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第10話 剣の誓い、幼い心
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――クロウ・フェルゼン視点
(……危険だ)
謁見の間を出た後も、
クロウ・フェルゼンの神経は張りつめたままだった。
人間界の王子――ノエル・クラーク。
勇者――アルト・ヴォイド。
まだ十歳の少年だというのに、
あの視線は、あまりにも――真っ直ぐすぎる。
(見るな、と言ったはずだ)
だが、無理な話だ。
セラフィナ・ノワールは、
視線を奪う存在なのだから。
「クロウ」
魔王の声に、クロウは即座に膝をつく。
「御前に」
「……どう思う」
短い問い。
クロウは、一瞬だけ迷い――
それから、正直に答えた。
「危険です」
「人間だから、ではありません」
「……想いが、芽生えています」
魔王は、少しだけ目を細めた。
「お前もか」
「……私は」
クロウは、拳を強く握る。
「剣です」
「想う資格など、ありません」
その言葉に、魔王は何も言わなかった。
ただ、静かに告げる。
「ならば、折れるな」
「その剣が折れれば、
誰があの子を守る」
「――命に代えても、守れ」
「御意」
クロウは、迷いなく答えた。
(誰にも、渡さない)
人間界の王子にも。
勇者にも。
この世界の誰にも。
たとえ――
セラフィナ自身が、望んだとしても。
(それが、俺の罪だとしても)
剣は、主を選ばない。
だが、クロウ・フェルゼンは、
たった一人の主に、すべてを捧げると決めていた。
――セラフィナ・ノワール視点
おへやに もどってきた。
リリアが、ドレスについたしわを
丁寧に のばしてくれる。
「セラフィナ様、今日はお疲れ様でした」
「うん」
「……りりあ」
「はい?」
「さっきの ひとたち」
「人間界の方々ですね」
「……やさしい?」
リリアは、一瞬だけ困った顔をして、
それから笑顔になった。
「……きっと、そうですよ」
(ふぅん)
私は、クマのぬいぐるみを 抱きしめる。
ノエル。
アルト。
名前、ちゃんと 覚えてる。
(また、会えた)
さっき、胸が
ちょっと ぽわっと した。
なんでだろう。
「……くろう」
部屋の隅で、立っているクロウを呼ぶ。
「はい?」
クロウは、少し驚いた顔で、
それから 膝をついた。
「お呼びでしょうか」
「くろう、さっき」
「こわい かお してた」
クロウは、言葉に つまる。
「……守っていただけです」
「だれを?」
「……あなたを」
私は、しばらく考えてから、
にこっと 笑った。
「ありがとう」
その一言で。
クロウの胸の奥が、
ひどく いたんだ。
(……あぁ)
(この方は、何も知らない)
(知らないまま、
人の心を――)
「くろう」
「はい」
「また、会えるかな」
何に、とは 言わなかったけど。
クロウは、すぐに わかった。
「……えぇ」
「ですが」
少しだけ、声が 固くなる。
「お約束してください」
「なあに?」
「……勝手に、遠くへ行かないで」
わたしは、よく わからないまま、
コクンと 頷いた。
「うん」
その約束が、
どれほど 重いものかも 知らずに。
こうして。
守る剣と、
何も知らない姫。
それぞれの心に、
決して同じではない想いを抱えながら――
運命は、静かに、
深く、絡まり始めていた。
(……危険だ)
謁見の間を出た後も、
クロウ・フェルゼンの神経は張りつめたままだった。
人間界の王子――ノエル・クラーク。
勇者――アルト・ヴォイド。
まだ十歳の少年だというのに、
あの視線は、あまりにも――真っ直ぐすぎる。
(見るな、と言ったはずだ)
だが、無理な話だ。
セラフィナ・ノワールは、
視線を奪う存在なのだから。
「クロウ」
魔王の声に、クロウは即座に膝をつく。
「御前に」
「……どう思う」
短い問い。
クロウは、一瞬だけ迷い――
それから、正直に答えた。
「危険です」
「人間だから、ではありません」
「……想いが、芽生えています」
魔王は、少しだけ目を細めた。
「お前もか」
「……私は」
クロウは、拳を強く握る。
「剣です」
「想う資格など、ありません」
その言葉に、魔王は何も言わなかった。
ただ、静かに告げる。
「ならば、折れるな」
「その剣が折れれば、
誰があの子を守る」
「――命に代えても、守れ」
「御意」
クロウは、迷いなく答えた。
(誰にも、渡さない)
人間界の王子にも。
勇者にも。
この世界の誰にも。
たとえ――
セラフィナ自身が、望んだとしても。
(それが、俺の罪だとしても)
剣は、主を選ばない。
だが、クロウ・フェルゼンは、
たった一人の主に、すべてを捧げると決めていた。
――セラフィナ・ノワール視点
おへやに もどってきた。
リリアが、ドレスについたしわを
丁寧に のばしてくれる。
「セラフィナ様、今日はお疲れ様でした」
「うん」
「……りりあ」
「はい?」
「さっきの ひとたち」
「人間界の方々ですね」
「……やさしい?」
リリアは、一瞬だけ困った顔をして、
それから笑顔になった。
「……きっと、そうですよ」
(ふぅん)
私は、クマのぬいぐるみを 抱きしめる。
ノエル。
アルト。
名前、ちゃんと 覚えてる。
(また、会えた)
さっき、胸が
ちょっと ぽわっと した。
なんでだろう。
「……くろう」
部屋の隅で、立っているクロウを呼ぶ。
「はい?」
クロウは、少し驚いた顔で、
それから 膝をついた。
「お呼びでしょうか」
「くろう、さっき」
「こわい かお してた」
クロウは、言葉に つまる。
「……守っていただけです」
「だれを?」
「……あなたを」
私は、しばらく考えてから、
にこっと 笑った。
「ありがとう」
その一言で。
クロウの胸の奥が、
ひどく いたんだ。
(……あぁ)
(この方は、何も知らない)
(知らないまま、
人の心を――)
「くろう」
「はい」
「また、会えるかな」
何に、とは 言わなかったけど。
クロウは、すぐに わかった。
「……えぇ」
「ですが」
少しだけ、声が 固くなる。
「お約束してください」
「なあに?」
「……勝手に、遠くへ行かないで」
わたしは、よく わからないまま、
コクンと 頷いた。
「うん」
その約束が、
どれほど 重いものかも 知らずに。
こうして。
守る剣と、
何も知らない姫。
それぞれの心に、
決して同じではない想いを抱えながら――
運命は、静かに、
深く、絡まり始めていた。
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