28 / 39
第28話 動き出すものたち
しおりを挟む
魔術大会への出場が正式に決定した、その知らせは――
思っていた以上の速さで、王立魔法学院へと届いた。
***
「……は?」
最初に声を上げたのは、ユリウスだった。
手にしていた書類を見下ろしたまま、数秒。
次の瞬間、勢いよく立ち上がる。
「一般の部って……ルクシアが!?」
「ちょ、ちょっと待って。まだ十二歳だよ!?」
セレスが慌てて言い、ノアが顔を青くする。
「しかも相手は実力者ばかりの一般部門……?」
「危険すぎるだろ……!」
エリオスはすぐに状況を理解し、低く息を吐いた。
「……王命が絡んでるな、これは」
その隣で、レオンハルトは一言も発さず、
ただ書類を握りしめていた。
――静かすぎるほどに。
「……行く」
ぽつりと落とされた声に、全員が振り向く。
「王都へ」
「レオンハルト!?」
「止めても無駄だよ」
顔を上げたその瞳は、真剣そのものだった。
「ルクシアが一人で戦うなんて、ありえない」
ユリウスが強く頷く。
「同意だ。あいつは……守られるだけの存在じゃないけど、
それでも一人で背負わせるつもりはない」
学院内は、一気にざわついた。
誰よりも大切な存在が、
今まさに“戦場”へ向かおうとしているのだから。
***
一方、その頃――王都。
「では、紹介しよう」
王の言葉とともに、私の前に一人の青年が立った。
年は二十代前半だろうか。
長めの黒髪を後ろで結び、切れ長の瞳が印象的な人物。
どこか影があり、
でも、目を逸らしたくなるような不思議な存在感がある。
「王国魔術師団所属、
リヒト・ヴァルツだ」
(……イケメン)
思わずそう思った次の瞬間。
「今後、魔術大会までの間、
ルクシアの専属指導を任せる」
「……専属?」
聞き返すと、青年――リヒトは静かに膝をついた。
「あなたの魔力は、光と闇、どちらも極めて高純度だ」
低く落ち着いた声。
「制御を誤れば危険だが、
正しく導けば――王国随一の力になる」
その視線が、まっすぐ私を捉える。
「安心してください。
倒れさせませんし、壊させもしない」
淡々としているのに、不思議と信頼できる。
(……この人)
父が続ける。
「大会まで、付きっきりでの特訓だ。
無論、護衛と医師も常に待機させる」
(やっぱり過保護……)
けれど。
私は、小さく頷いた。
「……お願いします」
リヒトは一瞬だけ、驚いたように目を細め、
それから、ほんのわずかに微笑んだ。
「良い目だ」
その言葉と同時に、胸の奥で光と闇が静かに呼応する。
遠く学院では、
大切な人たちが焦り、動き出している。
そして王都では、
新たな師と共に、私は未来へ踏み出そうとしていた。
――魔術大会まで、残された時間は少ない
思っていた以上の速さで、王立魔法学院へと届いた。
***
「……は?」
最初に声を上げたのは、ユリウスだった。
手にしていた書類を見下ろしたまま、数秒。
次の瞬間、勢いよく立ち上がる。
「一般の部って……ルクシアが!?」
「ちょ、ちょっと待って。まだ十二歳だよ!?」
セレスが慌てて言い、ノアが顔を青くする。
「しかも相手は実力者ばかりの一般部門……?」
「危険すぎるだろ……!」
エリオスはすぐに状況を理解し、低く息を吐いた。
「……王命が絡んでるな、これは」
その隣で、レオンハルトは一言も発さず、
ただ書類を握りしめていた。
――静かすぎるほどに。
「……行く」
ぽつりと落とされた声に、全員が振り向く。
「王都へ」
「レオンハルト!?」
「止めても無駄だよ」
顔を上げたその瞳は、真剣そのものだった。
「ルクシアが一人で戦うなんて、ありえない」
ユリウスが強く頷く。
「同意だ。あいつは……守られるだけの存在じゃないけど、
それでも一人で背負わせるつもりはない」
学院内は、一気にざわついた。
誰よりも大切な存在が、
今まさに“戦場”へ向かおうとしているのだから。
***
一方、その頃――王都。
「では、紹介しよう」
王の言葉とともに、私の前に一人の青年が立った。
年は二十代前半だろうか。
長めの黒髪を後ろで結び、切れ長の瞳が印象的な人物。
どこか影があり、
でも、目を逸らしたくなるような不思議な存在感がある。
「王国魔術師団所属、
リヒト・ヴァルツだ」
(……イケメン)
思わずそう思った次の瞬間。
「今後、魔術大会までの間、
ルクシアの専属指導を任せる」
「……専属?」
聞き返すと、青年――リヒトは静かに膝をついた。
「あなたの魔力は、光と闇、どちらも極めて高純度だ」
低く落ち着いた声。
「制御を誤れば危険だが、
正しく導けば――王国随一の力になる」
その視線が、まっすぐ私を捉える。
「安心してください。
倒れさせませんし、壊させもしない」
淡々としているのに、不思議と信頼できる。
(……この人)
父が続ける。
「大会まで、付きっきりでの特訓だ。
無論、護衛と医師も常に待機させる」
(やっぱり過保護……)
けれど。
私は、小さく頷いた。
「……お願いします」
リヒトは一瞬だけ、驚いたように目を細め、
それから、ほんのわずかに微笑んだ。
「良い目だ」
その言葉と同時に、胸の奥で光と闇が静かに呼応する。
遠く学院では、
大切な人たちが焦り、動き出している。
そして王都では、
新たな師と共に、私は未来へ踏み出そうとしていた。
――魔術大会まで、残された時間は少ない
68
あなたにおすすめの小説
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない
櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。
手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。
大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。
成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで?
歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった!
出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。
騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる?
5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。
ハッピーエンドです。
完結しています。
小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる