TAXI戦記 日本崩壊の序曲

自由言論社

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#12 イギリス大使館

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 出雲は執拗な追跡車のプリウスに向かって怒りのチキンレースを仕掛けた。

 ウージーSMGの乱射が止み、プリウスの車体がブレた。明らかに動揺している。まさか向こうから突っ込んでくるなど予想だにしていなかっただろう。

 衝突寸前、をあげたのはプリウスだった。
 車体を右に逸らした。
 出雲のタクシーのサイドミラーが吹っ飛び、火花が散った。

 右に逸れたプリウスが突然、闇に消えた。
 そこは工事中の造成区画で崖になっていたのだ。
 爆音とともに崖下から火柱があがった。
 おそらく同乗者全員、あの世に旅立ったに違いない。



 監視カメラの少ない一般道を通るのはかえって危ない。
 出雲は関越自動車道に乗り入れ、外環道を経由して大泉ジャンクションから
都心環状線に入った。

 C1出口を降り、千代田区一番町に向かう。
 尾行車や不審車の追跡はない。
 イギリス大使館の正面ゲート前に着いた。

 ――AM5:00

 東の空がうっすらと白みはじめている。

「ありがとうございました」

 髪の長い女が後部シートで深々と頭を下げた。

「ついでにこれを持っていってくれませんか」

 出雲が負傷した男から預かった大判封筒を女に渡した。

「これは……?」

「日本におけるワジャムのリストだそうです。いってみれば売国奴たちの目録です」

「これをわたしが預かっていいんですか?」

 女が不安な表情を浮かべ出雲をみる。

「日本の中枢はワジャムの手に握られているのでしょう。だったらわたしが持っていても意味はありません。
 このリストを使って国際世論を動かしてください」

「……わかりました」

「お気をつけて」

 出雲は彼女が無事、門の中に入ったのを見届けてからクルマをだした。



 今日はもう営業は終わりだ。
 長い夜だった。
 出雲はタクシーを回送表示にして練馬の営業所に向かった。
 すると――

 無線のビープ音が響いた。
 レシーバーをとる。

「こちら車両2028。どうぞ」

『非常事態だ。レッドボタンを入力せよ』

 緊張をはらんだ声でオペレーターがいった。



    次回終章へつづく

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