終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 339年

339年11月1

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 あの女が、ソウシュウ陛下まで落とすのか。
 確かにオーサーといるソウシュウ陛下は見たことがない顔を見せていたし、やけに興味を持って、一緒にいることも多いと思ったけど、ここまで強引な手を使うほど欲しかったのか。

 オーサーもソウシュウ陛下を選ぶのか。
 好きで選んだわけじゃないのは丸わかりだけど、ソウシュウ陛下はそれでもいいのか。
 必要性ね。そんなもので王太子を切り捨てていいのか。あんなに愛されていたし、なんだかんだ仲はいいだろ。

 切り捨て方は、相変わらず男前だった。状況判断。損得の比較。安定。あの、後の頼み方は卑怯だ。王太子に同情する。
 あの髪を王太子が気に入っていると聞いたことがある。髪を切り捨ててまでいくのか。王太子が気の毒だ。

 王太子達はあの後すぐに出発させられた。
 荷物も全て用意してあって、皇帝の見送りまで用意されていた。ソウシュウ陛下は怖い。狙われたオーサーが気の毒だ。

 オーサーは皇叔邸に囲われている。寝込んでいるらしい。
 そうだろうな。元々ずいぶん疲れていた。こんなこともあったし、オーサーはそれほど丈夫じゃない。

 形式的にはもう皇叔妃だ。イユリスの王太子から奪い取った。もう誰も奪えない。できるとしたら皇帝か。現実には誰もいない。間違いなくソウシュウ陛下のものだ。

 レイサス王子は結婚しておくべきだった。
 いやそれでもどうだ。同じ結果だったかもしれない。今以上に悪くなってたか。婚約者なら婚約破棄だけど、妃は簒奪だ。

 コウジュは泣いていた。自分でもよくわからないと言っていた。
 レイサス王子と、オーサーのことも尊敬していたから、こんな形でソファリスが引き裂いたことが悲しい。オレも。

 オーサーの気取らない親しさが好きだった。人に会いたくなくてぶつぶつ文句を言ったり、冗談を言ったり、馬に話しかけながら世話をしたり、気を許した動きが好きだった。またそんな風に接してくれるだろうか。

 オーサーがソファリスに残ることはうれしい。望んでいた。
 けれどこれは違う。こんな無理やり強制したら、オーサーが変わってしまう。
 イユリスでは楽しかった。
 もうあんなときは戻らない。
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