決戦の朝。

自由言論社

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第10奮

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 ギョエーーーッッッ!!!!

 おれは魂切る悲鳴をあげた。
 おれはGが大嫌いなのだ(好きなひとはいないと思うが)。

 しばらくトイレの掃除をしてなかったので、ほどよい住処と化していたのではないか?

 おれはトイレのドアを開けるとGを逃がし、下半身丸出しのまま台所においてあったゴキジェットプロをつかんだ。


 どこだっ?!
 ヤツはどこにいった?!


 おれはヤツを見失った。

 落胆して台所の白い壁をみると……

 そいつはいた!

 おのれっ!
 そこにいたか!!
 すばやくゴキジェットプロを構える。
 だが……

 そいつはすでに捕食されていた。
 壁を這うヤモリに。

「エサにありついてよかったな」

 ゴキジェットプロを下ろすとおれはヤモリに声をかけた。
 よく見ればヤモリはかわいい。
 つぶらな瞳がステキだ。

 おれはまたトイレへと引き返した。
 便座に座る。
 またもや便意はひっこんでしまった。

 波がきてはなにかに邪魔される。
 たかが糞をひりだすことがこんなにも困難なことだとは思わなかった。

 こうなりゃ意地だ。
 たとえ丸一日かけようともひねりだす。
 おれは脱糞に燃えていた。

 ♪いまっだーー
 ♪出すんだーー
 ♪ロケットウンチーー

 おれは自分をはげます意味で歌をうたった。

 すると——
 間をおかず波がきた。

 第6波だ。
 いくらなんでももう邪魔は入るまい。
 集中だ。
 意識を集中してたぐりよせる。

 ふんぬっ!

 今度こそ、この波をとらえるのだ!


   第11奮につづく
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