逍遙の殺人鬼

こあら

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医務室で安静にしている私は、あれこれ考えている内に眠ってしまった
時間帯で言えばお昼寝に近いもの
少し開いた窓から入って来た風は少し冷たく、窓を突き抜ける日差しと相まって心地よい気持ちにさせてくれる

静かな場所、ゆったりとしたベッド、気持ちの良い環境と条件は揃っていて、夢の中へと簡単に促してくれる

走って走って、また走る
今までと違うところは、誰かから逃げていないところ

まるで映画の回想シーンみたいにスローモーションで、第三者の視点から自分を見ている
あんなに嫌ってた髪の毛は赤みがかった色に戻っていて、みつ編みに縛りもしないで、風に揺らされている

草木や花々が生い茂る草原を子供みたいに走って、なにかから解放されたみたいに晴れ晴れとした表情を見せている









足を止めたその場所は、とても絶景で美しい所だった
近くには川が流れ、鳥のさえずる音
風が奏でる葉の音楽に耳を澄ませば、遠くの方から小さな女の子が走ってきた
その小さな手にはデイジーの花が1輪摘まれていて、しゃがむ私の髪にそっと指してくれる

風によって揺れる荒ぶった髪の毛を整えながら立ち上がれば、米粒ほどの大きさの男性が遠くから歩いて来る
遠目でも分かるスッキリとした髪の毛と印象的な銀髪が特徴的な男性は、何の迷いもなく私の方に向かっている

そんな男性を見ては、小さな女の子は「あの人誰?」と聞いてくる
第三者目線の私は、私も知りたいと言うが、夢の中の私はそれが誰なのか分かっているようで微笑んでみせた
その顔は自分では認知したことないくらい幸せそうだった

その理由を知りたかった
どうしてそんなに幸せそうなの?って聞きたかった
でも、それはできずコンコンッと軽快なリズム音によって、私は夢から覚まされた

「シスターちさ、具合の方はどうですか?」

「…シスターシオリ、もう大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」

「もう夕餉ゆうげの時間です。動けそうなら食堂へ参りましょう。今日はお客様もご一緒だそうなので、とても楽しみですね。」

(お客様………?)

夢から覚まされたせいか、上手く頭が回らない
まだ見ていたかった
あんな幸せそうな夢、初めて見たかもしれない

いつも夢を見ないか見ても怖いものくらいで、いっそ見なければいいのにと思う程だった

私はベッドから降り、シスターシオリと共に食堂へ向かった
安静という名の昼寝のおかげで、脚の調子もまずまずと言ったところだ
痛みはなく、このまま無理をしなければすぐ治るだろうと思える

「実は小耳に挟んだのですが、お客様は何日か教会ここにお泊りになるみたいですよ。」

「…、そう、なんですね。」(どうしてそれを私に?)

「誰かがお泊まりになるのは初めてなので、少し嬉しいです。しかも、それが日本の方でないのなら尚更。」

「初めてなんですか?」(まあ、教会自体人あんまり来ないし、当然と言えば当然か…。)

こんな教会に泊まりたいだなんて、駄目とは言わないけどどこに魅了を感じているのか分からない
人はほとんど来ないし、ここのシスターはほとんど愛想のない人ばかり
シスターシオリは優しい人だけど、少し変わった人でもある

これと言って思い当たる魅力が出てこない
自然が近いことくらいしか無いような気がする
ここに置いてもらってる分際で、こんな事言うのはあれなんですけどね……

嬉しそうですねだなんて話していたら、あっという間に食堂についた
他のシスターは既に席に着いていて、私とシスターシオリが最後の様だった
そこで驚いたのは他でもない、長い食台を囲む様に座るシスター達と連なって、クリスチャンさんまでもが座っていた
勿論横には通訳の人も

今まで女性と男性は分けて食事を取っていた
なのに、お客さんと言えどクリスチャンさんは男
院長も何も言わず、いつまでも立ったままの私を見据えていた
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