終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年7月1-1

　夏祭りに、学校では屋台を出す。メニューはカレーと汲み出し豆腐といも餅だ。
　完全に生徒を利用するメニューです。スパイスを売って、大豆料理を知ってもらいたいという。

　班は今年は科別にした。来年は横断して分けたい。
　普通科が汲み出し豆腐で、師範科がいも餅で、兵術科がカレー。
　テーブルを出して、そこで食べてもらい、器を回収して洗ってまた出すという作業が必要になる。使い捨ての食器はないから。

　師範科は平民の子が多くて料理経験があるし、兵術科は実習で自分たちの食事は作っているから大丈夫でしょ。普通科の汲み出し豆腐は、にがりとして使う海水の量を間違えなければ混ぜるだけだ。

　豆腐は、大豆を茹でて潰して絞って豆乳を作るのではなく、最初に粉に引いたのを茹でることにした。
　貴族のご子息に熱々の大豆を潰させるのは不安だ。
　吹き零れやすいのでそれはそれで難しいけど、火が通れば漉すだけでいい。
　味については、複雑な味になるってことで。私は細かい味についてはよくわからない。だからまあいいでしょ。

　いも餅のたれはみたらしにしたかったけれど諦めざるを得なかった。私のあの醤油を、人様には出せない。
　豆腐にも、やっぱり醤油と思ったけど、汲み出し豆腐に醤油はいらなかった。いい豆腐だと豆の味が濃いから醤油を使うともったいないもんね。せいぜい好みで塩を振るくらいで、そのままでいけると判断した。

　いも餅のたれはどうしても味噌を使いたくて、田楽っぽくしてみた。バターも少し混ぜてコクを出す。
　小分けにした味噌も売ってみる。極少量なら試しに買ってくれる人もいるだろう。

　もちろん実行委員を決めてもらい、その委員と実際に作ってみた。
　その上で、作業分担やタイムテーブルを作って見せてもらう。
　それに従って各科で作って自分たちで食べ、作業と味について改善策を練る。

　やりたくない人間にとっては大変面倒だけど、そういうことがとても勉強になるはず。
　私はやりたくない方の人間で、でも人数が少なくて仕方なかったりくじ運が悪かったりで委員になった。とても面倒でなぜこんなことをやるのか疑問を感じたけど、役には立つよ。

　当日は天気がとても心配だった。私は運の悪い人間で、晴れてほしいときは雨が降る。
　けれど快晴だった。夏祭りは晴れるらしい。晴れの特異日なんだろう。

　広場ではいも餅を売り、市場に近いところで豆腐を売り、学校を開放して学校でカレーを売る。豆腐の横では大豆も売り、カレーは一緒にカレー粉も出す。
　ニコラさんも張り切っている。彼はあんまり張り切ると、大豆愛ゆえにしゃべりすぎるから、ほどほどにしてほしい。

　ニコラさんは実験農場で味噌と醤油を作っている。
　特に醤油は、私の失敗を踏まえて一緒に仕込んでみたけどどうだろう。ニコラさんが楽しみにしているからうまくいってほしい。けど、彼は失敗にも慣れているから、失敗は失敗なりに来年に生かしてくれると思う。