終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年5月9-1

　ともやは誰にも出来ない事をやった。
　準備に時間をずいぶんかけた。あそこまで本を読み込む必要はなかった。教授を出し、私が責任を取ると言っても解決は出来ただろう。

　だが受け取る側の心象は変わる。教授の言葉を信用できない者は出るし、私が計画を押し付けていると受け取るだろう。
　ともやがあれほど調べたという目に見える事実、文句をつけられない話の組み立て、自分達で考えさせる余地の与え方、ともやだからできた。

　シルヴィオなら近いことは出来たか。いや反感を買いそうだ。シルヴィオは平民受けがよくない。
　マクシミリアンも出来ない事ではない。だが私と同じだ。押し付けになる。
　クリスティアナは、ずいぶん成長したが、まだあの口論で途方に暮れるだろう。
　コウジュ公主はどうか。おそらくクリスティアナと同じだ。守られている必要がある。

　ともやだけだ。
　褒め、感謝を伝え、労い、愛したい。だが今は一人にするのが、全てを伝える一番いい方法だ。
　せめて隣に、ベッドの端でいいからいたいが、それも目障りだと言うなら仕方がない。

　ともやは緊張が解けた時、疲れが溜まった時に頭痛を起こしやすい。今は正に起こるべき状況だ。
　頭痛になるほど仕事をする必要はない。宮で本を読んでいればいい。そして私を迎えてくれさえすればいい。
　ともやは到底受け入れない。一人で生きていこうとする。だからこういう事もできる。
　私はともやを利用している。だが本当は、私の役に立つ必要はない。