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呪われた第一王子
しおりを挟む「私は大変悲しいし、残念だ。魔法を使えないお前を20歳になるまで育ててきた。いつか魔法が使えるようになるのではないかと期待してな。だが、お前が魔法を使えないのは呪いのせいであり、生かしておくのは国に悪影響を及ぼすと魔法研究省が突き止めてくれた。幸いにも私には、魔法に長けた子供が大勢いるし、そもそもお前には王位継承権も与えていないし、どうしても必要な場以外は社交にも出さない。これがどういう事か分かるか?」
「半分以上は何を言っていたか覚えていませんが、結論からお話されてはいかがですか、父上」
「お前のその態度、いつまで持つか見物だな。第一王子ギルフォード=ルネヴァン。今この場にて命を断て。胸に突き刺せばすぐ楽になれる魔法具も用意してやった。呪いによって錯乱したお前が自害したと通達すれば誰も疑いはせんよ」
私は大変怒っています。
はらわたが煮えくり返るって、遠い東の国で使われる言葉があるって前に習ったけれど、まさにその言葉がぴったりな状況だわ。
でも、我慢しなくては。まだ勝敗が決まっていないのだから今登場するのはルール違反よ。
「王族全員が集まったこの場にて、王族全員がお前の錯乱による自害を見届ける。お前がいなくとも、この国は困らないし不要なのだよ。ただ、対外的に説明する理由が必要だったからこの年まで仕方なく育てただけのこと。私はね、ギル。優秀な子が大好きなんだ。ここにいるお前の家族は全員とても優秀で私の自慢の子供。だがな、お前のことは一度も愛したことはない。やっとお前がいなくなるこの瞬間を待っていたよ」
「父上、ご安心を。私は一度もあなたに愛されたいと思ったこともないし、ここにいる他の王族にも何の感情もない。こちらこそ、関係を切れるようでせいせいしていますよ。ただし、私に害を成そうとした場合、この国は滅ぶかもしれませんが、よろしいですか?」
「何を戯言を。我が国は魔法大国ルネヴァン。滅びる等、ありはしない」
まぁ。どこからその自信は来るのかしら。
この国が魔法大国として栄えているのも、誰のおかげか忘れちゃったのね。かわいそうに。周りの王族も異を唱えない、口元が愉悦に歪んでいる所を見るに、やはり生かしておく必要はなさそう。
聞くに堪えない罵詈雑言を前に、こんなに上手に待てているのだもの、後でたっぷり甘やかしてもらわなきゃ。
あ、魔法具が渡されたわ。いよいよ、刑の執行かしら。
「最後に何か言いたいことはあるか?」
「ええ、では一つだけ」
あら、隠れている場所は伝えていないのに瞬時に私と目を合わせられるなんて。さすがね。
さて、舞台は整ったようだし、私も準備しなくては。
「はぁ。ここまでみたいだ、リア。俺の負けだ」
「だから早く見限りなさいって言ったでしょ~」
突如聞こえた見知らぬ声に、私を呼んだ彼以外の全員がざわつき始める。
私は不可視の魔法を解いて、ずっと私に待てをしていた大好きな彼をギュッと抱きしめた。罵詈雑言が凄かったから、いつも以上に丁寧に頭を撫でるオプション付きで。
「何者だ!!」
私の登場に王が叫び、周りの王族も私に向けて魔法を放つ準備をする。私の顔も見えているはずなのに、誰だか分からないなんて相当お花畑ね、ここの王族。
私はギルを抱きしめたまま、普段は制御している魔力の波を少しだけ解放する。
「静かに。発言は認めてないわ」
「「…ッ!」」
「今この場で発言していいのは私とギルだけよ」
「ずっと見ていてくれてありがとう、リア。おかげで冷静に対応できた」
「私はずっとあの日からギルだけを見ているのだから、今日という大事な日はいつもの5割増で見ていたわ」
「ああ、さすが俺の最愛だ」
「ええ、あなたも私の最愛よ。愛しているわ、ギル」
「俺の方こそ、愛しているよ」
お互いの頬に手を添えて軽く触れるだけのキスをして、私はこの場で誰よりも強い権力を誇示する為に氷の玉座を召喚した。
立ち上がり、私に左手を差し出すギルに手を添えて、ゆっくりと静かに玉座に腰掛ける。この玉座を許されるのは一国の王族のみ。どんなお花畑でも気付くでしょう。
あぁ、そういえばギルに聞かないといけないことがあったんだったわ。
「ねぇ、ギル。私の勝ちだから、この国滅ぼしてもいいのよね?」
「君なら一瞬で出来るだろうけど、まずは民の避難をしてからね」
「あら!私としたことが頭に血が上って抜け落ちていたわ。ありがとう、ギル」
「民の避難が終われば、どうぞあなた様の思うがままに」
わざとらしく臣下の礼をするギルが素敵すぎて思わず抱き着きそうになったけれど、今は我慢しないと。まだ私のターンは終わっていないのだから。
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