6 / 14
6話 絶望の降臨
しおりを挟む
早く、逃げるか、残り鍛えるか決めなくてはいけない。
それは彼にも分かっていた。
しかし、自分の生死に関わる大きな選択のため、彼は悩んだ。
そんな彼に、絶望は迫った。
彼は勘違いをしていた。自分が魔王で相手が勇者なら、勇者は正規ルートを辿ってくるのだと彼は錯覚していたのだ。
ここで思い出して欲しい。
彼が相手取っているのは、勇者ではない。
中身は【魔王】である。
暗く厳かな玉座の間で考えていた幼子は、視界の端に蛍のような輝きを見つけた。
なぜこんな所にと思っていると、段々とその色は赤紫色へと変色し、大きくなっていく。そして最後には真っ黒い、人が通るには大き過ぎるドアのようなモヤが出来上がった。
それを見た時から嫌な予感はしていただろう。
だが、彼はそこから動けなかった。
その間に、黒いモヤからゆっくりと両手が突き出される。
そして、その手がモヤの枠?境目?を掴んだ。
そこからは早かった。
その手に力が入ったかと思えば、ぬるりと金色の頭が現れ、すぐに全身が出てきた。
ゆっくりとした動きで頭が上がり、金髪が揺れてその間から青が覗く。
その目を見て、はっとした。
まるで呪縛から抜け出すようにその場でバックステップをした幼子は悲鳴のような声で叫んだ。
「ま、ま、魔王!」
「……勇者か」
幼子を無表情に見下ろすのは、金髪碧眼のイケメンだ。確かにイケメンだが、あまりにも表情がないため人間というよりも人形のようだ。
対するは、浅黒い肌、鱗のようなものがついた腕に、尻尾を持った人間とは程遠い姿の幼子。だが、彼の動きといい表情といい、余程この幼子の方が人間らしかった。
そして、彼らの内包するオーラは、どちらも役職からすると正反対だ。
「………」
「………」
無言で見つめ合う二人。
汗だくの幼子と無表情のイケメン。何とも言い難い緊張感が辺りを支配しているが、それを破ったのは金髪碧眼だった。
「お前、闇の禁術『魂の転換』はできるか?」
「えっ?」
「できるのか、できないのか、どっちだ。」
「え、いや、ちょっ、ちょっとだけ待って下さい! 今確認しますから!」
若干の苛立ちを含む魔王(予定)の声に急かされ急いで、再度ステータスを確認する。
(……うん、無いよな。)
「……」
「おい」
「えーと、非常に残念なお知らせなんですけど……俺今レベル1でして、使えないです。」
「…ならば死ね」
「は……っ!?」
魔王(予定)の青年が淡々と魔法を放ってきた。
ウォータースラッシュとか、たぶんそんなやつだ。水が放たれた瞬間の悪寒に従って身を右に捻った事で奇跡的に避けることができた。
放たれた魔法はそのまま後ろの玉座を斬りつけ、真っ二つにしてしまった。
それを尻目に見た幼子はもう絶望でしかなかった。
年齢によって身体的リーチも、技術力もあちらが上。種族的なリーチも、今の幼い体では何の意味も成さなかった。
(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ)
もう、幼子は現実から逃げたくなったがそんなことは許されない。
相手は次々と殺すための技を放ってくる。幸いだったのが、彼の記憶が戻ったのが勇者(予定)がこの世界に産み落とされた時と同じだった事ぐらいだろう。
また、幼子がギリギリで技を回避できる理由は、彼の種族が危機感への回避能力が異常に高いためだ。
同時に、この状況を哀れと思ったのか、神がその回避能力を底上げしているためである。
それは彼にも分かっていた。
しかし、自分の生死に関わる大きな選択のため、彼は悩んだ。
そんな彼に、絶望は迫った。
彼は勘違いをしていた。自分が魔王で相手が勇者なら、勇者は正規ルートを辿ってくるのだと彼は錯覚していたのだ。
ここで思い出して欲しい。
彼が相手取っているのは、勇者ではない。
中身は【魔王】である。
暗く厳かな玉座の間で考えていた幼子は、視界の端に蛍のような輝きを見つけた。
なぜこんな所にと思っていると、段々とその色は赤紫色へと変色し、大きくなっていく。そして最後には真っ黒い、人が通るには大き過ぎるドアのようなモヤが出来上がった。
それを見た時から嫌な予感はしていただろう。
だが、彼はそこから動けなかった。
その間に、黒いモヤからゆっくりと両手が突き出される。
そして、その手がモヤの枠?境目?を掴んだ。
そこからは早かった。
その手に力が入ったかと思えば、ぬるりと金色の頭が現れ、すぐに全身が出てきた。
ゆっくりとした動きで頭が上がり、金髪が揺れてその間から青が覗く。
その目を見て、はっとした。
まるで呪縛から抜け出すようにその場でバックステップをした幼子は悲鳴のような声で叫んだ。
「ま、ま、魔王!」
「……勇者か」
幼子を無表情に見下ろすのは、金髪碧眼のイケメンだ。確かにイケメンだが、あまりにも表情がないため人間というよりも人形のようだ。
対するは、浅黒い肌、鱗のようなものがついた腕に、尻尾を持った人間とは程遠い姿の幼子。だが、彼の動きといい表情といい、余程この幼子の方が人間らしかった。
そして、彼らの内包するオーラは、どちらも役職からすると正反対だ。
「………」
「………」
無言で見つめ合う二人。
汗だくの幼子と無表情のイケメン。何とも言い難い緊張感が辺りを支配しているが、それを破ったのは金髪碧眼だった。
「お前、闇の禁術『魂の転換』はできるか?」
「えっ?」
「できるのか、できないのか、どっちだ。」
「え、いや、ちょっ、ちょっとだけ待って下さい! 今確認しますから!」
若干の苛立ちを含む魔王(予定)の声に急かされ急いで、再度ステータスを確認する。
(……うん、無いよな。)
「……」
「おい」
「えーと、非常に残念なお知らせなんですけど……俺今レベル1でして、使えないです。」
「…ならば死ね」
「は……っ!?」
魔王(予定)の青年が淡々と魔法を放ってきた。
ウォータースラッシュとか、たぶんそんなやつだ。水が放たれた瞬間の悪寒に従って身を右に捻った事で奇跡的に避けることができた。
放たれた魔法はそのまま後ろの玉座を斬りつけ、真っ二つにしてしまった。
それを尻目に見た幼子はもう絶望でしかなかった。
年齢によって身体的リーチも、技術力もあちらが上。種族的なリーチも、今の幼い体では何の意味も成さなかった。
(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ)
もう、幼子は現実から逃げたくなったがそんなことは許されない。
相手は次々と殺すための技を放ってくる。幸いだったのが、彼の記憶が戻ったのが勇者(予定)がこの世界に産み落とされた時と同じだった事ぐらいだろう。
また、幼子がギリギリで技を回避できる理由は、彼の種族が危機感への回避能力が異常に高いためだ。
同時に、この状況を哀れと思ったのか、神がその回避能力を底上げしているためである。
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる