逍遙の殺人鬼

こあら

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棚の上に横たわる彼女の方に歩み寄った
薄暗く、鮮明には見えなかったもののそれは間違いなくシスターエリだった
段ボールや荷物が姿を隠すように置かれていた
その隙間から出た腕からは、今も赤々と滴り落ちていた

ピチャンッ……と床に落ちる音が耳に虚しく伝わる
それが、まだシスターエリが死んだばかりだという事を知らせてくる

ランプを持って駆けつけるギュウ君に肩を掴まれ「見るな!」と私の目を隠した
もう見てしまっているのに、遅いよギュウ君
ランプで露わになった彼女の顔は目を開いていて、その瞳には光が無かった
唇は青白く、薄っすらと口元に血が垂れていた









「ちさは外に出てろ。」

「っでも……」

「ちさが見るもんじゃない。こっち来て。」

半泣き状態の私の腕を掴んで引っ張り、物置部屋から強制的に追い出された
動揺を抑えられない私を離れさせようと、外へと出た

涙を止められない私は無力で、ギュウ君が手を引いてくれなかったら自分から動く事すらできなかっただろう
新鮮な空気を吸わせようとしてくれたんだと思う
でも思うように呼吸が出来なくって、まるで過呼吸だ
そんな私を「落ち着け。」となだめてくれる

それなのにいつまでも泣いて、どうして…と呟くばかり
涙で曇らせる目には何も鮮明に写らない
そんな私をギュウ君は優しく抱きしめてくれた
震える身体を支える様に、倒れてしまわない様に包み込んでくれた

「大丈夫。もう怖くないから落ち着け。」

「っギュウ…くんっ…」

「大丈夫、大丈夫。俺がついてる。」

背中にあった手を頭に移動しては撫でてくれる
そのおかげか、徐々に落ち着きを取り戻していった
呼吸も整って、泣き止んだ
ギュウ君の自然な香りが私を正常へと導いてくれる

震えが収まった私を確認したギュウ君は、泣き腫らした顔を見ては悲しげな表情を作った
濡れた頬を拭って「大丈夫?」と聞いてくる
大丈夫だよ、そう言えたら良かったのにな
今の私は、大丈夫とはほど遠いようです

「ハロウィンだからちさを少し脅かそうと思ったけど、まさかあんな事になるなんてな…。」

「シスターシオリが"物置部屋を探して"って言うから…。なのに…」

「扉を閉めて脅かすだけのはずだったんだ。ちさが元気なさそうだったからシスターと話してやったんだけど…。」

(元気なさそうに見えたら閉じ込められるのか……。)

それはそれで嫌だ…
シスターシオリとギュウ君なりに私を心配してくれたんだと分かっていても、そんな心配の仕方は御免だ
ハロウィン関係なく閉じ込められたらトラウマよ…

もう平気…とギュウ君から離れて深呼吸した
恥ずかしながら彼の前で盛大に泣いてしまった…
そう言えばギュウ君の前で泣くのは初めてだっけ?

そんな中、遠くの方から研さんがやって来て「おやおや~?」と言いながらニヤついた顔を見せてくる
少し汗ばむ額を肩にかけたタオルで拭いながら、完全に誤解しきった様子でまるでおネエのような口調で、口元を隠しながら近寄って来る
「逢引き~?」とかこんな状況で冗談を投げかけられるけど、私の泣き晴らした顔を見てすぐに察してくれた

「おいおい、何かあったのかよ。」

「それが…物置部屋でシスターが、亡くなっていまして…。」

「はぁ!?マジかよ、それ。大事じゃねぇか!」

「最初に見つけたのがちさで…。三郎さんに人を呼ぶように伝えて下さい。」

「分かった。お前はシスターについてやれ。」

……その事実に、血の気がサアァ…と引いて私の指先は冷たくなった
間近で見てしまったおかげで、私の記憶ファイルに保存されてしまっているようだ
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