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第1章

第十一話 「新たな命」

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なぁ、ウルフ一郎。

「なんだ?」

……梅干しが食べたい。

「なんでだ。」

なんだか、すっぱいもん、食べたくなってきた。

「妊娠したら、すっぱいもん食べたくなるって、いうよなぁ。」

あぁ。
早く出してくれ。

「ごめーん。梅干しがもうないんだよぉ。だから、また今度なっ。」

え~?あたし、今すぐ食べたいのにぃ~!

「仕方ないだろ?今度、買って来てやるよ。」

じゃあ、レモンは?

「レモン?あ、昨日のからあげに使ったから、ないわ。」

えー?
じゃあ、オレンジは?

「オレンジ?あ、オレンジジュースに使ったから、ないわ。」

えー?
全部ないじゃん!

「仕方ないだろ?そーゆーこともあるんだよ。」

今すぐすっぱいもん食べたい!今すぐすっぱいもん食べたいー!

「うっせぇ!わがまま言うな、わがままを!また今度買って来てやるって、言っとるやないね!」

トホホホホ。

「ところで、昨日、考えたことがあるけど……。」

「なんだ?」

「……俺様達の子供って、どんな姿で生まれて来るんだろう。」

あ……。確かに。あたしもそう思った。

「あいつんち、ヴァンパイアと人間だろ?俺様達だったら、ヴァンパイアとオオカミだなっ。」

ヴァンパイアキャットの姿で生まれて来るんじゃないの?

「そ、それはやめてくれ!」

じゃあ、お前はどんな姿で生まれて来ると思うんだ?

「ん?俺様か?そうだなぁ~。ヴァンパイアの姿で生まれて来ると思う。」

だろーな。

「けど、ヴァンパイアとオオカミの子だから、すんげぇことになるぞ!」

すごいこと?

「朝はヴァンパイアの姿だけど、夜になると、オオカミになっちまうんだ!ははっ、俺様の予想が当たればいいけどなっ。」

モンスターか。

「お前は?」

あたしはねぇ~。
まぁ、ヴァンパイアの姿だけど、頭の上にはオオカミの耳が生えていて、おしりにはしっぽがある姿と思う。

「それもありえるなぁ~。」

だろぉ?
あたしはニカッと笑った。

「ネル。」

なんだ?

「これだけは言っていいか?」

ああ。
ウルフ一郎は、両手をあたしの肩に置いた。

「必ず、お腹の子と、お前を守る。なにがあっても、俺様が守る。わかったか?」

うん。わかった。

「よし、それでいい。」

ウルフ一郎は、あたしの頭をなでた。

「あと、もしばれて、「父親は誰か。」って、聞かれたら、答えるなよな。」

うん。答えない。

「よし、さすが俺様の恋人だ。」

ウルフ一郎がまた、あたしの頭をなでた。
えへへへへ。

「ネル、愛してる。」

「あたしも。愛してるよ、ウルフ一郎。」

ウルフ一郎は、あたしのほっぺにキスをした。

「じゃあな、ネル。」

「じゃあな、ウルフ一郎。」

ウルフ一郎は、ほほえみながら、ドアを閉めた。


                                  ☆


最近、ネルさん、来ないねぇ。
どうしたんだろ。

「よっ。」

その声は……。

「ネルさん!」

超~お久しぶりですぅ~!

「だ、だきつくなっつってんだろ!」

す、すみません。
それよりネルさん、今日、機嫌がいいですねぇ。
どうしたんですか?

「ん?別に。なにもない。」

えー?教えてくださいよぉ。

「やだ。」

もう!いじわるなんだからぁ!

「……ふっ。」

え?今、笑いましたか?

「いや、なにも。」

ふーん。
紅茶、いります?

「あぁ。レモンティーはないのか?」

レモンティー?
あ、ありますよ。

「それを飲むとしよう。」


今日のネルさん、すっぱいもの、いただきますね。

「……別に。」

私は、ネルさんのティーカップにレモンティーを入れた。

「サンキュー。」

ネルさんは、レモンティーを飲んだ。

「あー、おいしい!おかわり!」

えっ!?もう飲んだんですか!?

「いーから早く!」

あ、はいっ。
私はまた、ネルさんのティーカップにレモンティーを入れた。

「あー!やっぱりレモンティーはおいしいなぁ!」

今日のネルさん、なんかおかしい。

「なんだよ。あたしをじーっと見つめて。」 

い、いやっ。なんでもないですっ。

「あら。いらっしゃい。」

「リリア!」

「今日は真莉亜とティータイム?私もまぜて。」

リリアさんは、いすにすわった。

「ちょっ、お前!なぜ勝手に!」

「いいじゃないの。私もたまに、紅茶を飲みたくて……ん?」

どうしたんですか?リリアさん。

「誰?私のレモンティー、飲んだの。」

「あたしだ。」

正直に言った―!

「あなた、よくも勝手に、私のレモンティーを飲んだわね!」

「うっせー!たまにはすっぱいもんを味わいたかったんだ!」

「言い訳は無用!さぁ、今すぐレモンティーのスティック、買って来て!」

「いやだねーだ!誰がお前のためにレモンティーを買うかぶあか!」

「なんですってぇ?」

「やんのかオラァ!」

二人とも、けんかはやめてくださいっ。
私がけんかを止めると、二人はしゅんとして、いすにすわった。

「レモンティーは、私が買いますから。けんかはしないでください。」

「はい。」

「ごめんね、真莉亜。」

いいですよ。
姉妹(きょうだい)げんかは、誰でもありますし。
それに、私も、妹とけんかしたことがありますし。

「そうね。」

「それよりリリアさん、ちょっと、来てもらってもいいですか?」

「えっ?」

私はリリアさんの手をにぎって、向こうへ行った。

「今日のネルさん、おかしくないですか?」

と、ひそひそ声で話した。

「なんで?」

「だって、すっぱいものとか、味わうんですよ?」

「あぁ。そう言ってみればねぇ。けど、あんまり気にしない方がいいと思うわよ。」

そうですよねぇ。
ま、そのことは、その先わかることなので。
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