逍遙の殺人鬼

こあら

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気まずい空気が流れてほしくなかった私は、ギュウ君に沢山話題をふって話しかけた
それに応えるギュウ君は、徐々に昨日の気さくな彼に戻っていく

「そういや、もう少し先に小さな湖がある。あそこは夏でも涼しいんだ。」

「湖?私実際に見たことないかも」

「行ってみる?」

草むしりに飽きていた私は、その誘いに2つ返事で行ってみるとギュウ君に伝え、連れて行ってもらう
この暑さ……まだ4月だよね?
どうしてこんなに暑いのか…地球温暖化のせいですか?









ギュウ君の言った通り、そう遠くない場所に湖はあった
そこはとても澄んでいて、水までもがどこまでも透明で綺麗だった

庭とは違った緑とまだらに咲く花々
風になびく木々と、水面が何とも涼しげで心地良い

「とてもいい場所だね」

「俺のお気に入りの場所だ。教会から近いのに、あまり知られていないんだ。」

「私が来てよかったの?なんだか悪いな…」

「ちさは…特別な。」

なんだろう…ギュウ君の顔が若干赤く見える
暑さのせいかな?
大丈夫?と近寄ろうとするも、何でもないと背を向けられてしまった
何でもないなら、良いけど……

湖に近づけば更に涼しく感じ、思わず目を閉じた
前方から吹く風は私の肌を擽り、花の良い香りを届けてくれる
首元やおでこ、先程までこもっていた熱を優しく静めてくれる

耳を澄ませてみれば葉と葉の奏でる音に、風によって生まれた自然の音
ぴよぴよと遠くから聞こえる雛と思われる鳴き声

「ここは、特別な場所だね」

「そうだな。俺もここはなんだか、安らぐような気がする。」

「ねえ、良かったら何回かここに来てもいい?」

「俺に許可なんか取らなくてもいいんだよ。ちさが来たいときに来ればいい。」

「ありがとう」

私の足元にある小さな花が、生き生きと咲いている
この小さな命でさえ、生きようと一生懸命に咲いているんだ
それを感じるだけで、どうしてだか胸が苦しくなる

それに触れてみても苦しさは消えなかった
少し力を入れれば、簡単に折れてしまうほど弱く儚い存在

(私はこんな小さな一輪の花よりも弱い存在なんだろうな…)

そんな私の目の前に真っ白で可愛らしい一輪の花が現れる
ふりふりと左右に若干揺れ、存在を主張するその花を持っているのはギュウ君だった

「これ、ちさに似てるよね。はい、あげる。」

「………っ、ありがとう…。……不思議ね」

「え?何が?」

「あ、ううん。この花、私にどう似てるの?」

知りたかった
この花との類似点を、どうしても

彼の手から受け取り、両手で大切に掴んで眺める
私が見る限り、全く似ている点はない
どこがどう似ているのだろうか?

デイジーはヨーロッパ生まれで、名前の語源は英語の ”day’s eye”…日光の目
ヨーロッパの人たちの多くは太陽を黄色く描く
デイジーの中央が黄色く太陽の目のようで、花びらが輝く光線のような形をしている事からデイジーという名前がついた

「なんだろうな…ちさが笑った時とか、何か似てる気がする。花びらは真っ白だけど、中央は光ってるみたいに明るい。なんとなく似てる。」

「私が笑うと、デイジーみたいに見えるってこと?それに、私の中央は黄色くなんかないよ」(余計分からない、混乱してきた…。)

「うーん。ギュッとまとめると……って、ことかな…?…言わせるなよ…。」

""………か…
私はもう1度デイジーを見た
確かにデイジーはかわいい

それが例えお世辞でも、なんだか嬉しい
無意識に頬が緩んでしまうではないか

「前にね、ギュウ君と同じことを言ってくれた人がいたの。貰った時はピンとこなかったんだけどね、ギュウ君が言ってくれたことあの人も思ってくれたのかな」

「……そう、か」

「ごめん、こんな話興味ないよね。忘れて」

ギュウ君に言ったところで、何になる?
やめだやめだ

そろそろ戻らないとっと立ち上がり庭に戻ろうとした
だけど、ギュウ君に手首を捕まれ動きを止められる

「ちさ…もしかして、」

「ギュウ君?」

「その……、いや、何でもない。戻るか。」
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