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第2話 靴底検査
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白昼堂々、世田谷の路上で起きた通り魔事件は近隣住民を恐怖に陥れた。
規制線が張られ、その内側で所轄の刑事や鑑識が忙しく立ち働いている。
「間違いない。コンサヨおじさんの仕業だ」
ベテラン刑事の坂崎が新米刑事の白石颯汰にいった。
「コンサヨおじさん?」
颯汰がおうむ返しにたずねる。
「全国指名手配の通り魔事件の容疑者だよ。コンニチワといって親しげに近づきグサッ、サヨウナラといってその場をあとにする。一種のシリアルキラーだ」
「うわあ、そんなやつがウチの所轄に潜り込んでいたなんて……」
「被害者は一命をとりとめたようだが、この事案、間違いなく本庁が持ってゆくだろうな」
そのときだ、静かだがパワフルなエンジン音が響いてきた。
思わず振り向くと、真っ赤なカルデラカラーのジャガーXE RーDYNAMIC HSE P300が警察車両に混ざって停車した。
「噂をすれば影だ。さっそくおいでなすった」
坂崎が眉根をよせていった。
ドアが開き、レザージャケットに身をつつんだ長身の男がアスファルトに降り立つ。
その颯爽とした姿は刑事ドラマの一場面を見ているかのようだ。
男は警察手帳を開いてみせると、バリケードテープをひょいとくぐり、生々しい血痕が刻まれた地面を覗き込む。
「だれですか?」
思わず小声になって颯汰は坂崎に訊く。
「鏑木豹吾。特異犯罪捜査室のエースだ」
特異犯罪捜査室は半年前、本庁に新設された特異犯罪事件専門のチームだ。特異犯罪とはサイコパスやシリアルキラーなどが引き起こす無差別快楽殺人を主に指していう。
欧米はいわずもがな、近年この日本でも通り魔による殺傷事件は年々増加傾向にある。
ひそひそ声が聞こえたのか、ふいに鏑木がこちらを振り向いた。
ぎくっとなって白石が反射的に会釈する。
なにを思ったのか鏑木が立ちあがって颯汰のもとへ歩いてきた。
「きみ、名前は?」
「は、はい。桜坂署刑事課の白石颯汰巡査長であります」
「ちょっと靴を脱いで見せてもらえるかな」
「は?」
颯汰にはいわれた意味がわからない。
「いいから、靴を脱いで靴底をおれに見せろ!」
命令口調で一喝され、颯汰は慌ててその場で本革のビジネスシューズを脱ぎ、靴底を見せた。
鏑木は一瞥するといった。
「合格!」
第3話につづく
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思わず振り向くと、真っ赤なカルデラカラーのジャガーXE RーDYNAMIC HSE P300が警察車両に混ざって停車した。
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ドアが開き、レザージャケットに身をつつんだ長身の男がアスファルトに降り立つ。
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男は警察手帳を開いてみせると、バリケードテープをひょいとくぐり、生々しい血痕が刻まれた地面を覗き込む。
「だれですか?」
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「ちょっと靴を脱いで見せてもらえるかな」
「は?」
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