逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
216 / 333

217

しおりを挟む
失言だった
言わなくていい事なのに、八つ当たりするみたいに言ってしまった言葉は、無かったことには出来ない
言ってしまった言葉の責任から遁辞とんじしたくなる気持ちに背中を押されて、出口へと足早に向かっていた

(最悪、最悪…なんで言っちゃったんだろう…。)

落ちかけた涙を拭って、惨めな姿を隠そうとした
でも、それは不本意ながら阻まれることになった

「っあ!ごっめん。ちーちゃん大丈夫?」

「っ大丈夫、です」

「あれ?…なんで泣いてるの?」

「何でもないんです!ちょっと目に…ゴミが入っちゃって、すいません」

心配する春さんをその場に置いてカランッと鐘を鳴らし、私はバーを出た
階段を駆け上がって、家に入った









誰にも見られたくない
そんな思いから、自室に走って向かった
ベッドに倒れ込むようにして横になったけど、その一連が耳障りだったのか朔夜さんから「おい女、静かにしろ!」と苦情の声が聞こえた

仕方ないじゃないか
こんな泣きっ面を晒したくなかったんだから…

あんな事言うんじゃ無かったと、何度も何度も心の中で言った
この叫びたい気持ちを抑えて、何かを発散させたい欲に駆られて、ベッドの上で藻掻く様にジタバタして枕を下に顔を押し当てて、声にならない叫びをブチかました

なんて言ってるのか、そもそも日本語?ってぐらい自分でも分からない言語で叫んでた
自分へのもどかしい気持ちや何であんなことばっかやらかしちゃうんだろうって、叫んだつもり
………なのに、ちっとも心のモヤモヤは消えやしない

「女!!って言っただろ!!」

「…ノックしてください」(プライバシーの侵害です…)

「女、何を死んだ様にしている。毛布は体に掛けるのであって、頭に掛けるものではないぞ。」

「だから、ノックしてください。もう一度扉を閉めてからどうぞ…」

そう言う私に「はあ?」っとごもっともな反応を見せる割には、素直に扉を閉めてコンコンッとノックした
あら作家さん、あなたそんなに素直なひとだったんですねとか、これまた失礼なことを思ってしまった

申し訳ないけどそんな素直な方を相手にできる程、今の私はコンディションが宜しくない
起こさないで下さい…とノックへの返事をした
「ここはホテルか!」となんとも嶮しげな声で入って来た

頭に毛布を掛け続けている私の元へ近付く足音がして、バサッと音を立てて毛布を引き剥がされた
顔面を枕にめり込まらせている私は、お帰りを…と何とも聞きにくい声で伝えた

「そんなにしんみりしていると女、頭にキノコが生えるぞ。」

「そしたらそのキノコを炒めて食べます。朔夜さんも食べますか?」

「食べるか!おい女、何をそんなに…落ち込んでいるんだ。」

「落ち込んでません。これが通常モードなんです」

「変わった習慣だな。って、女!血が出てるぞ!!」

少しは空気を読んでひとりにしてくれないものかね…
おい!と動く気のない私の肩を揺さぶって呼び続ける朔夜さんに負けて、体を起こした
ここ!ここ!と指差す所は先程振りかざされた場所で、確かに僅かな血が滲み出ていた

(この程度で騒がられても…)

女!と更に叫ぶ朔夜さんは、急に手を伸ばして来た
心ここに有らずと言った私は、その出来事にッハとした

「女、首からも血が出てるぞ!!」と荒ぶれて見難くしていた髪を退かすと、確認しようと首に触れてくる
それもジャンさんにやられたものだけど、それを説明する前に朔夜さんに血!血だ!と騒ぎ立てられた
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...