終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 338年

338年6月1-1

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 六月はオーサーの誕生月で、だが誰もいつなのか聞き出せなかった。
 聞かれるほどに面倒になるらしく、誕生日の話題だけで不機嫌になった。
 六月は毎日菓子を届けると、一週間で、太るからやめろと怒られた。嫌がらせだと思ったらしい。

 本を贈るには俺の知識がないし、服もアクセサリーも喜ばない。唯一それなりに喜んだのが菓子だったが、毎日は多すぎた。
 「ファリオン王子からの差し入れ」と分けるには数が少なくてどうしようもないと言っていた。だから食べはしたらしい。それはよかった。

 最も上手かったのは兄上だった。
 オーサーは何も欲しがらないが、自分の猫に関心を向けられ、褒められると喜ぶ。
 兄上は猫達と遊び懐かれることで、オーサーを喜ばせていた。
 そして夏祭りに一緒に行くことを約束させた。どうやったのか。
 俺も誘おうと思っていたが、おそらくイーディも一緒だと言えば来ると思ったが、先を越された。

 オーサーは自分の事を語りたがらないが、取材は喜んで受けた。
 新聞を作るという男性がオーサーに面会を求め、話を聞かせてほしいと言った。
 オーサーは事業計画と取材目的を提出させて、許可した。
 好きな食べ物や男性のタイプを聞くところを見ると、あまり硬派な新聞ではないらしい。オーサーは機嫌良く答えていた。

 好きなタイプは価値観が合う人で、何か熱中する事がある人。価値観はともかく熱中とは何か聞かれていた。
 何かを深く追求している人は、それがどんな事であれ、話を聞くと楽しいからだろうだ。
 オーサーは確かにそうだ。変人の域に達していても、どんな分野の研究者の話も楽しそうだった。タイプなのか。

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