終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 338年

338年3月1

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 ああああとうとうか。
 行きたくない。本当に行きたくない。
 今までのパーティは壁に立ってればよかったけど、今回は令嬢たちに喧嘩を売りに行かなくちゃいけない。
 私が。田舎のごく庶民が。三十のアラサーが。ピカピカでツヤツヤの令嬢たちにどうして対抗できるのか。仲を見せつけるって何? そんな仲ないよ。

 しかし必要なことはやらないといけない。私は被雇用者だからね。雇用者には絶対服従ではないけれど、理由のある業務命令には従わないと。
 ああああ行きたくない。

 もう王宮に移っているけど、最初に用意された部屋が、レイサスの隣っていうのはまだしも、ドアでつながっているのには驚いた。
 令嬢避けの一環としてはわかるけど、私が無理なんで。自分の部屋が必要です。ここはレイサスの部屋の一つだ。

 荷物も運んであるからとか言われたけど、荷物なら自分で移すから。
 エランたちの隣に、独立した部屋を手に入れました。
 まったく、誰が言い出したんだ。

 その部屋にはクリスが来てくれていて、私を飾り立てるという難行に取り組んでいます。
 化粧についてはやろうと思ったらできる。使うものも同じようなもんだし。

 髪はレイサスが解いていた方がいいと言うので、アレンジする手間が省けて助かった。
 しかし、解いた髪をさらさらでツヤツヤにするために、しばらくは乾くまで寝ないとかブラッシングを丁寧にとか気を配らなくてはいけなかった。そっちのほうが手間がかかるわ。

 ドレスは、右腕が左よりまだ細いので、二の腕がドレープで隠れるデザインにした。
 しかし、二の腕を隠す代わりに襟開きが広い。というかオフショルダー。
 春とは言ってもこの季節、まだ寒いんだけど。

 個別にはおかしいところはないと思う。しかし個別は全体に非ず。ほら、臓器一つ一つ組み合わせても人間は作れないって言うでしょ、なんかで読んだんだけど。
 組み合わせても美女にはなれん。

 クリスにチェックしてもらい、大丈夫だと言われても、大丈夫な気がしない。
 クリスは美しいな。クリスにやってもらえばいいんじゃない?
 だめか。侯爵令嬢だと信憑性がありすぎるか。いや、クリスと婚約すればいいんじゃね?
 なんでしないんだろ。国外を考えてるのかな。

 クリスには今回の意図を説明し、誤解をしないでいただきたいとお願いした。
 自分たちが居たたまれないくらいやれと言われたが、それは私が居たたまれないだろう。
 ドアがノックされた。
 ああああ行きたくない。
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