終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 337年

337年5月8

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 十日経った。限界だ。
 ともやを迎えに行く。
 マクシミリアンは止めたし、シルヴィオは呆れていたが、そうすると思ったとも言った。

 余計な動きはしない方がいい。ソサイゾの動きはないが、ともやが私の弱みだと知られればともやが危険だ。
 リーラントには何度か行っている。長く長子を不在にさせた詫びと、馬を探しにリーラントに行く事は不自然ではない。

 エランと共に出発した。その日は大丈夫だったが、翌日は小雨が降っている。
 リーラントに着くと午後四時だった。天気が悪いせいで薄暗い。

 邸は明るい。馬の音が聞こえたのかメイドと子爵が出てきた。
「殿下、いらっしゃるとは」
 子爵が夫人を呼んでいる。メイドはタオルを持ってきた。
「殿下、ようこそ」

 子爵夫妻が並んで招き入れる。その奥にはおそらく次子と、ともやが出てきた。ともやはスカート姿だった。娘らしい服装だ。
 抱き締めたいが見てもいたい。何より私は今濡れている。ともやを濡らすわけにはいかない。
「これはマイアさんが昔着ていた服で、私に下さると」
「よく似合っている。とても似合っている」
 会いたかった。ともやにもそう思ってもらいたいが、思っていないな。

 外出用の笑顔でともやが言った。
「お二人とも濡れているから着替えた方がよろしいのではありませんか?」
 敬語か。確かに事情を知らない人間がいる。
「オーサーの言う通りですわ。こちらへどうぞ。ユリナ、旦那様の服を殿下にお持ちして」

 着替えて居間へ行くと、ともやもすでに着替えていた。いつものシルヴィオの服でもなく、ともやが作業用にと作っていた服だ。
 これから夕方の動物の世話へ行くと言う。世話? そんなことまでしていたのか? なぜ子爵は止めないのか。

「行ってきます」
 嬉しげに出て行った。私も馬を見に行く。
 厩舎に行ったが、ともやは牛舎だという。仕方がないから自分の馬の手入れをする。

 夕食の時も話せなかった。
 日本が懐かしい。二人きりで今日あった事を話した。
 明日帰れるか聞くと、ともやははいと答えるが、夫人やエランの弟たちがまだ早いのではと言い出した。

「まだ下手だけど乗れてはいるよね?」
 ともやが弟の一人を見て言った。
「上手くなったよ」
「じゃあ戻ります。お邪魔する期間はできるだけ短くしたいと思っていたし、ちょうどいいので」

 邪魔だなんてと夫人は言うが、不承不承、皆納得した。ともやが戻る。
 明日早く出るからと、ともやはすぐに部屋を出たのでやはり話せなかったが、これからは一緒にいられる。
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