炎と消える＿僕を消したアイツ 戻レナイ

炎と消える ラストのラスト

 一晩が経ち明け方になる。瞬は、なんか焦げ臭いな、と目を覚ます。先に起きていたのか、樹が瞬に声を掛ける。
「瞬。起きろ！なんか焦げ臭くないか？」
「ああ。通電火災かな」小学生理科の本で読んだことがある。
「ナニそれ」
「自然災害で停電になった後に電気が復旧するときに、電化製品からいろんな理由で火災が起きる。早く逃げねえと＿＿樹。お前、逃げられないの？」
「ダメ。それに俺、血友病で……」
「……」
「出血が止まんない」
「ちっきしょ！俺もガムテープと瓦礫が邪魔で…」
樹が、ゴホゴホと咳き込む。
「樹」
「＿＿もう、俺はダメだ。瞬、ごめんな。先に地獄に行って待ってるよ。バイバイ、瞬」樹が静かになる。

「樹？＿＿おい、返事しろよ」死んだの？＿＿まさか。だってだって。あんなアホのドクズが死ぬわけない＿＿
木と炎が燃えてパチパチと音がする。くそっ。熱くなってきた。言うことを聞かない指でブルゾンのポケットをまさぐる。鍵の他に小さなハサミの感触がする。現実２に行ったときに小６のノートに自分宛てにメッセージを書いた。現実２の小６の瞬が、２２歳の瞬のメッセージを読んでくれたのだ。そのせいか分からないが、現実1が、少し変わってきている。死んだ(と思った)瞬の忠告を読んだのだ。もう同じ過ちは＿＿繰り返さない。繰り返させない。バッドエンドなんてごめんだ。
 瞬は、ハサミを掴み腕のガムテープを自分で裂く。足のガムテープも裂いて瓦礫を退かせる。樹に取り上げられた携帯を掴む。
携帯に向かって叫ぶ。
「助けて、いつき！ 助けろ、伊月。伊月 功星！！」
携帯が、伊月 功星に電話を掛ける。
瞬の周りが炎で明るくなり始める。火が離れの瓦礫に回り始める。パチパチ パチパチ 瞬は、瓦礫と炎の中を歩き出す。未来を掴め！大切な人を取り戻すんだ！
 恋人？そんなのいらない＿＿親友？一番じゃなくてもいい。キミのスキにしたらいいよ。だけどそばにいて＿＿つらいときには僕を笑いとばして
 だからキミを追いかける＿＿友達からやり直すよ

＿＿俺は＿＿俺は、生きるんだ！！

 The End   ©️石川 直生 2023.