逍遙の殺人鬼

こあら

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腰を曲げて車内を覗き込んでいた男性は固まり、私の背中を支えるみたいに添えられたジャンさんの手の感覚が感じられる
もう、やだ……。と彼の広い肩に顔を隠している私に構うことはなく、彼は覗き見男性に話しかける

「俺、ヤッてるときに見られるのやなんだよね」

「あ…、」

「それ以上覗くなら、目ぇ抉るぞ」

そう言うと覗き見男性は「っひ…」と覗くのをやめ、ごめんなさいと何処かへ走って行く
最悪だ………
全く知らない人に見られたどころか、変な誤解まで与えてしまったではないか…
なのにジャンさんは静かに窓を閉めて平面している









もう…本当に最悪…
パンツが少し濡れている
それは先程のジャンさんの意地悪で反射的に出たもので、それを確信させるみたいに残っていた
彼の手だって濡れていた

「なんで、こんなこと…、」

「見てもらいたかったんじゃねぇの?」

「知らない人に見てもらいたい訳ないじゃないですか!」

「知ってる奴ならいいんだ」

「っ、そう…じゃないです……。」

そうじゃ…ない、はず…?
もう訳がわからなくなってしまっている
それをジャンさんに悟られたくなくって、顔をまだ彼の肩から外せないでいる

「ジャンさんの意地悪……」

「今更だろ」

心の中で言っていたつもりが、声に出てしまっていた
それは事実なのに、ジャンさんの"今更"の言葉に、確かに…と納得してしまう

そんな私を引き離さないジャンさんにも、離れようとしない自分にも訳が分からない
もしこの後続きをしようだなんて言われたら、私は嫌なのか、驚くのか、それとも嬉しいのか…
自分のことなのに、まるで分からない

そんな風に考えを巡らせている私の背中を、遊ぶみたいに触ってくる
それは下着の線を伝っていくように意図的に動かし、ツンツン突っついてくる

「何してるんですか……?」

「拭いてる」

「っえ!?っちょ、やだっ」

「"やだ"つったって、あんたのだろ」

本当に私の服で拭いていて、背中に若干の濡れた感触が張り付く
自分のものだと分かっていても、いや分かっているからなおさら気持ち悪く感じる
ひどい…だなんて呟くも、ジャンさんの素っ気ない態度で返された
もう退いてください、だなんて彼に言うとジーッと私を見据えてくる

無駄に長く見つめて来るもんだから、顔を少しずらして彼から視線を離してやる
何なんだろう……と思っていると急にジャンさんの何かが密着した

それはドクン、ドクンと一定のリズムを刻む音を聞かせてきて、背中には長い腕と思われるものが回っていてギュッと近づけるように締め付ける

その状況にパチリパチリと目が乾かないように、見開く目を瞬きさせたが、すぐに現実が頭に回ってきて、んなっ!と反応を見せるが締め付ける腕は私を捕まえたまま

予想外の行為に軽くパニックで、どうすればいいか分からない
強く締め付けてきているのに、何故か優しさを感じるのはどうしてなんだろう?
今も腕を緩めてくれたと思ったら、優しいと思わせるように頬を触ってくるし、一体何なんだ…

近づけてくる際に少し傾けて、形の良いそれを触れさせてくる
無理やり口をひらさせたり、強引なことはせず唇と唇が熱を移すように触れているだけ
今までの荒々しいものではなく、それを受け入れるように目を閉じた

「!?」

「はい、あんたの負け」

「え?…」

「"嫌だ"とか"やめて"って言わなかった」

どういうこと…?何を言っているの?
ジャンさんの言っていることが理解できない

困惑している私に「あんた、騙されやすいな」と言い放つ
まさか、優しく抱きしめたのは演技!?
それを知るには遅すぎて、満足したのか運転席へと帰っていく

「騙したんですか?…」

「疑うことを覚えろよ」

そう言ってシートベルトをすると、エンジンをかけた
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