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次は誰だ?

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「残念です、外しました。が、次は外しません」

 聖女は心底悔しそうに言った後、また攻撃するために聖力をロザリオに収束する

 (えっ、怖……戦闘狂かな)

 想像よりも、聖女が戦闘狂というか……慈悲深いとは全然思えない。

  そんな事を思ってる間に部屋は緊張感に包まれ、殺気が満ちていく。
  次の瞬間には殺し合いが始まる。
  そんな雰囲気に、冷や汗を流した。

 俺が唾を飲み込んだ時、アイツが足を開いて重心を少し前に移した。

 (来るっ)

  そう思い構えた所で、バァンっと大きな音をたてながら重そうな玉座の間の扉を開く者が現れた。

「魔王様!」

 そう言いながら部屋に入ってきたのは、魔族の女性だった。
 浅黒い肌に、シルバーの髪。尖った耳に、その上から生えている羊のような角。目元は黒いレースで聖女と同じく目隠しがされていた。

 ……それにしても、なんとも際どい服装だ。聖女とは真反対に、淫の気に満ちているのを感じる。

 そんな彼女に、闇勇者は意識を向けた。その碧眼が彼女を観止めて言った。

「誰だ?」

 その問いに聴く者を陶酔させそうな声色で魔族は答えた。

「あぁ、なんと喜ばしいことなのでしょうか! 私は魔王様が右腕、リリィです!やっとこの世界に顕現なされたのですね……お祝い申し上げると共に、邪魔者の排除に加勢させていただきます!」


 彼女はそう言いながら、闇勇者の隣に立った。

「君がそっち側なんde」
「この淫の気配は、魔王秘書の淫花のリリィ=イブランテ!!」
「あら? そういうそちらは大聖女、マリア=イノセンティ! こんなところに、引きこもりの方がいらしているなんて、どういうことかしら? それに、よりにもよって魔王様に近づくなんて、万死に値します!」
「そういうそちらも、どんな・・・」

 勇者(魔王?)は、言葉を大聖女マリアに遮られてからはもう死んだ目で黙った。女性同士の口撃に口を挟めば必ず被弾することを理解していたからだ。

 (もう、どうなってんだろ)

 状況はカオスだった。

 誰が敵で、誰が味方かは一応分かっている。分かっているが、配役がおかしい。
 いや、ほんとバグもいいところだ。
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