君が僕を呼んだから

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2章 修行【魔界】

23話

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「練習メニューはとりあえず置いといて、基礎からいきましょうか。ラディちゃんはいつもどんな戦い方をしてるの?」

コカビエルは、基礎といいながらまず俺について知ることにしたようだ。

「戦い方か、そうだな………一番多いのは剣を魔力で強化だな。まあ、他もできるが強化するだけで大体、方が済むからな。だから、正直これだと決まってあるわけではないな」

「剣の強化だけ、ね。……んー、魔術は使える?」
「ああ」

「ちなみに何属性使えるの?」

そう言われ、以前教会で言われたことを思い出す

「確か、教会で言われたのは全属性が何とか言って騒いでたな。父様が忙しそうにしていた」

「全属性………ラディちゃんは得意な属性はある?」
「いや、特にないな。ただ、闇だけは使い方が誰にもわからなかったから使ったことがない」

「あらあら、オールマイティーね。………闇属性は魔人属がよく持っているから、人属の世界だと排斥されたんでしょうね。それはまあ使えなくてもいいんだけど、復讐をするなら使えた方が良いわね。楽しいわよ~、闇魔法で精神を崩壊させるの。それにラディちゃんは、光魔法も使えるんでしょう? 壊れたらそれで直してを繰り返せるし、永久に玩具にできそうね」

ふふふと笑っているコカビエルは、怖い。サイコパスか。……いや、悪魔はみんなサイコパスだな。じゃなきゃ、人の不幸を普通推奨したりしない。


「大体把握できたわ。ラディは魔力の扱いが雑なようね」
「……何でさっきの質問でその結論に行き着くんだ?」

俺が先程答えた内容からは魔力の扱いが雑なんて結論でてこないだろう。

「ラディちゃんは魔力の扱いが雑、下手くそね。
 それに魔力量はあってもその密度が低い。人属にしては魔力量が多いのは自分でも理解してると思うけど、今の魔力制御や密度でやっていけてたのは力業ね。量で押し切っているだけ。だから、剣を強化するなんて遠まわしな方法をとってしまうのよ。それに、密度が高いと緻密にいろんな事が出きるわ」

コカビエルは「こんな風に」と言いながら指を鳴らす。それだけで、俺の体は宙に浮かんだ。

「うわぁっ! 」
「ね? 緻密に魔力を扱えればこんなこともできるわけよ。魔力密度が高いと、形を作りやすい上に維持しやすいのよ。だからこそ緻密に扱えるわ。ま、制御も密度も別々に修行が必要だけどね。ラディちゃんは……まあ、どちらも必要ね」

いやいや、出来れば安全な地上で聞きたい。空中に浮かんだまま放置されている俺はコカビエルの話しなどほとんど頭に入ってこない。

「おい、コカビエルそろそろ降ろしてくれ!」

「ん? 空中に浮かぶなんて今まで経験したことないでしょ? そのまま少し空中浮遊を楽しんでもいいのよ?」

コカビエルは、ニコニコしながら言っている。あいつは俺の心情をわかって言っている確信犯だと理解した。

「………そろそろ吐きそうだ。このままだとお前にかかるな」

「………そろそろ修行していきましょうか」

コカビエルはやっとラディを下ろした。

ジト目で見ている俺に、咳ばらいをして何事もなかったかのように話を続ける。


「ラディちゃんの魔力量だとこれぐらい簡単に本来ならできるはずなのよ。でも、できないでしょう? それに、人間は魔力量が平均的に低いから魔術への抵抗力も低いはずなのよ。さっきも言ったけど、本来は剣なんて使わなくても、魔力で威圧するか押さえつければいいのに、それをやっていない。剣を振るなんてしなくても念じるだけでできるのよ?」

「念じるだけ? コカビエルやメフィストはいつも指を鳴らしてないか?」

少し気になったことがポロっと口からこぼれる。


「ああ、あれね。あれはわかりやすいでしょう?」
「は?」

コカビエルの言葉の意味が分からず頭をひねる

「だから、ああやっていつも魔術を展開しているとそれを見慣れた相手だとその動作が必要だって刷り込まれるじゃない? だから、あの動作がないと油断させられるでしょ?」

「!? ああ、そういう事か……でも俺たちの前で二人ともやる必要はないんじゃないか?」

コカビエルの言葉の意味を理解したら、別の疑問が出てきた。というより怖い。俺たちを油断させてどうするつもりだ!

少し身構えながら、返答を待つ。コカビエルはニコッと笑いながら答えた。

「あたし達が、ふたりの前でこの動作をするのはそっちの意味じゃないわよ。親切心からよ」
「親切心?」

親切からほど遠い者から言われると、不信感しかない。

「例えば、いきない目の前の次元がゆがみ始めたらラディちゃんはどう感じるかしら。絶対に焦るわよね? でも、いつもあたしたちが指を鳴らすという動作を入れていたら、その術はあたしたちが展開したってはわかるでしょう? ある意味、予備動作よ。あなたたちのための」

確かに、いきなり空間が歪んだり、空中に浮遊させられたとしても誰がその術を展開したかで状況は変わってくる。敵からかもしれないという疑心は、心に大きな負担がかかることも考えられる。そういう意味なら、指を鳴らすという行為は非常にありがたいのかもしれない。

「まあ、癖になってる者もいると思うけどね」

……このことを深く考えることはやめようと思った。
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