290 / 365
被保護編 339年
339年8月3
しおりを挟む
ヘラート村はイユリス国内の話題を攫った。
新聞で取り上げられ、雑誌ではもっと脚色された物語になっている。
イユリスは平和だ。
オーサーの働きもあって、将来に希望を持つ者が多い。
そんな中で純粋に気の毒がれる話は歓迎された。
ある雑誌社では記者が決死の覚悟で現地に侵入したらしい。
毎週現地報告が載り、販売数を伸ばしている。
「安全な場所で泣ける話を読むほど楽しいものはない」とオーサーが言った。
オーサーは時々驚くほど冷たく的確なことを言う。達観していると言うか見放していると言うか。
たぶんオーサーは、自分の事をそういう目で見ている。だからなのだ。
妾はレイサス様よりも、オーサーといられるように努力している。
レイサス様といてもレイサス様はオーサーを見ていて、そして妾は周囲から落胆される。
それは当然ながら、少し辛い。オーサーの代わりにはなれない。
オーサーから学べる所があれば学びたい。
オーサーは誰にでも丁寧で思いやり深いけれど、レイサス様にだけは冷たい。
オーサーは時々失敗はするけれど、そんなときも素直に謝って周りに頼る。しかしレイサス様にはいつでも完璧だ。取り付く島がない。
オーサーはいつでも冷静だが、レイサス様が近寄るだけで慌てる。レイサス様を見ただけで挙動不審になり、気がつけば逃げている。
それはわかる。レイサス様はオーサーを見つけると、触らずにはいられないようだ。
しかし手をつかまれた程度であんなにうろたえなくてもいいと思う。
人前だからなのだろうか。
だが、半年と少しか。人から聞くと、二人が付き合い始めたのが今年に入ってかららしい。
王太子の寵姫としての噂は二年前から聞いていると思うのだが、何があったのか。なぜ何もなかったのか。
半年だからまだ慣れないのだろうか。半年以上経つのにまだ慣れないのか。
オーサーは結婚しなければずっと手を振り払いそうだ。結婚しても振り払うかもしれない。
明日はレイサス様の誕生日で、オーサーと二人で休むと、レイサス様が宣言した。
オーサーは仕事があると反論していたが、レイサス様が押し切った。オーサーが譲るのはレイサス様くらいだ。
オーサーは自分を突き放さず、もっと自分に近付いて考えるべきだ。
そうすれば、レイサス様だけが特別な事がわかる。
オーサーはレイサス様を特別扱いしている。それがどうしてなのか、考えるべきなのだ。
新聞で取り上げられ、雑誌ではもっと脚色された物語になっている。
イユリスは平和だ。
オーサーの働きもあって、将来に希望を持つ者が多い。
そんな中で純粋に気の毒がれる話は歓迎された。
ある雑誌社では記者が決死の覚悟で現地に侵入したらしい。
毎週現地報告が載り、販売数を伸ばしている。
「安全な場所で泣ける話を読むほど楽しいものはない」とオーサーが言った。
オーサーは時々驚くほど冷たく的確なことを言う。達観していると言うか見放していると言うか。
たぶんオーサーは、自分の事をそういう目で見ている。だからなのだ。
妾はレイサス様よりも、オーサーといられるように努力している。
レイサス様といてもレイサス様はオーサーを見ていて、そして妾は周囲から落胆される。
それは当然ながら、少し辛い。オーサーの代わりにはなれない。
オーサーから学べる所があれば学びたい。
オーサーは誰にでも丁寧で思いやり深いけれど、レイサス様にだけは冷たい。
オーサーは時々失敗はするけれど、そんなときも素直に謝って周りに頼る。しかしレイサス様にはいつでも完璧だ。取り付く島がない。
オーサーはいつでも冷静だが、レイサス様が近寄るだけで慌てる。レイサス様を見ただけで挙動不審になり、気がつけば逃げている。
それはわかる。レイサス様はオーサーを見つけると、触らずにはいられないようだ。
しかし手をつかまれた程度であんなにうろたえなくてもいいと思う。
人前だからなのだろうか。
だが、半年と少しか。人から聞くと、二人が付き合い始めたのが今年に入ってかららしい。
王太子の寵姫としての噂は二年前から聞いていると思うのだが、何があったのか。なぜ何もなかったのか。
半年だからまだ慣れないのだろうか。半年以上経つのにまだ慣れないのか。
オーサーは結婚しなければずっと手を振り払いそうだ。結婚しても振り払うかもしれない。
明日はレイサス様の誕生日で、オーサーと二人で休むと、レイサス様が宣言した。
オーサーは仕事があると反論していたが、レイサス様が押し切った。オーサーが譲るのはレイサス様くらいだ。
オーサーは自分を突き放さず、もっと自分に近付いて考えるべきだ。
そうすれば、レイサス様だけが特別な事がわかる。
オーサーはレイサス様を特別扱いしている。それがどうしてなのか、考えるべきなのだ。
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる