逍遙の殺人鬼

こあら

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手を引かれて着いた場所は、広いお風呂場だった
軽く腕を捲くっては、私を何も入っていない湯船の中へと放り込まれた
そして、シャワーヘッドを持っては勢い良くお湯を流し出す
何も言わずにやるもんだから、何がなんだか全然分からない

(何か言ってよ…。)
そう心の中で言っても、当然ジャンさんには届かない
なんでだろう……
以前はどう話してたかな?…
ジャンさんに、どう話しかけてたっけ……

「…あ、あの…ジャンさん?…どうしてお風呂場に…」

もしお風呂に入れということなら、ひとりで入れる
ジャンさんの手を借りる必要なんて無い
なのに…急にしゃがみ込んで、私の脚を掴んでくるから心臓が止まるかと思った









ジャバジャバと勢い良く出るお湯をバックミュージックに、ジャンさんはスカートの裾を少し上げて、反対側の手で足三里を捕らえる
驚いて変な声を上げてしまったけど、誰だってそんな所を掴まれたら不意打ち食らったみたいにマヌケな声を上げるだろう…
相手がジャンさんだからじゃない

「っな!何するんですか!?」

「ケガしてんだろ」

「っ自分でやりますから、」

「動くな」

動くなって言ったって…
とかとか、言ってから行動に移してよ

確かに怪我してる
私の不注意で、私が勝手にコケて、私に無様な傷がついただけ
ワンピースで隠せてたと思ってた
現に春さんは気付いてなかった

湯船の縁に腰掛けて、黙ってジャンさんに従ってみる
でも捲られた事によって視界に入る傷を見ると、何故だか急に痛みが増した
視覚からの情報とは凄いもので、まだ何もしていないのに傷口から出てくる血が何とも生々しくて、自分の身体から出ていると言うのに気持ち悪かった
それに加えてシャワーが傷に当たって、思った以上に衝撃が走った

「ッイ、たい……」

「動くなって」

「でも…、痛いですジャンさんっ」

「暴れんなっ、洗えねぇだろ」

「痛い、痛いですジャンさん!もうやめて下さい…!」

痛かった…
シャワーヘッドから出る水流がズキズキと傷口を痛ませる
沁みるし、ジンジンする……
洗ったことで反射的に涙目になるし…本当ツイてない

洗わなきゃいけないって分かってる
傷口を洗浄して、汚れや付着したウイルスをできるだけ洗い流さないとダメって分かってるけど…
自分でやるのと人が行うのとは、気持ちの持ち用ってのが違う

私の脚を掴む手を退けた
痛みに耐えられないお子様な私は、縁に座るのをやめて湯船の中で膝を抱え込んだ
もう触られないように、これ以上痛みを味わうことの無いように彼から傷口を隠した

「何してる」

「痛いんです…」

「ずっとそのままでいる気か?子供ガキじゃねぇんだからウジウジしてんな」

「デモイタインダモン……」

ジャンさんはこの痛みを味わってないからそんなことが言えるのよ…
膝小僧って地味に痛みが継続されるんだから…ジャンさんもケガ負ってみなさいよ
そうしたら、今の私の気持ちが分かるから

そうやって彼に背を向ける私に苛立ったのか、ジャンさんは私に向かってお湯をぶっ掛けた
文字通り、躊躇ちゅうちょなく、容赦のなく、私にシャワーヘッドを向けてお湯を掛けた

本当何するんだこの人…?
ビックリして、何するんですか!?って叫んでもお湯を掛けるのをやめてくれない
おかげで私は全身びしょ濡れだ
大嫌いな髪の毛なんか私に張り付いてくる

「やめてくださいよ!ジャンさんこそ子供みたいなことして」

「俺はあんたより大人だ」

年齢としの事を言ってるんじゃないです!中身の話です!!」

「あんたは俺よりだって言うのか?」

シャワーの音に負けたのか、一瞬ジャンさんの声が小さく聴こえた
少し寂しげな、そんな感じに耳に届いた
でも、彼に背を向けたままの私には確信付ける何かを得ることは出来なかった
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