一人が多い。教育費が高い為だ。
離婚は三十%を超えた。ちなみに二十%を超えると「みんな~している」認識されるらしい。ともやが何かで読んだと言っていた。だからこの日本では「みんな離婚する」と認識している人が多い。
ともやは結婚は出来ないししないと言っている。
「自分が一番大事だから人に合わせられないし、そんな人間と一生いたいと思う人間はいない。私はひとりが好きなんだ。だからひとりで住む家を建てたの」
ともやは二十九歳だ。私より年上だとは思わなかった。
いやあの気遣い、判断能力、知識量から年下だとも思わないが、外見がそうは見えなかった。二十五歳の私よりそんなに上だとは。
二十九歳で最高学府も卒業し仕事をしている。交際していた男性も数人はいるだろう。現在いないのは聞いたが、過去は聞けなかった。
どういう男性を好きになって、どうして別れたのだろうか。どういう所が好きでどういう所が嫌いなのか聞けばよかった。
日本は戸籍制度が大変堅固だ。
個人番号ができたし、政府の管理下にない人間はまともな職業に就けない。
「先進国以外の国であれば現地の人と一緒に普通に暮らせたんじゃないかな。日本に来ちゃったのは不運だったね」
ともやはそう言うが、私は大変幸運だったと思う。日本でなければともやがいなかった。だが彼女にとってはとんだお荷物だ。
どうすれば職に就けるだろうか。
いつ保護者と被保護者という関係から脱せるだろうか。
しかしこのままの関係であれば、いつまでも一緒にいられる。彼女は切り捨てる事はできないだろう。
私は、自分がこんなに卑怯な人間だとは思わなかった。
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