終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年7月1-2

　カレーといも餅は期待通り大好評で、汲み出し豆腐は心配していたより売れた。
　生徒たちも最初は不慣れだけど、だんだんお客の捌きがうまくなっていた。反省点は来年に生かしてもらおう。

　それはいい。それはいいんだが、問題はレイサスだ。
　コウジュ様を案内していろいろ寄ってくればいいのに、私と常に一緒に行動するのはやめてほしい。
　私は作業着を着ているのでどこにも寄れません。残念ですが。

　こういう格好が一番似合うと自分でも思うよ。
　五分袖のシャツにワークパンツっぽいのを作ってはき、フェイスタオルに近い形の長方形の布を頭に巻いた。生徒たちは三角巾で髪をまとめたりかわいらしいけど、私は作業系の格好が板についているんです。杵柄ってもんだと思う。

　豆乳のアクを取ったり、いも餅をこねたり、たれの調合に口を出したり、皿を洗ったり、裏方の作業を手伝ったりしたけど、それをレイサスも手伝ってくれた。王太子が。ファリオンまで手伝ってくれた。
　生徒たちは驚いていた。それはそうでしょう。けれど、あなたたちの将来の王と王族は、生活をきちんと理解している人間なので安心です。

　用意した材料は使い切り、スパイスや味噌も売れたので片づけを手伝っていると、エランに呼ばれた。そういえばレイサスがいなくなった。
　エランの後からひょこひょこ行った自分の馬鹿さに歯噛みする。

　広場に入ったら、私の前に道ができた。なぜ皆さん前を開けるのか。
　壇上にはレイサスがいた。
　これはやばい。
　すぐに引き返そうとしたら、エランが後ろを塞ぎやがった。レイサスには頼りになる友人だよ。
　横から逃げようと思っても、どうしてこういうときは皆さん通してくれないのでしょうか。

　レイサスは壇から飛び降りて私の方にやってきた。運動神経がいい人って危険なことを軽々とやるよね。
　私はこんな格好なので、とても行きたくありません。
「抱き上げて連れて行かれるのとどちらがいい？」
　耳元で囁くのはやめてほしい。本当に顔が近い。

　私はいろいろ計画し、坂道にしてみたり逃げ道を塞いだり、道を整えてやっと人を誘導するのに、レイサスは簡単に人を動かす。うらやましいよ。
　あの壇に登るしかないらしい。
　いつもは急いでいるのとカロリー消費のために大股で早足で歩くことにしているけど、今はできるだけ遅らせたい。
　けどこんな衆目の中でレイサスと歩きたくもないんだ。