逍遙の殺人鬼

こあら

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泣いてた
ぶつかったから泣いてたんじゃない
その前から泣いていたように思える

まるで落ちた涙を隠すみたいな後ろ姿で
でもそれは、多分不本意だと思うけど阻まれる結果になった
「ちょっと目に…ゴミが入っちゃって」って分かりやすい嘘ついて、ボクを追い抜いて扉に着けた鐘をカランッと鳴らし、彼女はその場から逃げて行った
階段を駆け上がる音が若干店内に鳴り響いた
相当居心地が悪かったと見える

「またちーちゃんをいじめたのか?泣いてたよ。」

「知るか。てか何だ"ちーちゃん"って」

「あの子のことそう呼んでんの。まったく、こんなもん見せたらそりゃ泣くだろ。」

「見せただけじゃない。突き付けたんだ」

あんな弱っこい子に突き付けるには、このナイフは鋭利すぎる
若干血が着いているのを見ると、恐ろしいくらい鮮明にその情景が脳裏に思い浮かぶ
それはそれで、自分のことが気味悪くなるけどな









せっかく可愛い服着せてお洒落させたのに、ボクの努力は無駄になったじゃないか
誰の為に教会に行ってちーちゃんを助け出したと思ってる

目的は教会だとか言ってったけど、その目的には少なからずあの子も含まれていたに違いない
ジャンは認めないと思うけど、小さい頃から一緒に居たんだ
それぐらい分かる

冷えたコーラ瓶をジャンに出せば「それより」と更に険しい顔して言ってくる
今度は何だ?って聞く大勢に入ればため息混じりに、また怠そうに話し始めた

「アレわざとだろ」

「さあ?"アレ"って?」

「白々しい。だよ!それに何だあの服」

「可愛さが引き立ってただろ?」

コーラを飲むジャンは、うっざと一言こぼすだけだった
なんだ、もっと追求しないのかよ

ジャンも可愛いと思うだろ?って質問したら視線を外された
やっぱりなって確信した
そんなって顔しても、ボクには分かるさ
本当はこういうの嫌なことも、ちゃんと分かってる

「分かっててやってんの、最低だぞ」

「あの女とは違う、それをちゃんと分かって欲しかった。全然似てないだろ?」

「その話はしたくない」

「でもずっと苦しんでる。そろそろ忘れろよ。」

「ハルも忘れられねぇくれせに」

「それとは違う。なぁ別に喧嘩したいわけじゃない、そろそろ次に進めって言ってるんだ。」

確かに、ボクも小春さんのこと忘れられていない
もう何年も前のことだけど、未だに彼女を思い出す
でも、ジャンの場合は勝手が違う
忘れないと言うより、忘れようとしていないに近い
恨んでいるように見せるのに、本当はまだ心の整理ができていないんだ

この話をするといつも機嫌が悪くなる
ボクも好きでこんな話してる訳じゃないんだ
それはジャンも承知している

まぁ…ちーちゃんに乗り換えろってそう素直にできる訳無いのは当たり前
別に、そう言うつもりはない
もう少し、いや…ちゃんと自分と向き合って素直になれって思うだけだ

ボクとは違って、ちゃんと会えているんだ
二人揃ってそんなウジウジしてるの見てると、もどかしくっていろんな意味で辛いよ
(っあ、やっべ…ひさしのこと完全に忘れてた。)

「なぁ」

「ん?」

「何か、上うるさくねぇか?」

「確かに…。あんのクソニート、ちーちゃんにちょっかいかけてたらただじゃおかない。」
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