隣の男の子たちは私を困らせる。

めぇ

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NEXT1.寮生活は私を困らせる)

trouble1.)

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「女子寮に空きがないって本当ですか!?」

季節は梅雨真っ盛りの6月、まさかこんなことになるなんて。

三森歩夢みもりあゆむさん…ね、勝手に男の子って勘違いしてしまったね」

「私、女ですっ!」

三森歩夢みもりあゆむ、正真正銘の女の子。
名前が流行りのジェンダーレスネームってやつでたまに男の子と思われることもあるけど、心も身体も女の子な中学2年生。

「いや~、申し訳ない。上手く情報共有が出来てなかったみたいで男子寮の方は空けてあったんだけど」

頭をポリポリと書きながらちょっと髪の毛の薄いふくよかなおじさん…事務員さんがメガネをかけ直しながら私の名簿を見てる。
そこにはちゃんと写真だって貼ってあるのになんで間違えられたんだろう、しっかり確認しといてよね。

「男子寮には入居できないから代わりにこっちの寮で」

スッと出された地図には女子寮と男子寮、そこから少し離れたところに小さな文字で臨時と書かれていた。

「でもここがね、男子寮ってわけじゃないから。女子も入れるんだよ、あくまで臨時で入居する“臨時寮”だから」

いや、寮付いてないじゃん。地図には臨時しか書いてないじゃん。

「こんな変な…珍しい時期の転校生はこの学園にはあまりないから急遽寮を用意するのは時間がかかってしまってね、用意出来たらすぐ引っ越し出来るようにするから」

「……。」

季節は梅雨真っ盛りの6月、私だってこんなつもりじゃなかった。

お父さんの海外赴任が決まってすぐに旅立つことになった。
お母さんはついていくって言ったけど、私は日本に残りたい!って言ったら…


条件として出されたのが全寮制のこの学校に入ることだった。


好きな漫画の最終回が近いから絶対に読みたくてこっちに残りたいなんて考えるんじゃなかったよ…、海外へ行くよりも大変なことになりそうだもん。

「まぁ、とりあえずね。女子寮に空きが出るまで臨時でここに住んでもらえないかな、これ部屋の鍵ね」

「……はい」

もらった地図を持ってはぁっと息を吐きながら事務室を出ることにした。

これ以上言ってもしょうがないよね、空きがないって言われたらそれ以上どうにもできない…


大人しくここに住むしかないんだ。


誰も住んでない、この寮で1人…


「あ、三森さん!」

「はい」

「今その臨時寮、三森さんの他に3人住んでるから」

「え、そうなんですか!?」

1人じゃないの!?
他にもいるんだ、じゃあいいか!

1人だったら心細いけど、他にも住んでる子いるなら…


「男の子が3人、住んでるから」

「………え?」



えーーーーーーーーーーっ!!!?



「…ここが臨時寮?」

地図で見るよりかなり学園の奥の方にあった。
森に囲われた古びた2階建ての建物で、灰色のコンクリートの壁が傷だらけな上に明かりも少なそうだった。

これ夜はどうなのかなぁ…

ゴクリと息を飲みながら、もらった部屋の鍵に書かれた番号を確認する。

204?
2階ってこと?

グーっと重たいドアを押して恐る恐る寮の中へ入る。
入って左側には自販機、右側には管理室って書いてあるけど小窓から覗いてみても誰もいない…

てゆーか見るからに1階は使われてないっぽいなぁ。
電気は点いてるけどなんか暗いし、本当にここで合ってるのかな不安になって来た…。
えっと、階段はこの奥の右側…

突き当りを右に曲がった時だった。


―ドンッ

「!?」


目の前を伸びて来た腕が視界を邪魔するように壁を勢いよく打ち付けた。コンクリートにぶつかった重い音にビクッと体が震える。

「こんなとこで何してるん?」

え…、なに?

じーっと上から見られ、通せんぼされた腕のせいで階段も登れない。

「あ、もしかしてオレに告白?ごめんな、でも今そーゆうの考えてないねん」

え、なに!?告白!?
誰が誰に!?

てゆーか誰!!?

「あ、あの…」

「あぁ、ええよええよ。女の子からの告白って嬉しいから、その気持ちはよーぉわかってる」

「…今日からここに住むことになったものです」

きっと全然わかってない、だって私もこの状況あんまりわかってない。
壁際に追い詰められて迫られるみたいな状況、わかるわけがないよ。

「あぁ!そーいえばでんちゃん言うてたわ!」

パッと壁から豊を離して、目を大きくした。

でんちゃん?って誰??

「でんちゃんは事務のおじさんな!会うたやろ?ハゲのメガネの…」

あ、さっきの事務員さんか!

五十嵐伝蔵いがらしでんぞう言うねん、でんちゃん」

あぁーそうなんですね…
その情報聞いてもどうしようもないんだけど、もっとここに住むのに有益な情報のが欲しいよ。

「でも、男って言うてたけどなぁでんちゃん」

でんちゃんしっかり情報伝えといてよ!!
全部が全部ぐちゃぐちゃじゃん!

「どう見ても女の子やんなぁ」

「三森歩夢、中学2年生。ちゃんと女子です」

生徒手帳を見せて一応確認してもらう、てゆーか生徒手帳は女子なのになんで男子と間違えたのでんちゃん…!

「歩夢ちゃんな!オレは上川智成かわかみともなり、おんなじ中学2年よろしくな!」

「…よろしくお願いします」

出だしからいきなり不安ではあるけど…、悪い人ではなさそう?

いや、でもさっきの告白がなんちゃらって…
そんなに告白されるのかなそれはすごいなぁ。

「荷物は、ないの?リュックだけって」

「あ、他の荷物は送っちゃってて部屋に置いといてもらうようにお願いしてあるので」

本当に部屋に届けてもらえたのかちょっと心配だけど、送っちゃったからには届いてるよねたぶん。

「そうなんや。ほな案内するわ、ついて来て」

「ありがとうございますっ」

「敬語とかいらんよ、同い年やし。てか今ここに住んでんのみんな同い年やねん」

「そうなんですっ…そうなの!?」

「なー、偶然やけどすごいよな~」

傷だらけではあったけど、掃除はしてるみたいでキレイだった階段を上がっていく。
明かりは少ないけどそうゆうとこはちゃんとしてあるんだなぁって思った。

「やから気ぃ遣わんといてな」

「うん…」

じゃあ私以外男の子が3人、みんな同じ中学2年生ってことか。

「ここすごいで、普通の寮は2人部屋やねんけどここは1人1部屋もらえんねん!」

「そうなんだ」

「でも歩夢ちゃん女の子やからあたりまえに1人部屋やけどな」

「そうだよね」

今のところ女子は私だけ、さすがにそこは1人部屋だろうなぁとは思っていた。
でも知らない人と2人暮らしって心配だったし、そこは本当に気遣わなくていいかも。

「ルールとして他人の部屋への出入りは禁止やから、破ったらでんちゃんに怒られるからな」

「でんちゃんに怒られるんだ」

「ここの寮長やから」

でんちゃん!!
だったら尚のこと把握しといてくれないかな!?

私、女子!!!

「あそこが歩夢ちゃんの部屋やで」

階段を上るとカラフルな4つドアがあった。

204号室、私の部屋は…

「一番奥の左の部屋な、隣の203って書いてある緑がオレの部屋やから」


ここが私の、部屋。

赤色のドアが私の部屋。


古い建物だけど、掃除はされてるしところどころ直されてるとこもあってちゃんとした寮なんだ…


とりあえずはよかった。


「あの、ありがとう上川くんっ」

「智成でええよ」

「智成くんっ」



ここから、私の新しい生活が始まるんだ。



「ねぇ智成くんは…どうしてこの寮に住んでるの?男子寮は部屋空いてるんだよね?」

でんちゃんの言い方だとそんな感じだった。
でも3人もここに住んでる、みんなそれぞれ事情を抱えてたりするのかな。

あ、だったら聞かない方がよかったかも…

「同居人にうるさいって追い出されてん!」

「……え?」

「オレ声でかいやろー?眠られへんって追い出されたん!」

めっちゃケラケラ笑いながら教えてくれた。

へぇ…そんなパターンもあるんだ。

「オレ出身大阪やからなー、しゃーないよなぁー」

「う、うん…」

しゃーないのかなぁ?
そうゆうことはよくわからないけど…

うるさいって追い出された人がいる寮ってどうなの?


大丈夫なのかな、この寮…


「あー!新しい子~?」

甲高い声が廊下に響いた。
声のした方を向くとTシャツぶかぶかのカーディガンを羽織ってミニスカートを履いた…


女の子?


「嬉しい~!仲間が増えるんだ♡」

駆け寄って来るとぎゅっと私の手を両手で握った。

「初めまして~!」

くるっと上げられたまつ毛にぽってりと淡いピンクに染まった唇、肩まで真っ直ぐ伸びた真っ黒な髪がコントラストになるくらい際立つ肌の白さ… 


女の子?いるじゃん!

私よりちょっと背の高い、可愛い女の子いるじゃん!!?


でんちゃん…

私のこともテキトーだったもんね、本当何が正しくて何が間違ってるのかわからない情報ばっかりじゃん。

「ねぇねぇ名前は?何年何組?」

「2年1組三森歩夢です…っ」

「あ、隣のクラスだ♡」

ぎゅぅと握る強さはちょっと強いけど、女の子がいてよかった!

やっぱ男の子の中に女子1人は心細かったの…!

「あゆむんね!咲月さつきって言うの、さっちゃんって呼んでね!仲良くしよ!」

「うん、さっ」

壮太郎そうたろう

私の声を掻き消すようにスッと智成くんが言い放った誰かの名前…


え、誰の名前?


「智成!その名前で呼ばないで、可愛くないから!」


え…?

えぇぇぇぇぇぇっ!!!?


さっちゃんって呼ぼうとしたままフリーズしちゃったから、口が開いたままになっちゃった。

つーんっと顔をそむけ眉をつり上げたさっちゃん…?


「男やで、咲月壮太郎さつきそうたろうれっきとした男やで」


男ぉーーーーーーーーー!!?

かわっ、可愛い…!!!


離された手から、力の強さは感じてたけど可愛い…!

「壮太郎は男子寮が嫌でここに来てんな」

「だって男子ばっかでむさ苦しいんだもーん!」

「そら男子寮やからな!」

「ここ1人部屋だし、1階は空き部屋ばっかだし、まだマシかなって」


………へぇ。

そんなパターンもあるんだね?


なんか想像してた理由は誰も持ち合わせてないみたいなんだけど…

へぇ。

「あ、そうや。1階に洗濯室と食堂があんねんけど、いつもは学校の食堂やからキッチン使うにはでんちゃんの許可がいるでな。夜はでんちゃんが管理室おるから安心やで」

「基本寝てるけどね」

「夜はみんな寝るもんやねん」

聞けば聞くほど不安になる。


本当に大丈夫なのここ、私こんなところに住んでいいの…?


「他わかんないことあったら聞いてね、あゆむん!」


全然大丈夫な気がしなぁーーーーーい!!!
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