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第二篇 魔界山怪の章
第21話 アズネルグーフの夜
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午後8時になりました。
マジシャンにお借りした『アズネルグーフの夜』を大急ぎで読み終えたわたしは、レーヴァンタインさんのお部屋をノックします。
参加者が集まっていました。
ヨアンナ、マジシャンの他にあの、デレブイアさんの姿もみえます。
職員では薬剤師のロビンさん、事務室長のカロニャックさんも席についています。
わたしはヨアンナの隣に腰を下ろしました。
さっそくレーヴァンタインさんの紅茶とパンケーキをいただきます。
「おいしい♡」
思わず声がでてしまいました。
隣でヨアンナがドヤ顔しています。あなたが焼いたわけじゃないでしょ、といいたくなります。
『では、これより読書会をひらきます。忌憚のない意見と感想をどうぞ』
レーヴァンタインさんのスマホから合成音が発せられました。口のきけない彼女は黒猫を抱いたままほほ笑んでいます。
課題図書『アズネルグーフの夜』のストーリーは少々複雑です。
かいつまんで説明すると……
むかしむかし、ある村に奴隷身分の少女がいました。
その少女の村に4人の勇者と1人の見習い勇者がやってきました。
彼らはギルドから派遣された用心棒です。
山から降りてきて村を荒らす魔物たちを退治するためギルドを介して雇われたのです。
勇者たちが村の防御を固めているうちに、見習い勇者と奴隷少女は恋に落ちます。
見習い勇者の名はトラン。
奴隷少女の名はケイト。
ケイトはトランにいいます。
この村は元・流刑地で、盗賊の子孫が代々、村長をつとめてきた。わたしは無理やり隣村から連れてこられてひどい目にあっている。こんな村なんか守る価値はないの。だから、戦わずにわたしを連れ出して逃げて!
トランは迷います。彼は罪もない善良なひとたちを、魔物や悪党から守るために勇者を志したのです。
聞けばこの村は略奪と暴力で成り立っている村でした。
凶行を働く盗賊の逃亡ルートとして機能し、彼らが奪った金品のおこぼれにあずかっていたのです。
ケイトは盗賊によってさらわれた女たちのひとりで、盗賊や村人にしてみれば『戦利品』扱いの品に過ぎません。
トランはこのことを4人の先輩勇者に訴えます。
守る価値のないものを守るのが勇者なのか、と……。
だけど先輩勇者の反応は薄く、それが仕事だの一点張りです。
そうこうしているうちに魔物との戦いがはじまりました。
魔物は強く、あっという間に勇者4人を殺してしまいます。
村長との連絡係であったトランだけが運よく難を逃れました。
圧倒的な力で村全体を制圧した魔物は村長に生贄を要求しました。
村長や名主たちはケイトを差し出すことに決めました。アズネルグーフの夜に。
アズネルグーフの夜。それは赤い満月が中天にのぼる呪われた夜のことです。
トランは決意しました。
檻の中に囚われたケイトを救出して村をでます。
その後、怒った魔物によってその村は全滅したとトランとケイトは風の噂に聞きました。
だけど問題はそのあとです。トランはギルドから職務放棄とみなされ勇者の資格を失ったのです。
いや、それだけではありません。先輩勇者を見捨てて遁走した卑怯者との烙印はどこまでもついてまいります。
失意のトランは次第に生活が荒れ、酒浸りの毎日を送るようになります。
そんなときです。トランを育ててくれた師匠の村が魔物たちの脅威に悩まされているとの噂が耳に入ります。
トランは奮い立ちます。名誉挽回のため師匠の村を守りに向かいます。
同行したのはケイトがあらゆる伝手を頼って集めてくれた4人の剣士たち。
ですが……
トランはアズネルグーフの夜にその剣士たち4人を殺してしまいました。
彼になにがあったのでしょう?
第22話につづく
マジシャンにお借りした『アズネルグーフの夜』を大急ぎで読み終えたわたしは、レーヴァンタインさんのお部屋をノックします。
参加者が集まっていました。
ヨアンナ、マジシャンの他にあの、デレブイアさんの姿もみえます。
職員では薬剤師のロビンさん、事務室長のカロニャックさんも席についています。
わたしはヨアンナの隣に腰を下ろしました。
さっそくレーヴァンタインさんの紅茶とパンケーキをいただきます。
「おいしい♡」
思わず声がでてしまいました。
隣でヨアンナがドヤ顔しています。あなたが焼いたわけじゃないでしょ、といいたくなります。
『では、これより読書会をひらきます。忌憚のない意見と感想をどうぞ』
レーヴァンタインさんのスマホから合成音が発せられました。口のきけない彼女は黒猫を抱いたままほほ笑んでいます。
課題図書『アズネルグーフの夜』のストーリーは少々複雑です。
かいつまんで説明すると……
むかしむかし、ある村に奴隷身分の少女がいました。
その少女の村に4人の勇者と1人の見習い勇者がやってきました。
彼らはギルドから派遣された用心棒です。
山から降りてきて村を荒らす魔物たちを退治するためギルドを介して雇われたのです。
勇者たちが村の防御を固めているうちに、見習い勇者と奴隷少女は恋に落ちます。
見習い勇者の名はトラン。
奴隷少女の名はケイト。
ケイトはトランにいいます。
この村は元・流刑地で、盗賊の子孫が代々、村長をつとめてきた。わたしは無理やり隣村から連れてこられてひどい目にあっている。こんな村なんか守る価値はないの。だから、戦わずにわたしを連れ出して逃げて!
トランは迷います。彼は罪もない善良なひとたちを、魔物や悪党から守るために勇者を志したのです。
聞けばこの村は略奪と暴力で成り立っている村でした。
凶行を働く盗賊の逃亡ルートとして機能し、彼らが奪った金品のおこぼれにあずかっていたのです。
ケイトは盗賊によってさらわれた女たちのひとりで、盗賊や村人にしてみれば『戦利品』扱いの品に過ぎません。
トランはこのことを4人の先輩勇者に訴えます。
守る価値のないものを守るのが勇者なのか、と……。
だけど先輩勇者の反応は薄く、それが仕事だの一点張りです。
そうこうしているうちに魔物との戦いがはじまりました。
魔物は強く、あっという間に勇者4人を殺してしまいます。
村長との連絡係であったトランだけが運よく難を逃れました。
圧倒的な力で村全体を制圧した魔物は村長に生贄を要求しました。
村長や名主たちはケイトを差し出すことに決めました。アズネルグーフの夜に。
アズネルグーフの夜。それは赤い満月が中天にのぼる呪われた夜のことです。
トランは決意しました。
檻の中に囚われたケイトを救出して村をでます。
その後、怒った魔物によってその村は全滅したとトランとケイトは風の噂に聞きました。
だけど問題はそのあとです。トランはギルドから職務放棄とみなされ勇者の資格を失ったのです。
いや、それだけではありません。先輩勇者を見捨てて遁走した卑怯者との烙印はどこまでもついてまいります。
失意のトランは次第に生活が荒れ、酒浸りの毎日を送るようになります。
そんなときです。トランを育ててくれた師匠の村が魔物たちの脅威に悩まされているとの噂が耳に入ります。
トランは奮い立ちます。名誉挽回のため師匠の村を守りに向かいます。
同行したのはケイトがあらゆる伝手を頼って集めてくれた4人の剣士たち。
ですが……
トランはアズネルグーフの夜にその剣士たち4人を殺してしまいました。
彼になにがあったのでしょう?
第22話につづく
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