終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 339年

339年10月10-4

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 馬鹿じゃない。どこから来たのかわからない平民の女をそんな地位に据えるか? 報酬も破格なのはわかる。街を見てきたから。本当に馬鹿じゃない。
「・・・ありえない。国の金をこんなくだらないことに遣うおつもりですか?」
「くだらなくはない。それほどそなたが必要だという事だ。だが私用を責めるなら、私の財産から支給する」

 馬鹿げている。給与支給者は被監視者? 会社の監査役じゃないだから。
 ソウシュウを見た。目が合う。ソウシュウの目は深い青だ。紺色にも見える。真剣なのはわかるけど、何を考えているんだろう。

「姫さん、馬鹿なことを考えるな」
 レンツォーリも真剣な顔で私を見ていた。
「レンツォーリも考えないように。ここには山ほど護衛がいるでしょう。一人で何とかしようとは考えないように」

 よく考えよう。
 私がイユリスに戻らないことで、ソファリスは何か得をするだろうか。
 発展が遅くなるかもしれない。
 けれど後継者争いは片がついているし、スピードは遅れても発展はするだろう。
 その遅れを生みたいのか?

 だけどこの世界、スピードはそれほど重要じゃない。何かの統一基準を作るにしても、馬での移動だからとにかく時間がかかる。
 スピードよりも量だと思う。物量で圧倒する。商人なら、単一商品を独占できれば価格をある程度決められる。けれどそれは現実には難しい。量じゃなくて早さが今は問題だし。

 私がイユリスでやっていることで、何かソファリスにとって都合の悪いことが?
 品種改良? だけどあれも種の独占はできない。
 教育改革? それはあるかも。だけど私がいなくても同じだと思う。校長はいるし。
 軍と近衛は縮小したいと思っていたし、本当にわからない。なんでだ。
 私は役職についていないから、いついなくなっても特に問題ないんだよね。

 教育の向上、健康の増進、戸籍の管理、情報伝達の加速等、私がやってきたことは軍事力の強化にも繋がる。
 それを警戒しているんだろうか。旗振り役だと思われる私を引き離す?

 イユリス一国だけではソファリスの相手にはならないよ。どんなに発展しても、革命的な兵器を考案しない限り物量で負ける。
 いや、できるんだけど。本当は。私は作れなくても作ってと言えばきっとできてしまう。できる人をレイサスは見つけ出すだろう。それは絶対にするつもりはない。

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