上 下
29 / 170
第1章

第十一話 「新たな命」

しおりを挟む
「……あたしとお前の子供。」

「!?」

ウルフ一郎は、タバコをポトッと落とすと、あたしの方を振り向いた。

「それ、本当か?」

あぁ。

「ほんとのほんとの本当か?」

あぁ。

「やったぁ~!」

ウルフ一郎が、あたしをぎゅっとだきしめた。
えっ……。

「俺様とお前の子供ができたなんて、うれしいぞ!」

ウルフ一郎ったら、涙が出てる。

「けど、あたし達、結婚してないだろ?結婚してないのに、子供ができたなんて、夢みてぇ。」

「そーゆーこともあるんだよ。」

ウルフ一郎が、あたしのお腹をさわった。

「俺様、親父になるのかぁ。」

あぁ。

「……一つ、約束していいか?」

あぁ。
ウルフ一郎は、両手をあたしの肩にポンッと置いた。

「このことは、誰にも話すんじゃねぇぞ。わかったか?」

うん、わかった。
チュッ、チュッ、チュ……。
……んもう、いきなり、なにすんだよぉ。

「……愛してる。」

「あ、あたしも、愛してるよ、ウルフ一郎。」

あたし達は、静かにだきあった。


                                  ☆


次の日。

「いよーし、買って来たぞぉ~。」

ウルフ一郎が、何冊かの本を、どっさりとテーブルの上に置いた。
な、なにこれ。

「ん?決まってんだろ。『赤ちゃんの名前辞典』だ。」

ちょっ……まだ男か女かわかんねぇのに、買って来たのかよ!

「あったりめぇだ。早めに考えた方がいいと思って。」

もう少し、考えればいいのに……。

「お、人間の名前もあんぞ!」

ったくらこいつのマイペースには、着いて行けねぇ。

「お!一郎ってあんぞ!いっそ、『ウルフ一郎2号』ってのは、どうだ?」

やめて。

「じゃあ、『サンジ』は?」

かんべんして。

「ちぇ、だめかよぉ。じゃあ、なんにするんだ?」

もう少し経ってから考えたらどーだ!
それに、まだ性別、わかんねぇし。

「何ヵ月だ。」

「2ヵ月。」

あたしは自分のお腹をさわった。

「2ヵ月かぁ~。」

「男と女、どっちがいい?」

「う~ん、やっぱ、女の子がいいなっ。お前みてぇにかわいい女の子。」

そうだな。
チュッ、チュッ、チュッ、チュッ、チュ……。
な、なにすんだよぉ、急に!

「……愛してる。」

「あたしも。愛してるよ、ウルフ一郎。」

チュッ、チュッ、チュッ、チュッ、チュ……。
あたし達は、熱いキスをし続けた。


 
                                   ☆


……初めて一晩をともにした女とできた子供。
今後、どーすっかなぁ~?
いっそ、結婚すっか。
いやいやいや、まだはえー。
もう少し、ゆっくり、考えるか。


                                  ☆


……初めて一晩をともにした男とできた子供。
とてもうれしい。
けど、今後、どーしよっかなぁ~?
いっそ、結婚した方がマシだ。
いやいやいや、まだ早く感じる。
もう少し、ゆっくり、考えるか。


                                    ☆
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

短編 ミステリー 憧れの村中さん

ミステリー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

古色さん達の欲望

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

少年の行く先は

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:10

ナチュラルサイエンティスト

ミステリー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

あれから会う事もなく3年が経ちました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:49

デジタルタトゥー

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

ここが伝説の迷宮ですか? いいえ、魔物の集合住宅です

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:68

その選択に後悔はありませんか?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:9

深海の底で落とした涙

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

処理中です...