発狂小説 去年ニコタマバードで 4Kマジカルクラスター版

自由言論社

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第1話 ”おにいさま”から戴いたオマモリ

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 カヘーッ!!
 カヘッ。
 カヘッ。
 クワーーッ!!
 クヒッ。
 クェーーーッッ!!



 ああ、今日もニコタマ鳥が元気で鳴いていますわ。
 晴れ渡ったお空を気持ちよさそうに飛んでいる。
 そうね。わたくしもお外にでて陽の光を浴びなくては。
 ここの暮らしはとても快適ですけれども、たまには外出をしなくては。それこそ籠の中の鳥と同じこと。引きこもってはいけません。

 わたしはお気に入りの白いドレスに着替えてお部屋を出ようとしたところ……。
 いけない。
”おにいさま”から戴いたオマモリを忘れるところでした。
 机の引き出しの奥深くにしまい込んだそれを、プラダのハンドバッグに忍ばせてわたしは部屋をでた。

 わたしの住戸は二子玉川にある超高層高級マンションの最上階。
 地上42階、地下2階のセレブリアンタワーと呼ばれるところ。
 わざわざエレベーターを使って地上まで降りなければならないのが、面倒といえば面倒かも。

 チン。
 一気に地上1階までいけると思っておりましたが、途中でハコが止まり、ドアが開いて男のひとが乗り込んできました。
 スーツ姿のくたびれた中年男。中肉中背のこれといって特徴のない顔立ち。黒いアタッシェケースを提げてる。お仕事は保険かなんかの勧誘員かしら。

 エレベーターのハコが再び下へと動きだす。
 ああ……。
 なんてこと。
 視線を感じる。
 中年男がわたしをみている。
 いやらしい視線でわたくしの全身を舐めるようにじろじろと……。



”おにいさま”はわたくしにいつもおっしゃっていました。

 麻鈴まりん、きみは美しい。
 野に咲く一輪のバラのようだ。
 男ならだれしも、手折たおりたくなるだろう。
 だけど、手折らせてはいけないよ。
 その美しさを汚してはいけない。
 ぼくのためにも、そして由緒ある、この三輪みわ家のためにも純潔を保ってほしい。

 ああ、わかってるさ。
 きみがそんなふしだらな娘ではないということを。
 でもね、麻鈴まりん
 よく聞いて。
 きみにその気がなくても、男はその美しさに引き寄せられ、不埒ふらちな考えを抱いてしまうものなんだ。
 きみの美が男を野獣に変えてしまうかもしれない。

 そんなとき、どうしたらいいのか?
 ためらうことはない。
 野獣を撃退するんだ。
 これだ。
 これを使いなさい。
 これはオマモリだ。
 使い方はちゃんと教えたね。
 いい子だ。
 このオマモリはきみの美を守るためにある。
 遠慮はいらない。
 オマモリもそれを望んでいる。



 わたくしをみつめる視線が強くなっている。
 荒い息づかいも聞こえる。
 それまで距離を保っていた中年男が身を寄せてきた。
 明らかにわたくしをみて欲情している。
 股間のズボンがテントを張って、いまにもはちきれそう。

 わたしはプラダのハンドバッグからオマモリを取り出して銃口をその中年男に向けた。
 ダブルアクションで引き金を引き絞る。


 タン。
 タタン。
 タン。
 タン、タン。


 9ミリパラベラム弾を全弾ぶち込む。
 中年男が不思議そうな眼でわたしをみつめて崩れ落ちた。
 いまさら、ごまかしてもダメよ。
 あなたはわたしを汚そうとした。
 これは正当防衛なのよ。


 チン。
 エレベーターが1階に到着した。
 わたしは”おにいさま”から戴いたオマモリ——ベレッタPX4サブコンパクトを再びハンドバッグにしまい込んだ。
 なんかオマモリも喜んでいるような気がする。
 そういえばこのオマモリには愛称があった。
 ブサカワのデザインからついたあだ名はブルドッグ。
 久しぶりのお散歩にブルドッグがシッポを振っているような気がする。

 わたしはルンルン気分でタワーマンションの外にでた。
 春の陽と空気がとても気持ちいい。
 今日はなにかいいことがありそう💛



    第2話につづく 
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