逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
162 / 333

163

しおりを挟む
三郎さんが荷物のチェックをして、どれを何処に運ぶかを指示している
その指示に従って、ギュウ君や研さん達が倉庫や各場所に運んで行き、その流れは機敏でさすが男と言ったところだ

私は手伝う気満々だったのにどの荷物も運べず、持ち上げることすら困難で逆に足手まといとなってしまった
その様子を優しく見守る人と、ツボに入ったのかゲラゲラ笑う研さんがいた

「け…んっさんっ、そんなに笑わないでくださいよ。こっちは必死なんですから」

「シスターもちゃんと女の子だねー。無理しないで、お祈りでもしてな。」

「無理なんてしてないです。こんなの、私だって……」

「おうおう、何ともたくましい腕ですな。」

腕まくりをして覇気を入れてみても、荷物は数センチ、いや数ミリしか上がってはくれなかった
男と女ではこれ程までに違うのか?
汗こそかいているものの、ちゃっかり荷物を持っているではないか
そればかりか、何故か足取りさえ軽く見えてしまう

(何故に……)









「…ちさ、もう諦めろよ。やっぱ無理だよ。」

「い…や……。はぁ…、ちょっと進んだと思わない?意外と軽いのね…」

「どの口が言う…。ほら貸して、俺がやるから。」

「やだ!これは私の!私が目をつけたんだから、手出さないで!」

「何言ってんだよ…、俺がやるからもうやめとけって…」

まるでおもちゃを取り合う子供みたいに、1つの荷物を巡って争っている私を研さんがまたもや笑って見ている
確かに幼稚な闘いだ

ギュウ君は善意で運んでくれようとしているのに、私には運べないと言われているみたいで対抗心が湧いてしまった
だって1番小さくて運べそうだったのに…何故運べないんだ……
この前三郎さんと一緒に聴いたラジオから出てきた不思議な単語、"ぴえん"?とはこういう時に使うのだろうか?…

「いい加減にしろ…無理だって分かってるだろ。それに、まだ背中痛いんだろ?」

「……ぴえん」

「は?…ぴっ、何?」

「ぴえん通り越してぐすんからのシュン」

「……………、何語だ?」

見様見真似で私の口から出た言葉に戸惑いを隠せないギュウ君は、目を見開いている
とでも言いたげなその表情から目線を外した

私だって知らない
聴いたまま意味なんて分からず言ってみただけですから……
最近の流行にはついていけていないもんで、すいませんね…

強情だなと眉を下げて頭をかくギュウ君は困りきった顔で私を見ている
こんなにやりたい放題の私に怒りを見せずにいる
それがなんとも不思議で、彼には悪いがもう少し続けてみたくなる

私がわがままを言えば怒られるのが日常だった
規則ルールに正しく従順で、同じような毎日
不揃いの釘は打ち付けられて矯正される日々
そんな施設でわがままなんてしたら、怒られるどころじゃなくて、きっとあの鬼籍きせきの部屋に何日も閉じ込められていただろう
だから、こうやって困った顔を見るのが私には見慣れなさ過ぎて、こっちも戸惑っている

"やめろ"と言うけど声色は優しい
怒るどころか私の体を心配してくれる
厄介者のはずなのに、毛嫌いしないで自分で運ぶと言う

慣れなさ過ぎてどうしたらいいんだろう…って引くに引けなかった
このまま引いて、ギュウ君に押し付けるのも悪いし私が運べないということも気づいてはいた

変な事を言っても叩いたり殴ったりはしない
当たり前が当たり前じゃなくなりつつある今、私はどちらが当たり前で"普通"なのか見分ける事ができなかった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...