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337年4月3

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 風呂上りの、夜着で男を部屋に入れる事には驚いた。どうやら夜着だとは知らないようだ。

 話していくと彼女がとても聡明なことがわかる。
 現状の確認、原因の追究、要因の可能性、将来の展望。レイと恋人ではないのか?
 恋人でないなら面倒が少ない。レイは国内か他国の貴族の娘と結婚する。障害にならないなら、優秀な人材は歓迎する。

 この国の人口、経済について話す。
 質問が鋭い。これは拾い物かもしれない。優秀な人材は貴重だ。

 イユリスは課税を強化する必要がある。課税を逃れている貴族や商人が多い。その中にはソサイゾ一派も含まれている。
 課税を正しく行えれば税収は一.五倍にはなるだろう。

 そういう話をしている時にレイとエラン、マクシミリアン殿が戻ってきた。
 レイが部屋に駆け込んでくる。
 レイのこんな表情を見た事があるだろうか。長い付き合いだが、無い。
 レイが見た事が無い反応をするので、帰ってきたレイは別人ではないかと途中まで疑っていた程だ。

 レイは彼女の両肩をつかみ顔を見つめている。
<体調は? 大丈夫なのか?>
「大丈夫大丈夫、治った」
 彼女はイスの上でなるべく後ろに下がろうとしている。離れたいらしい。恋人ではないのか?
 エラン達を見ると、特にエランは驚いている。そうだろう。

 レイは彼女しか目に入っていない。これからどうするつもりなのか聞くまでも無いが、何とか止めなくては。
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